1. 「Web完結のサービスは出尽くした。今後は『体験』を軸に考えろ」ーー 日本のコンテンツ産業の未来

「Web完結のサービスは出尽くした。今後は『体験』を軸に考えろ」ーー 日本のコンテンツ産業の未来


 11月29日に開催される、「エンタメ」×「IT」をテーマとした事業コンテンスト「START ME UP AWARDS 2014」。最終審査の開催に先立ち、11月9日「エンタメ」×「IT」のサービスを手掛ける起業家4名が集まり、日本のコンテンツ産業について語り合った。ここでは、そのトークセッションの内容をお伝えしていく。

登壇者

Beatrobo,Inc President&CEO 浅枝 大志氏
フォッグ株式会社 代表取締役 関根 佑介氏
株式会社 nana music CEO 文原 明臣氏
Live Styles 株式会社 代表取締役 CEO 松田 晋之介氏

モデレーター

音楽プロデューサー・Start Me Up Awardsオーガナイザー 山口 哲一氏

「みんなが気付いてない、でもこれが欲しい」を作りたい

山口:今日は、「エンタメ」×「IT」をテーマにしたスタートアップ向けのイベント、「START ME UP AWARDS」の第1回を記念して、若手起業家4人に集まっていただきました。昨年世界を変える80年代生まれの起業家」 にも登場していただいた方々で、僕から見て、エンターテインメント的にITを活用している起業家です。

 日本は音楽業界のデジタル化対応が遅れていて、業界全体が沈んでいる。一方、海外では、音楽とITが一体化して音楽IT企業がすごい時価総額となっている。

 「その差は何だろう?」という問題意識から、ITで新しいことをやりたい人とエンタメの人の交流が生まれた方が良いと思いようになりました。そんな思いを持って活動をしていて、今回の「START ME UP AWARDS」もその一環なんです。

関根:自分の場合、「エンタメ」と意識したことはありませんね。歌詞アプリの「Lyrica」や「discodeer」を開発したときは、音楽アプリという認識でしたけれど。

浅枝:僕が自覚しているのは、生活必需品ではないということ。「これがないと生活できない」というものを作る方が問題発見しやすく、サービスも作りやすいのですが、僕たちは違った方向でサービスを開発しています。

山口:なぜ、生活必需品をやらないのですか?

浅枝:生活必需品は、他の誰かがやってくれる気がします。僕は「みんなが気付いてない、でもこれが欲しい」というものを作りたいですね。

山口:なるほど。「エンタメ」×「テクノロジー」という概念自体が古かったかな?(笑)僕がエンタメという言葉を使ったのは、音楽業界や映画業界、アニメ、出版など、従来のタコツボ的な業界の定義が意味を失い始めているので、その溶けはじめている壁を越えるサービスが出てきて欲しいという思いからです。

人生の醍醐味は「出会い」と「振動」にある

松田:僕はエンタメと言うより、人生の醍醐味は「人との出会い」だと思っているので、人との出会いを作れるようなものを作りたい。それが僕には「チケット」にあると思い、「tixee」というサービスをやっています。

 そして、もう一つの醍醐味は「振動」だと思っています。ライブが良いと感じるのは、ドラムの音の振動を感じられるからであり、また人と話しているときも鼓膜が振動している。人と出会うと、振動が起こるから感動するし、それを共有できる。そのきっかけになるサービスをやっていると自分では思っています。

山口:なるほど。人生の醍醐味は「振動」、良い言葉ですね。

松田:「tixee」については、「このサービス、何で今まで無かったんだろうね」と言われるのが一番の褒め言葉。みんなの当り前の寄せ集めなので、先過ぎず、遅すぎず、そこを攻めているつもりです。

オンラインではなくオフラインにどう結びつけるかが大事


文原:日本の「音楽」×「IT」が、海外と比べて盛り上がってないとは必ずしも言えないないのではないでしょうか? ニコ動とか、独自のサービスもありますし。

浅枝:そうですね。AKB48の方がテイラー・スウィフトよりCD売れてますからね。(笑)

関根:Webで完結するサービスは、もう出尽くしている感がありますよね。コストかからないから参入しやすいけど、面白くないなと思います。今、注目しているのは、リアルとどう紐づけていくか。最終的に人は「体験」に一番お金を払うもの。

