1. 「インターネットで勝つならアメリカで勝つべき」は間違いだ ーーメタップスが海外展開で感じた壁

「インターネットで勝つならアメリカで勝つべき」は間違いだ ーーメタップスが海外展開で感じた壁


 11月12日(水)、アジア圏のスタートアップ情報を発信するメディア「Tech in Asia」がリクルートにて「Tech in Asia Meetups Tokyo」を開催した。

 このイベントは、11月26日〜27日に開催された「Start up Asia Jakarta 2014」の一環として開催され、メタップスCEO 佐藤航陽氏の講演ほか、スタートアップのピッチも行われた。ここでは、メタップスCEO 佐藤航陽氏の講演内容をお伝えしていく。

スピーカー

株式会社メタップス 代表取締役 佐藤航陽氏

見出し一覧

・市場規模が大きい、競争相手なしの「マーケット」を見つける
・文化と言語に注目し、海外展開していく
・拠点のトップには優秀な人材を据える
・海外展開したからこそ、大きな企業と提携を組めた
・市場ごとのプロダクトサイクルを理解し、戦略を練るのが重要
・アメリカや欧州は人脈以上にプロダクトを重要視する
・「スタートアップだから安い給料でいい」は通用しない
・獲得できる人材のレベルは、会社のビジョン・目的に比例する

市場規模が大きい、競争相手なしの「マーケット」を見つける

 海外展開で上手くいったことは、約3年半ぐらいやってきましたけど、3つあるかなと思っています。1つ目は「展開順序」、2つ目は「マネジメント」、最後は「パートナーシップ」。

 「展開順序」に関して言えば、実際やってみると最もらしいことって、たくさんあるんですよ。例えば、ベンチャーキャピタルの人との話でよくあるのは「大きな市場にフォーカスしよう」といったこと。「中国やアメリカに先に行こう」、「インターネットで勝つならアメリカで勝たなければいけない」そんなことがよく言われますね。

 ただ、実際にやってみると、「この通りにやったら失敗するだろうな」と感じました。よく、「市場規模って大事だよ」と言う人がいるんですけど、個人的には「競争関係」が大事だと思います。

 市場としては大きいのだけれど、競争相手がいない市場を見つけ、シェアを一気にとる。そして、その市場で足場を築いたら、近い市場から横展開していくということを繰り返さないと、スタートアップ・ベンチャー企業が一気に海外展開してシェアを取るのは難しいと思います。

文化と言語に注目し、海外展開していく


 この図は、言語と文化の近さをざっくり、自分なりの感覚で表したものです。色の近いエリアが攻めやすい市場になります。日本を例にするならば、韓国、台湾がかなり攻めやすいですね。

 一方、アメリカを見てみると色が全然違う。カルチャーが違いますし、言語も違うので、ファウンダーの感覚が追いつかないんですね。これは逆も同じ。なので、アメリカの企業の多くは海外展開する場合、EUに行きますし、中国ならば、近い圏内の日本や韓国に展開していきます。

 こういった色や文化、言語といった部分にも注目すべきであって、国単位ではあまり考えるべきではないなと思ってます。

拠点のトップには優秀な人材を据える

 次は「マネジメント」について話をします。2010年頃にシンガポールへ行ったんですけど、自分自身、ゴールドマンサックスやマッキンゼーのようなバンカーやコンサルではなかったので、世界中飛び回って仕事をしたことが無かったんですよ。

 そんな状況の中、いろいろ商談してみたのですが、自分自身で世界中をマネジメントをするのはやっぱり難しいなと思いました。ただ、海外展開して勝っていかなければいけないという思いはあったので、「どうしようかな……」と色々考えた結果、優秀な人材を採用するしかないなと。自分ではなく、彼らにやってもらおうと考えるようになりました。

海外展開のリスクは数でカバーする

 結果的に、この方法はかなり上手くいきました。拠点のトップが優秀だと、彼らにある程度マネジメントの方法を任せてしまっても仕事は回ります。ただし、それと同時に「拠点が潰れれば、海外展開は終わり」というリスクも出てきます。

 そういったことを踏まえて、メタップスでは8拠点立てて、リスクヘッジをしました。なので、1拠点や2拠点が上手くいかない場合もありますし、逆に拠点が立ち上がらないという場合もありますけど、ある程度数でリスクヘッジするようにしています。

海外展開したからこそ、大きな企業と提携を組めた

 最後に「パートナーシップ」について話をしていきます。自分たちはLINEさんやカカオさんといった大きなプラットフォームと提携を組むことで、一気に売り上げを伸ばしていくことができました。

 こういった提携は、海外展開したからこそ実現したことで、海外展開しなかったら実現することはなかった。彼らも、「世界展開していきたい」、「世界のシェアを拡大していきたい」という課題はあって、その上で知見のある企業を探しているんです。

 ドメスティックに展開していくだけでは、こういった企業様とパートナーシップを組み、売り上げを伸ばしていくことは不可能。数字が大きくなり、会社の規模が大きくなるにつれて、必然的に海外展開していきたいという企業も増えてくるので、スタートアップ側も準備しておかないと取引できなくなってしまうんですよ。

