1. 「会社に求められなくても大丈夫。まずは1人でやってみる」ーー 社内で自由に働くための5つの心得

「会社に求められなくても大丈夫。まずは1人でやってみる」ーー 社内で自由に働くための5つの心得


 組織に属しながら、起業家のように働く「イントレプレナー」。興味を持っている人も多いと思うが、どうやってなるのかはなかなか分からないはず。そんなイントレプレナーについて、実践者も交えて語ったイベント「TWDWサラリーマンの逆襲」が、11月22日に開催された。

 第4回では、野村不動産でイントレプレナーとして働く刈内一博氏が、自身の体験を披露。そこから気づいた「イントレプレナー5つの心得」を話してくれた。

前回までの記事はこちら



登壇者

THS経営組織研究所代表社員 慶應義塾大学SFC研究所上席所員 小杉俊哉氏
オイシックス株式会社 執行役員 海外事業部長 高橋大就氏
野村不動産株式会社 新宿360°大学 刈内一博氏

モデレーター

株式会社パソナテック ハッカソン芸人 羽渕彰博氏

見出し一覧

・小学一年生の65%は、今は存在しない仕事に就く
・過疎化した農村からバリューを生み出すイントレプレナー
・イントレプレナー5つの心得

小学一年生の65%は、今は存在しない仕事に就く


刈内:よろしくお願いします。今日、登壇するにあたって、羽渕さんの方から「スーツとネクタイ姿で来てくれ」って言われて、今ちょっとはめられたと思ってます。ようやく、この展開の中で僕の役回りが見えて来て、そういうことかと。ネクタイとってもいいですか?(笑)

羽渕:はい、大丈夫です(笑)

刈内:「サラリーマンが面白いイントレプレナーという働き方」というテーマで、10分ほどお時間を頂きたいと思います。

 まずは簡単なプロフィール。僕は、今36歳です。新卒で野村不動産株式会社に入社し10年くらい働いています。野村不動産では「プラウド」というシリーズの分譲マンションの企画や事業推進、商品開発を経て、今は海外事業に従事しています。

 また仕事とは別で、新宿360°大学というオープンイノベーションのためのプラットフォームを立ち上げて、その運営もしています。最近はテレビの討論番組に論客として出演させていただいたり本を出版や講演依頼の相談もよくいただきます。

 さて、「2011年度にアメリカの小学校に入学した小学生の65%は、大学卒業時には今は存在しない職業に就くだろう」というニューヨークタイムズ紙で話題となった研究発表をご存知でしょうか?

羽渕:素晴らしい。

 刈内:日本でも、同じようなことが起きると言われています。何を言っているかというと、小、中、高、大を合わせた16年間で、今存在する仕事の65%が刷新されるということです。65%という数字を流用すると、16年後に、今ある仕事に残れる人は僅か35%で、あとは新しい仕事に就く人と、仕事を失う人となります。

 でも実はこれだけではなくて、新しい仕事を生み出す人も必要です。この新しい仕事を生み出す人のことを、サラリーマンの場合は、「イントレプレナー」と呼ぶんじゃないかなと思います。

過疎化した農村からバリューを生み出すイントレプレナー


刈内:ここから5分は、僕が3年くらい前に始めたプロジェクトを紹介させていだたきます。

 ご存じの通り、日本は今、縮小社会に向かっていて、特に地方ほど人口減少が深刻だと言われています。そして、少子高齢化で自力再建が難しい地域がたくさんあります。一方で、戦後生まれの団塊世代もすでに60歳前後となります。

 彼らの多くは、高度経済成長期に都市部に移住してきた都市生活者で、そのお孫さんにあたる、今のお子さんたちが自然豊かな故郷(ふるさと)を持たないと言われてます。

 僕の世代だと、おじいちゃんやおばあちゃんが住んでいる自然豊かな田舎を持つ人が多いと思います。夏休みに田舎へ行くと、都会では体験できない環境で貴重な経験ができました。