松田:僕らは、イノベーションを起こしたいわけですから未来は意識しますね。僕の考えるイノベーションには3つの方法があると思っています。

 一つ目の方法は、「早くなる」。新幹線やリニアモーターカーなどがそうですね。二つ目の方法は、「小さくなる」。ウォークマンがそうでしたし、iPodもありました。最後の方法は、「あった物がなくなる」です。例えば、ワイヤレス通信などがそうです。

イノベーションを起こして人々を動かすのが仕事

関根:そうですね。大きなインパクトがないと広く普及させていくことは出来ません。生活必需品ではないものって不要なものが多いので、すごい政治的な力が動かない限り、みんな使おうと思わない。それをイノベーションで、動かすのが自分たちの仕事だと思います。

文原:僕がやっている「nana」は音源をアップして、配信するというディストリビューションサービスとして語られることが多いですが、僕はコンテンツそのものではなく、コンテンツを共に作るプロセス、コミュニケーションに価値があると思っています。だから、メディア・コンテンツ事業ではなく、コミュニティーサービスと考えてますね。

 一緒に音楽をやると心の壁がなくなり、コメントが発生する。実際、リアルで知り合ってバンド組んだ、ゴスペルユニット組んだ、ということも起きているし、結婚する人まで出てきています。

音楽の力は「調和」にあると思っている

松田:テクノロジーは、マッチングでもパワーを発揮します。マッチングの最たるものはGoogleで、様々な情報や広告のマッチングしてますよね。

 でも、オンラインだけのサービスはもう出尽くしている。だから、オフラインに飛び出さないといけない。でも、ミッションは同じでマッチング。オフラインでは、人と人のマッチングが一番重要ですね。

文原:人と人が出会うコミュニティに価値がありますよね。音楽の力って、色々あると思うのですが、僕らは調和だと思っている。音楽は人と人の間を補うもので、そのための手段として「nana」を運営しています。

一定数のユーザーに対して、一気に普及するのが日本の特徴

山口:なるほど。話を聞いていると、みなさん手がけているサービスは違っても、ビジョンは同じ方向なんだなと思いました。

 ITサービスは、シリコンバレーが本場みたいなイメージがあります。浅枝さんや松田さんは英語も堪能ですし、海外でサービスを始めるという選択肢もあったと思うのですが、東京でやっている。みなさんが、東京でやっている良さ、日本人がやっていることの良さって何かありますか?

浅枝:「民族大移動」みたいな大きな出来事が最も起きやすいのが日本だと思います。JRが「Suica」を出したら、みんなが使うようになった。しかし、アメリカで「Suica」みたいなサービスを普及させるとしたら、10年以上のプロジェクトになると思います。

 一定数のユーザーに対して、一気に普及するのが日本の良さ。社会を変えるインパクトのある仕掛け方ができるのが日本だと思っています。

松田:僕も、あえて日本でやっています。日本のチケットサービスは、入場に対しての要求水準がとても厳しいので、この厳しさにきちんと対応できたら、海外への横展開は簡単だと思ったのが一番の理由ですね。

 あと、結局日本人なのでシリコンバレーでやろうとしても結局は、「学区外の人」という感じの扱いになるので、心の底からつながるのは難しい。不可能なことではないと思いますが、難易度は高いですね。だから、日本で始める方がやりやすいと思いました。

文原:僕は、神戸から東京に出ていたのですが関西に比べると、東京の方がスピード感、お金の量、人との出会いやすさという面で大きな違いを感じます。今は、福岡や関西も良くなってきてはいますが、東京の方がはるかにやりやすいです。

スタートアップに対するエコシステムが日本でも出来上がりつつある?

山口:もう一つ、質問です。近年の日本は、スタートアップ界隈が久しぶりに活況を呈していると聞きます。実感として、どうでしょうか?

関根:定期的にVC回りしていて感じるのですが、大企業の人達が自分で考えるより、若い人たちが考えたのを手に入れる方が早いということに気づいたようです。社内で新規事業やれと言ってもスピード感も悪いし、なかなか難しい。であれば、ある程度先が伸びそうなものに手を差しのべるという考えになっていきています。

山口:日本にも、スタートアップに対するエコシステムが出来つつあるんですね。

浅枝:これまでだったら、スタートアップは資金を3000万円調達したら勝ち組でした。
「Beatrobo」が2年前に5000万円集めた時、これ以上のバブルはないと思っていたのですが、最近では3億円集めたという話がバンバン出てくるようになりましたね。

