1. 「決済とコミュニケーションは今後融合する」ーー メタップスCEO 佐藤航陽氏が見据える未来の世界

「決済とコミュニケーションは今後融合する」ーー メタップスCEO 佐藤航陽氏が見据える未来の世界


 11月12日(水)、アジア圏のスタートアップ情報を発信するメディア「Tech in Asia」がリクルートにて「Tech in Asia Meetups Tokyo」を開催した。

 このイベントは、11月26日〜27日に開催された「Start up Asia Jakarta 2014」の一環として開催され、メタップスCEO 佐藤航陽氏の講演ほか、スタートアップのピッチも行われた。ここでは、佐藤氏の講演後に行われた「Tech in Asia」編集長 デビット氏との対談の内容をお伝えしていく。

登壇者

株式会社メタップス 代表取締役 佐藤航陽氏
Tech in Asia 編集長 デビッド・コービン氏

見出し一覧

・事業の立ち上げでは「スケーラビリティ」を最も意識する
・「SPIKE」に関しては方向性を示しただけ
・「決済」と「コミュニケーション」は今後融合していく
・非上場でファイナンスがずっと続けられるならIPOは必要ない
・宇宙の方がスピーディーにビジネスをスケールさせられる
・英語を学ぶには「必要性」が重要
・シリコンバレーとは真逆の市場に拠点を置こうと思った

事業の立ち上げでは「スケーラビリティ」を最も意識する

デビット:新しい事業を作ろうとしたら、どのような準備が必要でしょうか? 2回、3回と事業を立ち上げてきたと思うので、「この事業はこういうプロセスが必要」「このような条件が必要」というのを教えてください。

佐藤:創業者のタイプにもよるかなと思っていて、自分が意識しているのは「スケーラビリティ」。どれくらいの規模で人に影響を与えられるのか、というスケーラビリティを最重要視し、全世界でビジネス展開できるかどうかを考えます。

 また、事業立ち上げの時に「儲かるかどうか」っていう話は結構挙がると思うんですが、メタップスはマネタイズに関して結構自信があったので、「どうにかなるだろう」とあまり気にしませんでしたね。スケーラビリティと会社のメンバーが熱中できるかどうかが大事だと思います。

デビット:そういった理由を会社の役員、従業員にどのように伝えればいいんでしょうか? 例えば、メタップスさんみたいに事業をいきなり「決済にしよう」ってなったら、「ええ、まじか」という反応が社員から返ってくると思うのですが、どのようにして社内の納得を得るべきでしょうか?

佐藤:納得はしてないかもしれないですね(笑)。ただ、キャラクターっていうのはあるかなと思っていて、周りの人たちが「仕方がないね」というふうに諦めてもらうのは重要。それは、ソフトバンクの孫さんなどを見ていているとすごく思いますね。

 そういうキャラクターっていうのは日々、自分たちがやりたいこと、やろうと思っていることをバンバンやっていく。周りもある程度、それに対して許容するという空気感は大事だなと思いました。メタップスでは、そういったことが5回、6回と起こっているので、社員も「またかよ」っていうリアクションになってきてますね。

社内のメンバー全員が「フレキシブルであれ」という価値観を体現している

デビット:そのような「柔軟性」を持たれて経営を行っていますが、そもそも採用の時に「柔軟性」が絶対に必要だと思ってますか? 

佐藤:それで言うと、メタップスの価値観は「フレキシブルであれ」。市場もコロコロ変わるし、やることもコロコロ変わるので、そこはメンバーに対して「フレキシブルであれ」という価値観をきちんと伝えています。なので、そこは問題ないというか、それぞれが市場が1年で変わるかもしれないという覚悟を持ってやっています。

デビット:それは日本だけでなく、世界中ですか?

佐藤:そうですね。

「SPIKE」に関しては方向性を示しただけ


デビット:次に「SPIKE」の話に移りたいと思います。最近、急激に伸びてきているのですが、最初の2、3ヶ月は少しずつ伸びていっている感じだったと思うんですよ。最初は苦戦することが多い中、社員をどのようにモチベートしたんですか?

佐藤:初期に集まったメンバーがすごく優秀だったというのもありますし、ある意味自分よりも知識も経験もあったので、ほとんどのことは任せてましたね。自分は、どっちに行くかっていう方向性を示すことしかやってません。

 どんな機能を追加するか、どういうグラフを設計するかも、ある程度担当者が決めて進めていました。ただ、たまに「2ピクセル、ズレてる」みたいなデザインの話はしましたね(笑)。

決済サービスは一定の専門知識が必要になる

デビット:今、世界中で決済サービスが盛り上がっているけれど、今まで良い決済サービスが出てこなかった。そんな状況に多くの人が決済市場にチャンスがあると思っている中でGoogleのような企業が決済市場に進出してきていない理由をどう考えていますか?