 ただ、今のお子さんたちは「おじいちゃんは東京のマンションに住んでいます」みたいなことが起きていて、自然から多くのことを学ぶ機会を失っています。また、そうした状況を嘆く親御さんも多い。そういう社会課題があります。

 こういった過疎化と少子高齢化で荒廃が進む農村と、都会暮らしで故郷を持たない子どもたちのニーズを組み合わせることによって、何か新しい仕組みができないかなというのが、このプロジェクトのスタートラインです。

 都市と農村とのつながり方を、縮小社会向けにリデザインしていきましょうみたいなことを考えました。もともと里山って、人々の暮らしと密接な関係があったそうです。人が薪炭材などの暮らしに必要な資源を里山から得ながら、里山のメンテナンスをすることで共存関係にあったんですけれども、人の生活が変わってしまったので、今は里山文化の荒廃が進んでいます。

 また昨今のエネルギー問題もある中で、実は日本の里山から得られる薪炭材で、3000万人くらいの生活に必要なエネルギーが賄えると言われています。そういった文化を残していくことが大切だと、学術的にも言われている。すごく複雑な社会課題なので、こういった問題を多角的にとらえる必要があるなと思い、産民官学と多様なセクターを交えた話し合いを始めました。

 野村不動産はお客さんや社員が都市で生活しているので、そういったステークホルダーの皆さんとのインターフェイスを担います。ところで、みなさんCSVってご存知ですか?

 クリエイティング・シェアード・バリュー、共通価値の創造という意味ですけれども、簡単に言うと、営利目的である民間企業が、それを目的として活動の中で得たバリューの一部を社会にもシェアしていきましょう、共通の価値を作っていきましょうというもの。

 具体的には、子どもたちに故郷を作ろうということで、プラウドに住んでいるお客さん、あるいはビルのテナントのお客さんとそのご家族をお招きして、3年で1000人近い都市生活者の方々をご招待して、筑波山麓の自然豊かな里山で、里山体験イベントを行いました。

 田植え、稲刈り、藍染、ホタルの観察会を行い、そういった活動を会報誌や社内報で盛り上げて、活動の輪を広げて来ました。稲の成長記録も東京にいながらWeb上で確認できて、子どもたちの環境教育や自然への愛着づくりにも寄与しています。

 また、築150年の茅葺き屋根の古民家を近所の集落から譲り受けて、都市と農村との拠点として、茅葺き小屋の移築も行いました。移築に際しては、筑波大学の先生や学生、地元のおじいちゃんもいれば、野村不動産のお客さんや社員とその家族もいる。いろんな人たちで一緒にセルフビルドで作りました。

 社内でこうした活動に対する理解を得るために、上手に社員を巻き込むことが大切だと思います。そもそも、こうした新しい取り組みは、社内でも周囲から見ると何やってるかよくわからないんですよね。

 なので、上手く「社員研修」という形でバスツアーを組んで、100人近い社員を茅葺の小屋づくりに参加しています。そうすると、参加した社員が、「すごくいいことをしていたよ」って、会社に持ち帰って言いふらしてくれるんですね。

 そうやって、会社の中で徐々に理解者を増やしていく。企業内の新しい取り組みは、そういった地道なロビー活動がすごく大切なんだと思います。完成した茅葺き小屋は、都市と農村との交流の拠点や高齢者の多い地域の方の憩いの場として活用されています。筑波大学も巻き込んでいるので、学生はこのプロジェクトに参加すると単位がもらえます。

 バナキュラリズムに基づいて、その地域のアイデンティティを保つために、里山体験イベントに合わせて、里山マルシェという特産品の販売も行っています。

 こうした取り組みの結果、グッドデザイン賞を3部門同時受賞するなど、社会的な評価も頂いて、ようやくブレイクスルーできたかなと思っています。また、環境に優しい減農薬農法と筑波山の湧き水で稲を育てる「野村不動産エコ田んぼ」で採れた美味しいお米は、東日本大震災の被災地の子どもたちにも届けています。