関根:ただ、もしかしたら1強時代になってしまうかもしれないという心配はありますね。大型の出資を得たところが勝ち馬で、そこに乗っかっていけないとツラいという風になってしまうのは良くないですね。

浅枝:その一方で、時価増額があがるイメージ、エグジットの可能性が広がったことにより、ストックオプションの価値にリアリティが増したのは良いことだと思います。

デジタル・ネイティブ世代と戦ったら負ける


山口:みなさんは、1980年代生まれで、いわゆるアラサー世代です。僕から見ると、新世代ですが、そんなみなさんの「デジタル・ネイティブ」の定義を知りたいです。

関根:最初に手にした携帯がiPhoneという人。

浅枝:生まれた時から横にiPadが置いてある世代。今の6、7歳ですかね。

山口:なるほど。今日は座談会の前に、高校生向けのスマホアプリコンテスト「Start Me Up Jr.」 の審査もお願いしたのですが、これから出てくる若い世代に期待することはありますか?また、怖さを感じることはありますか?

関根:大学生のインターンと一緒に仕事をしていても、世代ギャップを感じることはないです。でも、今6、7歳のデジタル・ネイティブ世代が出てきたら僕らの企画力では無理。黒電話を使っていた人達がスマホ向けに良いサービス提供するのは、無理なのと一緒です。そこと戦いたくないですね。

浅枝:そうですね。戦っても負けると思うので、それまでにお金を持って資金の出し手に回りたいです。(笑)

今、イケてると思うコミュニケーションサービスとは?

山口:最近のコミュニケーションサービスについても教えてください。注目している新サービスって何かありますか?

関根:若者はもう「Facebook」はやらないですね。大学生にとっては、ダサい、おっさん向けのサービスというイメージが強いようです。「Instagram」か「Twitter」を使っている人が多い感じがします。

浅枝:僕らみたいに社会性を背負っている社長なら「Facebook」が便利ですけど、普通の人には面倒なことが多いんですよね。なので、「Facebook」も終わる未来が見えていると思います。「mixi」が無くなるなんて当時、誰も思わなかったけれど、今は、ゲーム以外にやってないでしょ?

文原:最近のサービスだと、「MixChannel」という10秒の短編動画撮影・編集アプリですね。Loveというカテゴリがあり、彼氏とのビデオなどが作られていて、とても凝っています。

浅枝:僕は「iam」というプロフ交換のサービスが素晴らしいと思います。

山口:自分も注目してます(笑)

関根:宣伝ありがとうございます。(笑)でも、そういう変なプレッシャーやめてください。

浅枝:あとは、写真加工の「Papelook」と思いっきり出会い系ですが、米国の「Tinder」は面白いですね。

関根:僕は「Rumor」は伸びると思います。友人同士内での匿名でつぶやくサービスで、面白いです。ただ、最近は使うサービスが固定されてきている気がしますね。

ポストスマホは「引きこもり」?


山口:みなさんのサービスは、スマートフォンの普及を前提にしたサービスですが、ポストスマホについて意見を聞かせてください。次の大きな時代の変換は、スマートホンの次世代だと思いますが、どのように考えて、準備していますか?

関根:もう「フォン」じゃなって、キー情報を持つガジェットは1個持ち歩くことになると思います。

浅枝:ポストスマホは、引きこもりです(笑)。どんどん便利になって、家を出ないで成り立つ時代が来るので、みんなが家を出なくなったらどうなるのかなとか考えています。

松田:モノはどんどん自分の心臓に近づいてくる。地方の物産展でしか買えなかったものがデパートに並び、御用聞きができ、通販、PC、スマホ、ウェアラブルと、どんどん自分の心臓に近づいてくる。それこそ、体内の埋め込みチップになるかもしれませんね。

山口:今日は、刺激的なお話をありがとうございました!

START ME UP AWARDS 2014 最終審査概要


日程:2014年11月29日(土) 
時間:開場 14:00開始 14:15 
会場:日本科学未来館(Miraikan)未来館ホール 
金額:¥1,000 - 投票券付 
内容:「エンターテインメントに関係するグローバルなITサービス」に関する優れた事業プランを選ぶ最終審査会。最優秀者をはじめ応募者には、パートナー企業、協賛企業、協力企業から投資や様々な提携のチャンスが与えられる。 

参加チケット:

公式サイト: 

U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう
この記事を報告する