1. 【会計士Xの裏帳簿】小渕大臣問題 政治資金監査人は気づかなかったのか

【会計士Xの裏帳簿】小渕大臣問題 政治資金監査人は気づかなかったのか


 小渕優子衆議院議員に関連する政治資金団体に不透明な収支があったことが問題視され、経産大臣の辞任に発展しました。私がこのニュースを聞いて思い出したのは、平成19年に、政治資金に関する問題の続出を受けてスタートした政治資金監査制度です。

会計人が登録する政治資金監査人制度

 同制度では、国会議員に関係する政治団体は、収支報告書、会計帳簿、領収書等について、総務省への登録を行った政治資金監査人による監査を受けることが義務付けられています。監査人として登録できるのは税理士、公認会計士、弁護士です。

 小渕氏の政治資金団体も、報告書に監査人のお墨付きを受けていることになります。ここで当然疑問がわくのは「このような不自然な支出に、監査人は気づかなかったのか」ということです。

公選法違反は監査の対象外

 結論から言うと、監査によって問題が明らかになるとは考えにくいと思います。というのも、政治資金監査は「外形的・定型的」なもので、帳簿にある支出が帳票により証明できるかを調べるもの。政治資金の支出の妥当性を監査するものではないからです。

 たとえば、今回最も大きな問題となったのが、支援者を招いた「観劇会」の収支。参加者から募った会費よりも支出が大幅に多く、公職選挙法で禁止されている有権者への利益供与にあたるのではないか、という疑いです。

 企業がお得意様を集めて同様のイベントを開いた場合を考えてみましょう。会費の額より、企業の「持ち出し」が多いことは全く珍しい話ではなく、帳票が揃っていれば、会計上不自然な点はありません。公職選挙法に違反する支出であるか否かは、監査の対象外。監査人が報告書にハンコを押すことは不思議ではないのです。

 ただし、小渕氏は観劇会について実費を徴収しているため、公選法違反には当たらないと主張しています。そうすると、報告書の虚偽記載の疑いが生じます。今後、小渕氏は報告書の内容について改めて外部の税理士らによる調査を行うとしています。どのような新たな情報が出てくるのか、注目したいと思います。

政治資金に関する会計人の役割

 「利益供与などの問題を指摘できなければ、規正法の意味がないではないか」という声も聞こえてきそうですが、私は必ずしもそうでもないと感じます。

 今回の問題の発見は、おそらく公開資料のみがきっかけとなったものでしょう。報告書は総務省のホームページで閲覧することができます。また、同省へ情報公開請求を行えば、添付した領収書などの閲覧も可能です。

 政治資金規正法の立法趣旨は情報公開。政治団体の収支内容を有権者が知り、それを基に投票行動等につなげることです。今回、杜撰な収支が公開資料からあぶりだされたことは一定の意義があるのではないでしょうか。(報告書に全く記載されていない「裏金」が一番の問題では、という気もしますが、それは横に置いておきます)

 会計人は、監査の限界を知った上で、専門知識をもとに公開資料をチェックし、問題提起することができる存在。監査人としてだけではなく「会計ジャーナリズム」とでも呼ぶべき役割を担う税理士、会計士が登場することも重要であると強く感じます。

カイケイ・ネットナビゲーターによるコメント

 専門性の高い会計人だからこそ、業務の限界を知っておくことは、とても重要ですね。
 例えば、「監査は出来るが経営は出来ない」という監査の限界を知って、企業で 経営に携わるべく転職する方も数多くいらっしゃいます。これからのキャリアを 考える上で、業務の特性や限界を考えてみると、ご自身の志向を明確にしやすく なると思います。
あなたがやりたい仕事には、どんな特性が、どんな可能性が、どんな限界がある でしょうか?


(カイケイ・ネットナビゲーター小林 典子MS-japanコンサルタント)


<この記事はカイケイ・ネットが提供しています>

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