 ここまでがプロジェクトのご説明で、ここからイントレプレナーの心得です。小杉さんの前で僕がこれを話すのはかなり恐縮なのですが(笑)。

羽渕:やっとサラリーマンに逆襲が始まる感じで。

イントレプレナー5つの心得

1. 会社リソースを活用して、活動にレバレッジを効かす

刈内:1つ目。会社リソースの活用で、レバレッジを利かせること。会社のリソースとは、お金と人とノウハウと信頼だと思います。

 例えば、僕個人が「かやぶきの里プロジェクト」をやろうとしたときに、自力で都市生活者を何百人も連れていけないじゃないですか。野村不動産は、そこに何十万人っていうお客さん、つまり都市生活者との関係を持っているので、インターフェイスとして機能します。なので、会社を巻き込んだ方が、活動にレバレッジが効きます。

2. 自分、会社、社会が求めることからテーマを決める

刈内:2つ目。自分がやりたいこと、会社が求めること、社会が求めることの公約数からテーマを決める。ありがちな例え話として、例えば途上国の恵まれない子どもたちに学校を建ててあげたいと。社会的には求められているいいことだし、僕もやりたいと。でも、それって会社は求めていますか? これ、サラリーマンにとっては、結構大事だと思います。

 この真ん中の会社が求めることを抜かしてしまうと、仕事とプライベートがどんどん分離していっちゃうんです。ここがポイントで、会社が求めていることも公約数の中に含めることが、活動のテーマ決めの中ではすごく大事だと思ってます。

3. まずはプライベートでやってみる

刈内:所属部署のタスクがダメなら他部署でやる。他部署がダメならスカンクワーク、課外活動ですね。それでもだめなら、まずはプライベートでやってみることが大事。プライベートでやったら仕事じゃないじゃんって思うかもしれませんが、会社って新しいことを始めるときは、なかなか首を縦に振ってくれないものです。

 仮にプライベートで始めたとしても、やっていく中で「これはいけるな」って思ったら、会社の中で仲間を集めて社内サークルみたいな形で盛り上げていくと、そのうち、どこかの部署が「ちょっとうちでこれを扱いたい」って言ってくる。

 なので、まずはプライベートでやってみるっていうのが、ボトムアップによる組織内イノベーションの起こし方として合理的だと思います。いきなり、「君にミッションとして与えます」と言われることはありませんので、そこは目指さない方がいいんじゃないかな。多くの人はここで諦めちゃってると思うんですね。

4. 空気決裁を使う

刈内:手続き決裁がダメなときは、空気決裁。手続きって、とても日本的なんですよね。新しいことはなかなかハンコを押してもらえない。

羽渕:空気決裁って初めての言葉なので、少し補足していただいてもよろしいでしょうか。

刈内:空気決裁っていうのは、例えば「かやぶきの里プロジェクト」の場合、茅葺き小屋づくりのために、たくさんの社員を里山に連れて行ったじゃないですか。これが空気決裁の一例だと思います。社員研修として茅葺き小屋づくりに参加した社員が会社に持ち帰って「週末、なんか刈内に里山へ連れていかれてさ。これが結構良かったんだよね。」みたいな。

 実際に100人近い社員が参加したのですが、100人もいたら結構強いんですよね。噂が巡って、「なんかあいつがやってることはいいことらしいぞ」みたいな空気が出てくる。空気が出来てくると、手続き決裁はし易くなると思います。なので、新しいことをやる時は、いきなり手続き決裁を取らずに、まずは空気決裁を取りにいくことをお勧めします。

5.思いついたらやってみる

刈内:ちょっと違うレイヤーの話なんですけれども、出逢い、学び、アイデアは、それだけでは価値を生まない。すごくそう思っています。多くのサラリーマンが一番つまづいている箇所が、多分ここです。

 今日出逢った人、学んだこと、浮かんだアイデアって、それだけでは価値を生んでないですよね。その次に、アクションに繋げることで、はじめて価値が生まれます。なので、この5つ目が、実はすごい大事だなと僕は思っています。すみません、長くなりましたけど以上です。(続く)


次の記事:イントレプレナーの第一歩は、味方を作ること。社内の空気を味方につける、仲間の増やし方(近日公開)

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