佐藤:比較的、難しい領域だからだと思います。自分たちも決済サービスをやっているのですが、スタートアップがスッと入れる市場、サービスではないなと感じますね。

 アプリであれば、サッと作って1週間でリリースすることは可能ですし、コストもそんなにかからない。でも、決済に関しては「やってやる」という覚悟や半年〜1年間くらい「ネゴシエート(交渉)」する時間も必要になります。

 あとは資格など、金融に関する知識もある程度必要になってくるので、そういった意味ではGoogleのような企業でも回せていないな、と。専門知識がすごく重要です。

「決済」と「コミュニケーション」は今後融合していく

デビット:常に先のことを見据えて経営をしていると思いますが、「SPIKE」の先をどのように見据えていますか?

佐藤:これは難しいところですね(笑)。個人的には、スマホでメッセージを送信したり、チャットしたりすることと、お金を送金したり支払いしたりするという行為は、ネット上では同じものだと思っているので、最終的には融合してくるかなと思っています。決済というよりかは、コミュニケーションの一部なのかなと。

デビット:「決済はコミュニケーションである」ということですね。

佐藤:はい。メッセージを送ったり、お金を送ったりするのってシステム的にあまり変わりないので、今後「LINE」や「WeChat」、「WhatsApp」などの企業も決済系の企業を取り込んでいくと思います。

 逆にメタップスのような決済サービスを提供している企業が、コミュニケーション系のサービスを提供している企業を取り込むことも十分に考えられるので、そこは融合していければいいなと思いますね。

非上場でファイナンスがずっと続けられるならIPOは必要ない

デビット:話は変わって、日本では最近IPOの数が増えてきて「IPOブーム」になりつつあると思います。そんな中、メタップスの将来はどのように考えてますか?

佐藤:環境によって変わるかなと思っていて、自分たちは非上場でファイナンスが続けられるのであれば、上場する必要は別に無いかなと思ってますし、逆に「これ以上のファイナンスは難しいな……」ってタイミングが上場する時期だなとも思っています。

 日本の場合だと、現在50億円くらいが調達できる金額の限界なので、それ以上の金額が事業に必要になったらIPOするしかありません。ただ、どこかの会社が5000億円くらいのファンドを組んだというのであれば、また環境は変わってくるのかなと。

デビット:それは非常に興味深いことだと思います。なぜなら、日本のスタートアップはIPOを目指すのが常識と考えている人が多いなか、上場は必要ないと言っているからです。では、佐藤さんは上場を目指すことについてどう思っていますか?

ただし、東京で事業をやるのであればIPOした方がいい

佐藤:東京で事業をやるのであれば、IPOした方が絶対にいいと思います。それは、信用や採用に関して圧倒的に良い方向に働くので。

 ただし、海外展開するとなった時に、東京証券取引所に上場していることがステータスになるかというと少し違っていたりするので、事業の成長に何が必要かは考えるべきですね。

 東京で人をたくさん採用したいという場合は、上場するべきかなと思いますが、グローバルでブランドを広めたいという時は、上場しているかどうかはあまり関係ない。

 例えば、ほとんどの人が「Evernote」を知っていると思いますが、上場はしてません。一方で、サイバーエージェントやソフトバンクをブラジルの人が知っているかというと、あまり知られてないんですね。

 そういったことから、メタップスみたいにグローバルな拠点が必要な場合には、IPOの優先順位はそこまで高くないのかなと思いました。

デビット:つまり、グローバルで成功すればドイツの証券取引所で上場する可能性もなくはないのですか?

佐藤:そこは、一番優位な場所でやればいいかなと思います。こんなこと言っていいのかな(笑)。

宇宙の方がスピーディーにビジネスをスケールさせられる


デビット:「SPIKE」の話を一旦、聞かせて頂いたのですが、次は最近手掛けている宇宙のビックデータプロジェクト事業について聞きたいと思います。この事業は、おそらくスケールメリットや収益性などについて検討したと思うのですが、なぜ次の事業を宇宙に決めたのでしょうか?

佐藤:これまで8カ国に拠点をつくり、先進国に関しては一応ビジネスが出来るようになってきましたけど、地上にいると国の制限だったり、カルチャーのようなものが制限されてしまうじゃないですか。

 でも、地上から200km以上って国の範囲ではないんですね。そこは誰のものでもないので、スピーディーにビジネスをスケールさせていくことが出来るのではないかと。これも、世界中回ってビジネスをやってきた結果の話なんですけどね。

「MetapsAnalytics(メタップスアナリティクス)」とは何なのか?

