HOMEインタビュー 会社名より、譲れないことで仕事を選びたい――夢を夢のままで終わらせなかった男の就活体験記【後編】

会社名より、譲れないことで仕事を選びたい――夢を夢のままで終わらせなかった男の就活体験記【後編】

Yudai Imamura

2015/01/26(最終更新日:2015/01/26)


このエントリーをはてなブックマークに追加

会社名より、譲れないことで仕事を選びたい――夢を夢のままで終わらせなかった男の就活体験記【後編】 1番目の画像

 「コピーライターになりたい!」という夢を叶え、広告制作会社である株式会社アッシュ・ブームでコピーライターとして働く平野慎也さん。これまでの経験を振り返った時に、彼が挙げた就職活動のポイントは選択肢の幅を「絞りつつ、絞り過ぎない」ことだそうだ。

 様々な業界や会社を見ることは、自分の視点を広げる意味では良いだろう。しかし、やみくもに行動していては、本当にしたいことの軸がブレてしまうと彼は言う。一つの夢を貫き通した彼の経験から、仕事選びのポイントについて探ってみた。




――就活が思うようにいかなかった時に、それでも「コピーライターとして働く」という考えがブレることはなかったのですか?

 一度、地元の会社や違う業界も受けようかなと思ってエントリーしてみたんです。でも、実際に別の業界を受けようとしても「この会社だったらこんな広告がいい」「広告関係のポジションにつけるかな」って考えてしまうんですよ。「視点を広げる」ということに関しては意味があったけど、結局広告ありきの思考に戻っちゃうんですよね。

 ただ、今までと同じやり方で就活を進めていても絶対に上手くいくわけがない。「続けていれば何とかなる」という考え方を変えなきゃと思って、Twitterを使ってみることにしたんです。当時(2010年)はまだ、SNSを活用しての就活はそこまで普及していませんでしたからね。


――では、現職に就いたきっかけは何なのでしょうか?

 今働いているアッシュ・ブームも、Twitterで初めて知った会社。クリエイティブディレクターがTwitterの個人アカウントでコピーライターを募集していたのを見つけて、話だけでも聞いてみようかと思ってやり取りしたんです。就活の目的でSNSを使うことは一般的ではなかったけど、Twitter上で知らない人と交流することは当たり前になってきていた。そこでコミュニケーションをとることにあまり抵抗はありませんでした。

 一度会社見学に行ってみて「会社として有名ではないかもしれないけど、コピーライターとして若い内から仕事を得るためにはいいんじゃないか」と思ったんです。そして無事、アッシュ・ブームに入社が決まりました。就職浪人中の1年間アルバイトとして仕事をさせてもらった後に、正社員として雇ってもらえることになったんです。

 最初は僕も普通のやり方で就活していましたよ。だって皆がそれで社会人になれるじゃないですか。でも僕はそのやり方でなれなかったんですよ。だから、ちゃんと考えなきゃいけなかった。自分のやり方を見つけなきゃ、と思いました。

 今考えてみると、コピーライターになるためだけだったらそんなに難しいことではないと思うんです。ただ、「どんな環境で仕事をするのか」ということが重要。先輩や上司にちゃんとコピーが書ける方がいるか、引っ張ってくれる環境があるか。このような自分の肌に合った会社選びが大切だという意識は、漠然と持っていましたね。


――平野さんのように、就職活動以前からやりたい仕事や職業のイメージを持っている人は少ない印象を受けます。就きたい職業を明確にしてから、就活に臨むやり方は良かったと思いますか?

 周りの人を見ていると、色んな業界を見る中で自分が「これだ」と思う会社に入るのが普通ですよね。でも様々な会社を見て選択肢が増えるのに比例して、自分の考えがだんだんブレ始める。不安も増していくと思うんですよ。

 その結果、自分が何をしたいのかがよくわからなくなる。かと言って、職種で絞ると選択肢の幅が狭まってしまいますが、自分の興味レベルでなら絞ってしまってもいいんじゃないか、という気はしますね。


――本当に就きたい職業に就けず、妥協して就職先を選ぶ人も多い中で、平野さんのように自分がやりたい仕事、会社に就くためにはどういった考え方や行動が必要になるのでしょうか?

 自分が良しとするのであれば、初めの考えからズレていくことは問題ではないと思うんですよ。初めになりたかったものよりも良い仕事が見つかったのなら、それがべストだと思います。逆に、初めから「これだ」と思っていた職業が天職になるかと言えば、たぶんそうでもない。

 それでも、本当にその職業に就きたいのなら、それなりの活動はすべき。例えばコピーライターになりたいと思っている人がコンビニ店員をやっていたとしたら、自分のコンビニに何かポスターを貼らせてもらえるよう説得する、とか。

 どんな仕事に就いたとしても、そこからの軌道修正はできると思います。だから、自分のやりたいことを絞りつつ、でも絞り過ぎないぐらいがちょうど良いと思います。「これだけは」という譲れないものがあるといいですね。


――最後に、現在コピーライターとして働く上で、平野さんが大切にしている価値観はなんですか。

 今でいうと、「見つけること」かな。コピーを書く時に、言葉遊びの延長みたいなものを書きたがっちゃうんです。でも、それではどうしても表現の良し悪しでしかない。そうではなく、「その課題が何なのか」「こうしたら見た人にも、仕事を依頼してくれた人にも喜んでもらえるんじゃないか」という隠れた要素を見つけることを心がけています。


平野慎也(ひらの・しんや)さん プロフィール

株式会社アッシュ・ブーム コピーライター
1987年生まれ。就職浪人を経験後、大学に通いながらアッシュブームにて1年間のアルバイトを経て卒業、2011年から現職。宣伝会議賞 協賛企業賞、読売広告大賞 入賞などを受賞。現在はアッシュ・ブームに所属しながら、ほぼ日刊イトイ新聞の乗組員としても勤務。

hatenaはてブ


この記事の関連キーワード