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会場に観客が入れない理由は”情報不足”――裏方業務に魅せられた、新米アメフト広報【前編】

Yudai Imamura

2015/02/05(最終更新日:2015/02/05)


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 営業のように表舞台で成果を挙げることのできる仕事の裏には、それらを支えている仕事も存在する。それはスポーツ界でも同じこと。試合で活躍する選手やコーチ陣の裏で、試合を運営する事務局スタッフの存在があるのだ。

 今回のインタビュー相手である、NPO法人相模原ライズ・アスリート・クラブが運営するアメリカンフットボールチーム「ノジマ相模原ライズ」のスタッフとして働く飯島沙織さんもその一人。2014年からライズの一員となった彼女は、広報担当としてPR活動をする中で「広報」の在り方について気づくことがあったそうだ。それはスポーツ界に限らず、他のビジネスにも通じるものだった。


――現在、ノジマ相模原ライズの広報を担当している飯島さん。アメフトに限らず、国内スポーツの視聴率自体は高い反面、スタジアムへ足を運んで観戦する直接観戦率が非常に低いと言われていますが、この現状についてどのように思いますか?

 おそらく視聴率が高い理由は、スポーツ中継をしている番組が人気のある競技一極に集中しているから。そのため、他の競技の情報に触れる機会が失われてしまっているんです。試合に関する情報不足が原因で、「スタジアムで観戦したいけど、行けない」と思っている人はたくさんいるはず。スタジアムに来る人はその競技が好きで、観戦するための情報を自分で集めることができるコアなファンに偏ってしまうんです。

 気軽に情報を入手したり興味を持つ機会が減ることは、ファンの裾野が狭まることに繋がると感じています。とは言え、例えばWebでたくさん広報したところで、ご年配の方達には効果が薄いですよね。だから、来て欲しい人に適切な情報を提供し続けることが我々事務局の仕事だと思っています。
 

――では、その中で広報の仕事に求められることとは?

 ファンのスタジアムへの観戦行動は情報量の差で大きく変わるので、適切なアプローチが必要であることは常に実感しています。Webでの広報が主流だとしても、子どもやご年配の方へは、チラシや新聞での情報提供の方が適切な場合も多いですから。最近は、野球で「カープ女子」という言葉も生まれているように、特定のターゲットに絞ったPRがされるようになってきましたよね。このように、ターゲットにマッチした情報が行き渡るよう、心がけています。

 国内ではマイナーなアメフトですが、2014年のライズのホームゲームは昨年以上に盛況でした。広報の仕事は「セグメントをしっかり定めて情報を提供すること」。他の競技では当たり前かもしれませんが、馴染みが薄いアメフトではスタジアムに来場させるためのハードルが高いんです。やみくもに施策を打つのではなく、より丁寧にアプローチしていかないと難しいと感じました。


――そもそも、現在のお仕事に就こうと考えるようになったきっかけは何ですか?

 大学時代、所属していたテニス部でチーム運営のための総務的な仕事や、スカウティング等を担当する主務になってからですね。実力的に、自分は選手としてチームに貢献することが難しかった。だから、裏方の仕事で貢献しようと考えたんです。その経験から「縁の下の力持ちとしてスポーツに貢献できる仕事に就きたい」と思うようになり、「30歳までにスポーツチームで働く」という目標が生まれました。

 大学を卒業し、“社会を知る”という目的で他業界の会社で4年間働いた後に、大学院に戻りました。その時に現在のライズ代表と知り合い、試合に観戦に行くようになったんです。

 その年は、スポンサーの撤退によって解散したチームが「3年で日本一」と目標を掲げ、トップリーグに戻ってきたシーズン。代表からはチームの成り立ちや現状、チームに対する想いを嫌というほど聞いていましたし、試合を観ていて選手達の1シーズンに懸ける強い想いも伝わってきた。その年は日本一には届きませんでしたが、「私もこのチームに関わりたい」と強く思ったんです。


――学生時代での裏方業務の経験がきっかけということですが、どのようなところにやりがいを感じたのでしょうか?

 主務の立場になって初めて、「裏方の人がいるから、チームが成り立つんだ」と実感しました。自分の性格上、あまり前に出ることが得意ではなかった。だから、裏方としてのサポートで最終的にチームのベースとなる部分を作れれば、チームに貢献できるし、自分にとっての自信にもなると感じていました。


――社会人スポーツチームの運営という仕事は、一見華やかな印象を受けます。具体的には、どのようなお仕事をされているのでしょうか?

 チーム運営に関わる仕事全般ですね。ライズは相模原市のホームタウンチームとして認定していただいているので、様々なイベントやキャンペーン活動への協力依頼も多く、市や各団体、選手、チアとの調整以外に当日の運営・進行に関わることもあります。

 また、シーズン中は試合会場でのチームブースの運営やグッズ販売、ホームゲーム運営にあたってはリーグ事務局や市、対戦チームとの調整を主に担当しています。それと並行して行っているのがチームの広報活動。ホームページの更新や、チラシ・ポスターの設置・配布回り、ファンクラブの対応など多岐にわたります。

 パーソナリティも含め、選手の状況を理解していないとチームや選手をPRすることはできません。なるべくグラウンドに足を運び、選手やコーチ、スタッフのメンバーとコミュニケーションをとるようにしていますね。



飯島沙織(いいじま・さおり)さん プロフィール

NPO法人相模原ライズ・アスリート・クラブ クラブマネジャー
1983年生まれ。学生時代、早稲田大学庭球部で主務を経験したことから「スポーツチームの運営」に関心を持つ。一般企業に就職後、早稲田大学大学院に戻り研究を続ける中でライズの存在を知り、2014年より現職。市や自治体、リーグ等関係各所への対応をする傍ら、チームの広報としても活動中。

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