1. 「数百億の損失を乗り越える男たち」ーー失敗力カンファレンスで語られた、巨人たちの失敗の乗り越え方

「数百億の損失を乗り越える男たち」ーー失敗力カンファレンスで語られた、巨人たちの失敗の乗り越え方


 経営者の成功談は数あれど、失敗や苦難が語られることは少ない。しかし、後に続く人にとって、彼らの失敗談こそ学びの多いものだ。

 新経済連盟主催で行われた「失敗力カンファレンス」では、常人では想像もつかない数々の苦難を乗り越えてきた経営者が一堂に会した。中でも「数百億の損失を乗り越える男たち」というセッションでは、GMOインターネット代表取締役の熊谷正寿氏、SYホールディングス会長の杉本宏之氏、USEN取締役会長の宇野康秀氏という錚々たるメンバーで、セッションのタイトル通り、数百億規模の損失を被った失敗談を語った。モデレーターは、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏。

30歳にして400億円の負債

 数百億規模の損失というのは我々には理解できない領域だ。しかし、このセッションに登壇した3人はそれを乗り越え、今の地位を勝ち取って来た。

 『30歳で400億円の負債を抱えた僕が、もう一度、起業を決意した理由』という本を出版し話題を呼んだ杉本氏は、30歳にして一時400億円の借金を抱えていた。当時、大きな精神的プレッシャーがあったのは想像に難くない。

 そんな状況を支えてくれたのは「メンター」の存在であったという。たくさんのバッシングを浴びる中、大株主であったサイバーエージェントの藤田社長を筆頭に、周りの経営者たちは気にすることなく接した。「もう一回、復活できるから諦めずに頑張りなよ」という応援が心の支えになっていたそうだ。「たくさんの良い経営者に囲まれていた。それがあったからこそ心が折れずにいられた」(杉本氏)

弱気にならない、諦めない

 熊谷氏はM&Aにより金融事業に参入するという大きな意思決定をした。しかし、その後法律の改正などを受け市況は変わり、約400億円の損失を生む結果に。株価も大きく落ち込んだ。

 熊谷氏はこの状況を自らのマインドマネジメントで乗り越えた。毎日手帳に「弱気にならない」「諦めない」という言葉を書いた。その書き写した言葉が、熊谷氏をずっと支えていたという。

 大きな成功を成し遂げた経営者でも、こうしたマインドマネジメントをしているというのは意外だが、それだけ精神力は何かを成し遂げるのに重要な要素になるということだろう。


 宇野氏は前の2人よりさらに損失が大きく、その額なんと約1100億円。しかし、商売人の家に生まれ、商売人として育ってきた宇野氏は、商売人としてのプライドで苦境を乗り越えた。

 「商売人にとって『借りた金は返すのが当たり前』。悩ましいことは色々あったけれど、唯一のプライドである商売人としてのプライドだけは守ろうと。『借りた金は返す。それだけは絶対に返す』ことだけを考えていた」(宇野氏)

苦境を支えたのは周囲の力

 もちろん、そんな苦境も一人では乗り越えられなかった。会社が苦境に陥ると、優秀な社員が軒並みやめてしまったり、会社のモチベーションが下がったりしてしまうもの。そんな時に必要なのは「周囲を巻き込む力」だ。

 熊谷氏は400億近くの損失を抱えた時、社内にすみやかな情報開示を行い、社員に状況を説明するとともに、「今は苦しいけれど、未来はこうなっていく」という将来のビジョンを具体的に語ったという。苦しい中でもこれからどうなるかを明確に示すことで、社員一丸となってそれを目指していこうという気持ちが一つになった。結果、幹部は誰一人やめることなく、結束力は高まった。


 大きな目標にまい進する企業家たちは、輝かしい世界に生きているように私達の目には映る。しかし、その裏には比較にならないほど大きな失敗と苦悩があることを忘れてはいけない。大きな苦悩に直面しながらも前を見続けるその姿勢と経験は、後を追いかける人々にとって大きな勇気を与えているに違いない。

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