1. 社長の役割はモスバーガーを買うこと? ーー 3名の若手起業家が語った「起業」という働き方【後編】

社長の役割はモスバーガーを買うこと? ーー 3名の若手起業家が語った「起業」という働き方【後編】


 先日、株式会社ドリコムにて、これからの「働く」を考えるイベント「ベンチャーという働き方、起業という働き方」が開催された。

 このイベントは、なかなか身近に感じにくい「起業」、「ベンチャーで働くということ」について考えるというもの。ここでは、3名の若い起業家が語った、トークセッションの内容をお伝えしていく。

前編はこちら

登壇者

dely株式会社 CEO 堀江裕介氏
株式会社Stone Free 代表取締役CEO 石黒燦氏
株式会社Ignom 代表取締役 吉田優華子氏

モデレーター

株式会社ドリコム 杉山秀樹氏

見出し一覧

・起業家にとって大切なのは先見性とポジティブさ
・ユーザーの生の声を聞くことを大切にしている
・最も大切にしているのは「チャンスを掴みにいく」こと
・強み・弱みを把握し、勝てる市場を毎日探している
・創業フェーズの社長の役割は「何でも屋」!?
・一番大切なのは「楽しみながら働く」こと

起業家にとって大切なのは先見性とポジティブさ

杉山:それでは、吉田さん、「Ignom」という会社を運営していく中での楽しさと、一方での苦しさみたいなところを、ぜひお話ください。

吉田:楽しさと大変さ、どっちもあるんですけど、いい意味で一息つく暇がないと。日本の音楽業界を全く知らないうちに代表になったので、まずは音楽業界の仕組みを学ぶところから始まりましたね。

 日本の音楽業界は保守的なので、今でこそ音楽アプリは火付け役となった「DropMusic」を始め、たくさんありますけど、これだけヒットしてしまうと音楽業界から反抗や抵抗もある。

 でも、海外の事例とかを見てると、これからどんどん新しいデジタルミュージックの文化が広がっていくと思うので、今はそれに向けて日々色んな方に会ってお話をさせていただいてます。結構、大変ではあるんですが楽しいところでもあります。あと、アプリ運用の特徴として、プラットフォームを持っているAppleとの調整などもあり、本当に一息つく暇がないんですけど、それが楽しいです。

杉山:ありがとうございます。会社を運営していくという立場になり、その前は社員として働いていて。その中で、やっぱり会社を運営していくっていう立場として必要だと思う姿勢や考え方に違いってありましたか?

吉田:今の自分自身の課題でもあるんですけど、会社の代表として大事だなって思うことの一つにあるのはポジティブ力。それに関して、私は少なからず自信はあるんですけれども。あと一つ、大事だなって思うのは、先見性ですね。

 たくさんトラブルがあった中で、もっと先見力があれば防げたなと思うこともありますし、次にどの市場を攻めるかっていうときに、このあと市場がどういう動きになるかを読む力も必要で、そこは大事だなと思ってます。その二つかな。

 ポジティブが一番だと思います。めげてたら何も進まないので、できないことはないし、再起不能になることはないだろうって自分に言い聞かせて、日々頑張ってますね。

ユーザーの生の声を聞くことを大切にしている


杉山:ありがとうございます。日々大変だとは思うんですが、そうした毎日の中で、「これだけは大切にしていること」ってあるんですか?

 ビジネスアイデアを一日一個考えてみるとか、あるいは睡眠は絶対に削らないとか。それぞれ、もしこだわりみたいなのがあったら教えていただきたいです。では、マイクを取った吉田さん、お願いします。

吉田:これだけユーザー規模が膨らんでいるので、大切にしていることはユーザー目線です。今、「DropMusic」のメインターゲットは10代女性なんですけど、私は今24歳。

 わりと10代、いまどきの女の子と感覚はそんなに変わってないだろうなって思ってたんですけど、実際、週末に渋谷に入り浸って10代の女の子と話したりしていると、全然アプリに対する価値観とかが違う。

 友達とのコミュニケーションの仕方とかも全然違っていたので、私はもうおばさんなんだなって自覚しました(笑)。なので、なるべく自分の固定観念に縛られず、生の声を聞くということを意識しています。電車の中でも10代の女の子がいたら、その後ろにピタってくっついて、どんなアプリ触ってるんだろうっていうのを盗み見たりしてますね。

杉山:それっていうのは何か自分からセッティングして、全然知らない10代の方にユーザー調査しているみたいな感じなんですか?

