1. 【会計士Xの裏帳簿】成年後見業務の推進活発化 「士業」の信頼性が試される

【会計士Xの裏帳簿】成年後見業務の推進活発化 「士業」の信頼性が試される

出典:www.kaikeinet.com

 士業の業務は、専門性によるすみ分けがなされていますが、現在多くの士業団体が、同様の業務に自らの強みをアピールしている分野があります。それは、認知症高齢者など、判断能力が不十分な人の法律行為等をサポートする成年後見制度に関する業務です。
 
 日税連は平成23年、「成年後見支援センター」を設立。全国の地域ごとに支部の設立を進めています。そして、全国で新聞広告や無料相談を行い、同制度ならびに税理士の役割について周知を図る方針です。

被後見人の身体と財産を見守る

 後見人が行うのは、被後見人の生活・医療・介護等に関する手続きを行う「身上監護」、判断能力を原因として財産が毀損することを防ぐといった「財産管理」の業務です。また、直接的に後見人に就任するのではなく、制度に関する相談、手続きのサポート等を行う業務もあります。

 後見人の就任に、特に資格は必要ありません。家族等が就任することが多いのですが、親族間で争いがある場合、被後見人に身寄りがない場合などでは、第三者的な専門家が就任することがあります。
士業者が成年後見人に就任するルートは大きく分けて2つ。ひとつは、法定後見人として裁判所から選任される場合、もうひとつは、被後見人となる人に判断能力があるうちに、任意後見人として契約する場合です。

司法書士、社会福祉士らの活躍が目立つ

 裁判所が行う士業者の選任については、最高裁による件数の統計があります。平成25年のデータによると、選任数は司法書士が7,295件、弁護士が5,870件、社会福祉士が3,332件、行政書士が864件となっています。

 もっとも多く選任されているのが、登記の専門家である司法書士。財産管理に関わる不動産売買、相続登記のほか、後見人の就任自体にも登記があり、また司法書士は後見の審判を行う裁判所に提出する書類作成を代理できるだけに強みがあります。
同様に、法律の専門家である弁護士の就任も理解しやすいところです。
3番目に多い社会福祉士は、成年後見制度が介護・福祉との関連が強い制度であるだけに、「身上監護」への知見が強みとなっています。後見人に求められることは、資産家の財産の管理、流出を防ぐことだけではありません。社会福祉士が担う、ソーシャルワーカーとしての役割は非常に重要です。

 そして、お金の専門家であり、財産管理への関与を期待できる税理士の選任件数は81件と、あまり多くはありません。冒頭の日税連の動きは、今後、成年後見制度における、税理士の存在感を高めていくための試みであるといえます。顧問契約で経営者らと関わることの多い税理士は、任意後見の分野での活躍もより期待できるでしょう。

士業の信頼が失われれば、制度の運用は危機に

 しかし、成年後見業務について、単純に他士業と比べて就任数が多いか少ないかという観点で語ることは建設的ではありません。それよりも重要なことは、裁判所の選任に表れるように、制度自体に私たち士業者の大きな役割が期待されていることです。

 ひと昔前には、弁護士による、貸金業者からの返還過払い金の着服のニュースが紙面を賑わせていました。同様に、各士業の会報には、報酬の持ち逃げに関する懲戒事例が毎月のように公表されています。
後見人就任は、財産の管理を伴う業務であるだけに、横領、着服の危険性は極めて高くなります。後見制度に関し、今後、士業者による悪質な犯罪が起こる危険がないと言い切ることはとてもできません。

 高齢化が進み、成年後見制度の重要性は一層高まります。その状況で、士業の信頼性が損なわれることがあれば、制度自体が危機に瀕することになります。すべての士業者が、後見人の業務が重い責任を伴うということを自覚し、高いモラルを持って業務に臨まなくてはなりません。士業団体間の情報共有、連携も進め、業務の質を担保することも必要でしょう。



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