クライアントに寄り添っていくのは、海外展開していく上で重要

 メタップスも8カ国、9カ国と海外展開してきたのはクライアントのニーズでもあるんです。クライアントが「ロシアに行きたい」、「中国に行きたい」って言ってきた時に、「出来ません……」という状態になってしまうと、その段階で取引が終了してしまう。そういう状態にならぬよう、メタップスでは「準備しておきます」と言って、次へ次へと展開していきました。

 その結果に今のような状況があるので、クライアントに寄り添っていくのは、すごく重要だと思います。また、大きな企業とパートナーシップを組みたいのであれば、クライアントのニーズに応えていくしかない。

市場ごとのプロダクトサイクルを理解し、戦略を練るのが重要


 これまでは上手くいったことを話してきましたが、逆に苦戦した、苦戦していることも話そうと思います。1つ目は「プロダクトの展開」、2つ目は「現地習慣の理解」、最後は「キーマンの確保」です。

 「プロダクトの展開」で一番難しいのは、エリアによってプロダクトの収益が違うということ。例えば、アプリの市場であれば、今ガンガン売り上げを伸ばしてきている中国や日本、韓国に関してはある程度成熟してきているなと思います。一方、ジャカルタなど東南アジアに関しては、ようやく立ち上がってきたという状況です。

1ヶ月スパンで戦略の見直しを行う

 同じプロダクトを持って行っても、サイクルが違っているので、市場に当てはまらなくなってしまうとやることが変わってきてしまいます。だからこそ、各市場ごとに今どのサイクルにあるのかを理解してプロダクトを変えていく、マーケティング戦略を変えていくのはすごく重要です。これは、いまだにメタップスも苦戦しています。

 一気に拠点が立ち上がる場合もありますし、全然立ち上がらないという市場もある。ここは世界中を見ながら、今、どういう状況にあるのかを各拠点のトップにヒアリングしながら戦略を変えていくしかありません。そのスパンも1ヶ月単位でやっていかないと、上手くいかないと思います。

アメリカや欧州は人脈以上にプロダクトを重要視する

 次に「現地習慣の理解」ですね。何が重要視されるかというのも、国ごとによって全然違うんです。例えば日本であれば、前職で知りあいだったなど、ある程度人脈があればビジネスって回るんですけど、アメリカや欧州は違う。そもそも人に会うことができない。

 もちろん距離が遠いというのも要因の一つとして挙げられますが、アメリカや欧州は人脈以上にプロダクトを重要視するので、スゴく良いプロダクトを持って行くと、人脈がなくてもある程度使ってくれたりします。

 一方、外資を歓迎する国と内資が有利な国がそれぞれあります。当然、日本に関しては内資が有利で外資は参入しづらい状況です。しかし、アメリカや台湾、シンガポールなどは、政府自体が一定の外資を誘致しようという考えがあるので参入しやすい。

 だからこそ、例えば人脈が強い、プロダクトが良いなど自社の強みを見極めた上で、どこから攻めていくのかを適宜変えていくべきだなと思います。メタップスの場合は、ある程度人脈やマネジメントが出来ていたので、外資の入りやすい市場を落としていき、そこから横展開していきました。

「スタートアップだから安い給料でいい」は通用しない


 最後に「キーマンの獲得」について話します。ここが日本と海外のスタートアップの最も異なる部分で、「ハイアリング(雇用)」に関する環境が全然違っていて、海外では「スタートアップだから安い給料でいいよね」という考え方は、通用しない場合が多いです。

 特にアメリカや欧州に関しては顕著で、ベンチャー企業でも年俸2000万、3000万という人は多くいますし、VPクラスになると年俸1億という人もいます。一方、日本のスタートアップはファイナンスの状況があまり良くないので、「スタートアップだから安いのは当たり前」という価値観で「ハイアリング」が出来てしまっている。

 これは、海外では通用しないという悪い側面もあるのですが、ある程度給料の部分で折り合いがつけば優秀な人材を獲得できるという良い側面もあります。

 人材からしてみると、ファイナンスがきちんと出来る会社は、投資家から認められている会社だから、ある程度信用できる有望な会社という感覚を持つもの。ただし、資金を獲得できないと、「プロダクト、マネジメントに対して投資家からあまり期待されてないのかな」と思ってしまうので、お金に対する感覚は特に英語圏と日本では大きく違うなと思っています。

獲得できる人材のレベルは、会社のビジョン・目的に比例する

 あと、自分自身の経験から話をすると、2007年〜2010年の頃の会社の経営方針と今の会社の経営方針って真逆なんですよ。なので、個人的には2つの会社の経営を経験したと思っています。

 その中で、最初に立ち上げた事業、立ち上げた会社の時には、スタートアップやベンチャー企業はお金も信用もないので、優秀な人材を採用できないという考えを持っていました。

 ただ、「metaps」というプロダクトを開発し、海外展開という結構無謀な挑戦をしていく中で、立ち上げる目的やビジョンなどが人材を惹きつけているのであり、会社の規模や信用が人材を惹きつけているのではないことが分かったんです。

 獲得できる人材のクオリティ、レベルというのは会社を立ち上げる目的、ビジョンに比例するものであって、会社の規模や信用に比例しているわけではないことが最近勉強したことかなと思ってます。

 ちょっと短いですが、今日はありがとうございました。


「Tech in Asia Meetups Tokyo」の記事:

「決済とコミュニケーションは今後融合する」ーー メタップスCEO 佐藤航陽氏が見据える未来の世界

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