吉田:ユーザー調査って言うと生の声が聞けないので、街中で知り合った10代の女の子と交流を持つようにしています。そこで知り合った女の子と後日、カフェでお茶しようって誘って、「ちょっと◯◯な理由で話したいんだよね」っていうのをやっています。

杉山:ちょっと女性ならではのアプローチの方法みたいな感じがしますね。男性がやると怪しいですね(笑)。

吉田:そこは武器と思って、活用してます。

最も大切にしているのは「チャンスを掴みにいく」こと

杉山:素晴らしいなと思います。では石黒さん、もし日々を過ごすうえで大切にしていることがあれば、教えていただけますか?

石黒:僕が一番大切にしているのは、チャンスを掴む力を高めるということ。結構ベンチャーの世界って不確定要素が多くて、どれだけ計算しても、基本的に計画立ててもほとんどが上手くいかない。結構、偶然に左右されることが多いんですね。

 例えば、ベンチャーと全然関係ない世界の人から、「実は私の親戚に漫画家さんがいて、ちょうど連載が終わって困ってるみたいなんだよね」といった話が舞い込んできたり。そんな経緯で有名な漫画家さんと今いろいろ進んでいるんですけど、日々の中でチャンスを掴む力を高める。

 例えば今日、僕はアニメのTシャツ着ています。真面目な服装の方が多い中、結構ふざけたTシャツだと思うんですけど、これだけ会場にいっぱい人がいると、1回会っただけじゃ名前だったりとか、どんなことしてますとかっていうのは覚えてもらえないわけですよ。特に投資家の方や先輩の起業家ってたくさんの人に会ってきていて、その中で彼らに覚えてもらうっていうのは、チャンスを高める一つの方法なんですね。

 そこで、アニメとか漫画のサービスやってるやつが、アニメとか漫画のTシャツ着ていれば、名前覚えてもらえなくても、「あ、あのアニメの人ね」みたいな感じで、いろんな形でチャンスが転がってくるんじゃないかなと考えています。

 今のは一つの例ですけど、日常の中でもできるだけ色んな人と関わったり、色んな場に出ていったりとかしてチャンスをつかみに行くっていうのは、私は一番大切にしていますね。

強み・弱みを把握し、勝てる市場を毎日探している

杉山:ありがとうございます。では堀江さん、日々過ごす上で大切にしていることはどんなことがありますか?

堀江:ベンチャーが正面からぶつかっても勝てないってところはだいぶ見えて来ていて、昔だったら「打倒!Apple」みたいな感じだったんですけど、今は正直、勝てないところ、自分たちの強いところ、弱いところをしっかり把握して、勝てる市場をしっかり探すということをコツコツ積み重ねています。

 市場選択とかそういったところの判断とかを間違わないように、毎日色んなことを勉強しつつ、なるべくケンカ売らないようにどうやったら気に入ってもらえるかなとか。そういうのを考えつつ戦ってる感じですね。

杉山:そんな風にして周りの情報を適宜収集している中で、堀江さんが最近気になっているビジネス、気になってるサービスとかってあるんですか?

堀江:僕は、1か月で1000万ぐらい稼げばいいと言われたら、ずっと「かつらのEC」をやりたいなって思ってました。でも、それでは上場できないのでやらないですけど、色々とそういうアイデアは日々浮かんできていて。まぁ、そういったことを毎日考えるようにしてるっていうのはあるんですけど。そのスケールとかも考えつつ、いろいろ自分の頭の中で組み立ててといった感じですね。

杉山:色んなアイデアを見つけてくるための情報収集とか、アイデアを形にしていくためにコツみたいなのってあるんですか?

堀江:まず、自分のアイデアがいいかどうかは別として、すごい陳腐なものであれなんですけど、とにかく情報に触れる量は人より増やしたいなと。本なり、ニュースなり。

 あとは、色んな年代の、特に年上の方とご飯食べたりとか、そういうことですかね。それは、起業したことで本当に色んな方が誘ってくれる。新卒で入っていたら誘ってくれないような方々が、たくさん自分のことを気にかけてくれて誘ってくれたりするんです。それは、非常にいい面だなと思います。

創業フェーズの社長の役割は「何でも屋」!?


