1. 『合理的なのに愚かな戦略』大企業が業績不振に陥る理由と中小企業が担う役割とは

『合理的なのに愚かな戦略』大企業が業績不振に陥る理由と中小企業が担う役割とは

出典:pixabay.com

 大企業には、情報や経験のリソースが豊富に蓄えられており、戦略面においても非常に合理的なイメージがあります。しかし、テクノロジーやITなどの分野では、競合している中小・ベンチャー起業にシェアを奪われてしまうこともしばしば。

 リソースや戦略面では大企業の方が高水準なものを持っているにも関わらず、こうしたことが起こるのはなぜでしょうか。ビジネス評論家であるルディー和子氏によると、大企業が行った戦略の失敗例を分析すると原因が明らかになるそうです。

 ルディー和子氏の著書、『合理的なのに愚かな戦略』という本には、大企業の失敗例だけでなく、中小・ベンチャー企業が担う役割についても書かれているので一部をご紹介します。

「顧客の声」を意識しすぎるばかりに失敗をする大企業

 大企業の多くが掲げる「顧客の声を第一に考える」というスローガン。顧客視点で経営戦略を立てることは必要ですが、顧客の声を意識しすぎたがために判断を誤ってしまった企業も存在します。

 「ちょっと贅沢なビール」のキャッチコピーで有名な高級志向ビールの地位を確立していたエビスビールですが、2008年末の金融危機による不況から消費者の行動を予測した結果、「エビスは時間をおいしくします」という親しみやすいキャッチコピーに変更しました。しかし、どのような飲料にも当てはまるような薄いコピーだったため、消費者の反応が得られず失敗してしまったのです。

 それだけでなく、エビスは確立していた高級志向ビールの地位を捨ててしまったため、後発のサントリー社のプレミアムモルツに高級志向ビールの座を奪われてしまいました。

 こういった例はビール業界の話だけでなく、どういった業界にも通じるものでしょう。不況という社会的な問題から、「顧客の声」よりも経営者自身の心理的不安を優先してしまった結果なのではないかと著者は考察しています。

大企業が中小企業、ベンチャー企業の力を借りる必要性

 大企業は組織が大きく複雑なため、革新的なアイデアが社内で生まれたところで、失敗を恐れて保守的になりがち。そのため、中小企業やベンチャーが新しいことにチャレンジする機会を担うことが多いのが現実です。「大は小を兼ねる」ということわざがありますが、企業においては全く適用出来ないと考えても良いでしょう。

 近年、大企業は中小企業やベンチャー企業の力を借りるという方針を打ち立てている企業が多いそうです。なぜなら、大企業ならば数ヶ月もしくは数年かかるプロジェクトでも、小規模の企業ならば数日で実行が可能だから。そして、失敗を何度も繰り返し革新的で斬新なアイデアを実現できる可能性が高いからだそうです。

 Google社が東大初のベンチャー企業「シャフト」を買収したことが記憶に新しいですが、イノベーションは実行力のある小規模な企業から生まれやすいそうです。Google社のような地位を確立した企業でも、自己を否定することを恐れず勇気のある決断をしました。
 

 戦略の失敗例や大企業の新しい動きを分析することでわかるのは、合理的に見える戦略であっても、最終的な決断は経営者の心理に影響するということ。そして、大企業と中小企業などを比べて優劣があるわけではなく、規模によって担う役割が異なるということでした。

 今回ご紹介した『合理的なのに愚かな戦略』では、さらに事細かに具体的な企業を取り上げて事例別に分析されており非常に興味深い内容です。気になった方はぜひ手にとってみてください。

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