デビット:それじゃあ次は、イーロン・マスク(スペースX社 CEO)に会って、タイアップしてっていう感じですかね(笑)。それと、「MetapsAnalytics(メタップスアナリティクス)」が公開されたと思うのですが、それについても一言説明頂ければと思います。

佐藤:日本だと少し話題になってましたけど、アドテクなどで使われていた「Cookie」がスマホになって使えなくなってきていて、市場が結構変わってきているんですね。

 例えば、ほとんどのスマホユーザーがアプリからネットを使うようになっていて、SafariやChromeといったブラウザを使わなくなってきている中、多くの会社がデータのやり取りや管理に困っている。

 その一方で、AppleやGoogleはある程度IDやデータ周りを整理してきたので、うちもそういった部分を管理して最適化できる仕組みを作ろうというようなものが「MetapsAnalytics(メタップスアナリティクス)」です。

デビット:ありがとうございます。私からの質問は以上なので、会場にいる人で質問がある方はどうぞ。

英語を学ぶには「必要性」が重要

質問者A:社内ミーティングって英語でされてますか?

佐藤:ミーティングによって違いますね。例えば、「EU戦略を練ろう」というミーティングに関しては英語、日本に関しては日本語です。

質問者A:佐藤さんは何語を喋られるんですか?

佐藤:自分は日本語だけですね。英語は片言なので、言語に関してはバイリンガル、トリリンガル以上が何人かいて、彼らがハブとなってミーティングを行います。

質問者A:いわゆる、ユニクロや楽天のように公用語を英語にするといった考えはありますか?

佐藤:あんまりないですね。

質問者A:それは何故ですか?

佐藤:学ばなきゃやれなくなってきているので、それぞれ勝手に勉強するというのがあります。人間って必要に応じないとなかなか勉強しないので、英語圏のプロモーションに携わった人は必死で英語を勉強しますね。また、メールのやり取りも全て英語なので、半年ぐらい経つと必然的に英語ができるようになってます。

 だから、必要性ってけっこう重要だなと思っていて、逆に必要ないのであれば公用語を英語にする必要はないかなと。

シリコンバレーとは真逆の市場に拠点を置こうと思った


質問者B:佐藤さんのグローバル展開の話を聞いていて、すごいなと思いました。最初にシンガポールに拠点を置かれている点なんですけれども、これに関してはアカウンティングなどあるかもしれませんが、それ以外で最初にシンガポールを選んだ理由をお伺いしたいです。

佐藤:ぶっちゃけた話をすると、昔シリコンバレーに一度行ったことがあって、現地のVC(ベンチャーキャピタル)を回ったんですね。その時、現地のVCは「ビジネスをするのであれば、本社をカルフォルニアに移せ。そうでなければ成功しない」という話をしていて。レベルの高い市場って競争が激しい。

 自分はあまのじゃくなので、その逆を行こうと思いました。そこで、シリコンバレーの逆を考えた結果、香港かシンガポールになったんです。また、今後シンガポールに資金が集まってくるだろうなっていう予感がしたので、先回りしてシンガポールに行ったというのはあります。

 やっぱり、ルールがある市場って誰かしらコミュニティを管理するような人がいて、その人のルールに従わなくてはいけないじゃないですか。ただ当時、東南アジアにはそういったルールを作る人がいなかったので、「ここなら一番乗りになって、ある程度イニシアチブをとって事業ができるだろうな」という考えもありました。

質問者B:今、振り返ってみて、シンガポールを最初に選んだのは決断として間違っていなかったってことですか?

佐藤:そうですね、誰もいなかったので結果としては良かったです。当時、シンガポールに行ったとき、日本の会社ってIT系だと2社くらいしかいなかった。その後、1年間くらいで40社くらい参入してきたんです。

 そういったこともあってか、「シンガポールに行こう」ってなると、必然的に「メタップスに話を聞きに行こう」となり、勝手に人脈が増えていくのを経験して、マーケットが流行る前に先にいるということは重要だなと思いました。

質問者B:あと追加の質問なのですが、今後EUやUSのマーケットに進出するという時にシンガポールはどのような役割を担いますか?

佐藤:シンガポールに関しては、東南アジア圏と中華圏のマネジメントですね。個人的にEUとUKは、1つの市場として捉えていて、それは東南アジアも同じ。台湾と香港も同じ1つの市場と捉えているので、国の展開というよりかはエリアごとに責任者とマネジメント部隊が存在してるというイメージです。

司会者:以上で終了とさせて頂きます。ありがとうございました。


「Tech in Asia Meetups Tokyo」の記事:

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