1. 若者のテレビ離れではなく「スマホ浸透」では?―TBSマーケターが語る、これからの「番宣」【前編】

若者のテレビ離れではなく「スマホ浸透」では?―TBSマーケターが語る、これからの「番宣」【前編】


 「若者のテレビ離れ」という言葉がある。確かに近年、視聴率が30%を超える番組はなかなか出てこない。それに、リアルタイムでテレビを久しく見ていないという人も多いのではないだろうか。

 しかし、テレビ業界だって「若者のテレビ離れ」を聞き流せるワケではない。制作者の思いがこもった番組を一人でも多くの人に広めようと、日々様々な施策を試している。
 
 そんな中でTBSは最近、「番宣」手段の一つとしてTwitterを活用している。例えば、ドラマの撮影時や編集時に出演者のコメントやその日の様子をつぶやいたり、バラエティ番組などに出演者が「番宣」のために出演すれば、出演終了のタイミングで出演者の写真を掲載している。

 これらは、どんな意図があって行われているのだろうか? TBSテレビのマーケティングディレクター・山本大平さんにお話を聞いた。 

ーー「若者のテレビ離れ」という言葉を聞くようになってからずいぶん経ちますが、実際に山本さんの周りで「テレビ離れ」が起こっていると感じたことはありますか?


山本:まず、「テレビ離れという言葉が、僕にはしっくりこないんです。大画面を、特にリアルタイムで視聴するという意味であれば、確かに十分あり得ると思います。

 ただ、今は録画視聴で自分の好きな時に見られますよね。あと、ネットで番組を見る人も多い。

 そういったことを統括的に考えると、「本当にテレビ番組離れは起きているのか?」という疑問はあります。なので、あまりしっくりきていない理由の一つはそれ。

 もう一つ理由があって、「若者のテレビ離れ」が語られる時、その根拠はメディア接触のデータなんです。1日あたり、テレビ・新聞・インターネット、どのメディアに何分接触した、かのような。

 それを見ると、若い子のインターネットの接触量は増えています。それを見て「若者のテレビ離れ」と言う人が多い。

 でも、どうなんでしょうか。YouTubeやFC2などの違法のネット動画も含めて、番組のトータル視聴量を正確に調査したデータは実はどこにもないんです。それに、『半沢直樹』は、最終回の視聴率が40%を超えたんですよ。テレビ番組離れが顕著な状態で起きていたら、『半沢直樹』のようなことって起きないんじゃないかと思うんです。

 なので、面白いものは観てもらえるんです、きっと。確かに、スマホを手にする時間は増えているはず。だから僕は「じゃあ、スマホで番組を見てもらえるチャンスがあるんじゃないか」という発想になるんです。もちろん、テレビ局側の人間として、ドラマやスポーツは臨場感を楽しんでもらうという意味で、大画面で観てもらいたいなぁとは思いますが。

 つまり、僕は、「テレビ離れ」の「テレビ」の定義が人によって違うんじゃないかと考えています。例えば、今はインターネットでテレビ番組を観たら、データ上は「テレビを観た」ことにならない。むしろネットに接続したことになる。そして、録画してテレビ番組を観たら視聴率にはカウントされない。

 総合的に考えると、言葉の定義が違うんじゃないか。テレビ局が作った番組に対して離れてるかどうかではないと思います。だから「テレビ離れ」よりも「スマホ浸透」と言った方が、僕にはしっくりくるんです。

ーースマホで若者にテレビ番組を認知してもらうためには、具体的にどのような形をとるのでしょうか?


山本:電車の中で周りを観察すると、皆スマホでゲームするかネットニュースを見てるか、そのどちらかですよね。だからウェブニュースになれば、通勤時間、昼休み、帰宅時間に情報を見てもらえる可能性が高い。

 だから、まずはウェブニュースを意識しています。Yahoo!のトップページって、1日でどれくらいPVがあると思いますか? 約3億PVです。今はYahoo!以外にも、gooニュース、MSNニュース、ガジェット通信など色々な媒体がありますよね。

 あと一つ、去年からキュレーションアプリがものすごい勢いで伸びてるじゃないですか。例えば、Antennaは今400万人以上ユーザーがいて、近い未来にはユーザー1000万人も夢じゃない。だから、キュレーションアプリで情報を広げていくという手段は無視できない。

 あとはTwitter。電車に乗ってると、特に若い子がTwitterを見ていますよね。本当は覗いちゃいけないんですが(笑)、この間ちらっと見たら、吉祥寺の天気を調べている子がいました。以前だったらニュースサイトや天気予報のサイトにアクセスしないと分からなかった情報まで、Twitterで検索して情報を得ている。

 だから最終的には、ウェブニュースやキュレーションの情報もTwitterに反映されてくるはずです。なので、特に若者への宣伝効果はツイートの件数の推移に表れてくるんです。今後はそれが重要な指標の一つになるでしょうね。

ーー視聴者の見逃し防止と、若者への番組の認知。これらに対する施策は全ての番組に有効だと思いますか?


山本:