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経営の秘密『鎌倉シャツ 魂のものづくり』:真摯なものづくりへの姿勢が顧客の信頼を生んだストーリー

Yu Usuki

2015/06/08(最終更新日:2015/06/08)


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by Minhimalism

 ビジネスパーソンにとってシャツは、欠かせない存在です。安価なものから一着数万円の高価なものまでありますが、価格と品質の両立を実現したのがメーカーズシャツ鎌倉のワイシャツ。通称「鎌倉シャツ」と呼ばれており、一着4,900円ほどと低価格でありながら質が良いという点が魅力で、一躍定番のシャツになりました。

 「鎌倉シャツ」の人気の理由である「価格と品質の両立」は、どのようにして実現したのでしょうか。また、現在もなお「鎌倉シャツ」が成長を続けている理由も気になります。今回は、その秘密が明かされている本『鎌倉シャツ 魂のものづくり』から、メーカーズシャツ鎌倉の経営に潜む秘密を探ってみましょう。

原価率が高くとも、消化率99%でカバーしている鎌倉シャツ

 鎌倉シャツは、原価率が59%と高めに設定されています。鎌倉シャツの販売価格の半分以上がシャツの原価に費やされており、「経営が厳しくなるのでは?」といった疑問が浮かびます。それでも鎌倉シャツの経営に問題がない理由を著者は次のように述べています。

この原価率でも経営可能なのは、高い商品回転率にある。回転率はメンズが〇・八回転、レディスが一・二回転と高く、消化率は何と九九%という高さ。ほぼ全品を売り切ってしまう計算になる。しかもバーゲンセールは一切なしである

出典:丸木伊参(2014)『鎌倉シャツ 魂のものづくり』

 初回の入荷分が完全に売り切れて、次回分が入荷することを一回転と計算する商品回転率と呼ばれる数字が鎌倉シャツは非常に高く商品を値引きしなくとも消化率が99%を達成しているのだそうです。そして、商品回転率と消化率を向上させるために、鎌倉シャツは次のような工夫をしていました。

鎌倉シャツは、商品の幅ではなく、サイズの幅を重視

 服を売る際、商品のバリエーションを増やすほうが様々なニーズに応えることができ、有利に感じます。しかし、鎌倉シャツはバリエーションを最小に抑えた上で、サイズのバリエーションを広げるという選択をしました。

供給側の勇気とは、注文や問い合わせがあるからといって、品揃えをヨコに広げないことです。マーチャンダイジングの基本は絞る、勇気を持って絞ること。それが量につながり、安く提供できる仕組みをつくる

出典:丸木伊参(2014)『鎌倉シャツ 魂のものづくり』

 鎌倉シャツは主にビジネスパーソン向きのシャツを販売しているので、商品にバリエーションを広げることよりも、身体にあったシャツを供給することを重要視したのです。

「浮利を追わず、嘘をつかない」という鎌倉シャツの経営姿勢

 経営者である貞末氏は、どんなに低価格でも高品質を維持することに強い信念を持っていました。

浮利を追わず、世のため、人のためにつくす。そこから、いくばくかの生活の糧を得られればいい

出典:丸木伊参(2014)『鎌倉シャツ 魂のものづくり』

 大きな利益よりも人のためにという信念が、経営姿勢に大きな影響を与えていることは明らかでしょう。著者によると、現場で働く社員にも貞末氏の信念が伝わっており、自信を持って商品を販売しているそうです。

 この「浮利を追わず、嘘をつかない」という鎌倉シャツの姿勢が、高品質なシャツを生み出し、顧客に対して信頼を生み、リピーターを増やしつづけています


 鎌倉シャツが人気であり続ける秘密は、創業者であり経営者である貞末良雄氏の強いこだわりが根本にありました。その鎌倉シャツへのこだわりが経営戦略へと繋がり、「鎌倉シャツ」というブランドの現在の価値になっていることがわかります。

 『鎌倉シャツ 魂のものづくり』は、今回ご紹介したような鎌倉シャツの人気の秘密について細かく分析されています。その内容は鎌倉シャツの消費者のみならず、新しい戦略の例として経営者にとっても参考になるものが多いでしょう。



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