杉山:ありがとうございます。では、本日せっかく創業フェーズにいらっしゃる社長の方々ですので、ゼロからイチを立ち上げようとしている時の社長の役割は、どういったものがあると思うかをお聞きしたいです。まずは、ビジネス歴が長い石黒さんから社長の役割を聞かせていただけますか。

石黒:まだ僕たちみたいなフェーズの起業家は、社長ってCEOっていうんですけど、「Chief Excective Officer」じゃなくて「Chief Everything Officer」だと思っていて、基本的にどんなことでもやらなきゃいけないと。

 仲間がいて、彼らが一番パフォーマンスを出しやすいように、オンラインゲームで言うところの「エンハンサー(※)」的な役割っていうのが、今の僕たちのフェーズ、社長の一番の役割なんじゃないかなと思いますね。

杉山:ありがとうございます。吉田さんの場合でいうと、どうですか? 社長の役割というのは。

(※)エンハンサー・・・オンラインゲームでの役割として『味方を強化する』『仲間を支える』という意味

会社をスタートした時は企業理念の明文化を徹底した

吉田:私達は最初4人でスタートしたので、まずはみんなの足並みを揃えるというところを意識しました。もともと「Ignom」って「Startup Boarding Gate」の第一期にあたる「Startup Boarding」から設立していて、熱量はあるけれど方向性が合ってるかっていうと合ってなかったので、まず企業理念とか、自分達4人のものづくりのこだわりがどこにあるかっていうのを明文化して、それを繰り返し言い聞かせるというところを尽力しましたね。

 最初の1、2か月ってほとんどそれしかしてないんじゃないかって思ってるぐらい、そればっかりやっていました。それを経て初めて、それぞれ4人のパフォーマンスが最大化できればなと。まずは企業理念だったり、ものづくり精神。あと、会社の文化醸成っていうところはずっと意識していて、それは私の役割かなと思ってました。

杉山:ありがとうございます。では堀江さん、先ほどちょっと話の中で、やることは何でもやるみたいな話がありましたが、改めて考えると、社長の役割とは何でしょうか?

モスバーガーとコンビニでスイーツを買ってくるのが役割だった

堀江:僕らは、ある程度人数が増えてきているんですけど、最初の頃で言うと、僕の役割はモスバーガーとコンビニでスイーツを買ってくること。みんながコードを書いている中、僕はやることなかったので、夜にモスバーガーを買ってきてました。

 みんなが喜んでくれて書いてくれればいいかなっていう役割です。だから、CMO、僕はチーフモスバーガーオフィサーですね。

杉山:仕入れるものは、最近になって変わってきたんですか?

堀江:冬になって来て「おでん」とかを買ってくるのでCOOになりがちですね。僕はあんまり頭が良くないので、出来ればそういう雑用と、あとはトイレ掃除やらせていただいてます(笑)。

杉山:ありがとうございます。では、残念ながら終了のお時間が近くなってきてしまったので、ここで一旦会場から質問してみたいという方がいたらお願いしたいのですが、会場の中で本日のパネリストの方々に質問したい方いらっしゃいましたら、挙手をお願いできますでしょうか。

一番大切なのは「楽しみながら働く」こと

質問者:企業理念は何かって言うのと、その企業理念にした理由っていうのを教えていただければと思います。よろしくお願いします。

吉田:企業理念は、「まごの手」づくりです。「その心は?」っていうところなんですけど、4人で話し合った時に普段からどういうことを考えてるのか、フランクに出し合ったんですよ。そうしたら3つのキーワードにたどり着いて、それが驚きと洗練、それから新常識っていうものだったんですね。

 それのいいモデルが「DropMusic」で、今まで必要性にすら気づいていなかったんですけど、実際それが現れることによって、必要性とか便利さに初めて気付く。1回使い出したらはまってしまう。はまって毎日使うにつれて、その人にとっての常識になってしまうっていうような、ものづくりっていうのをやっていきたいと。

 それを何か一言でまとめられないかなって考えたら、「『まごの手』ってそうじゃない?」という話になり、「じゃあ、『まごの手』づくりにしよう」ってことになりました。

石黒:うちの会社の場合は、企業理念っていうようなものはそんなになくて、「ワクワクを世界中に」っていうのが一つの目標かなって考えています。結構マンガとかアニメを初めて見る時ってワクワクすると思うんですけど、そういうのが感じられない人たちが世界中にはいっぱいいて、貧しい国の子どもとかにもアニメとかマンガの面白さっていうのを届けていけたらいいのかなって思ってます。

 あと、個人的には「ジャンプ」は一つの目標ですね。やっぱりエンターテイメントビジネスなので、面白いコンテンツを常に出していかなきゃいけない。だったら、僕たちでもっと新しい、面白いコンテンツを世界中に発信していきたいなと考えています。

堀江:僕はあんまりそういうかっこいいのがないから、楽しもうって思っています。みんな結構真面目なので、会社で一番気楽に振る舞うようにして、日々笑いながら仕事をする。みんな、家族より一緒にいる時間が長いので、まずは社員のみんなが一番楽しい環境作るっていうのと、自分たち自身がまず幸せになるために頑張りましょうっていうこと。それが一番大事だと思うので、楽しみながら働くっていうのを僕は意識しています。

杉山:ありがとうございました。非常にいい質問でした。

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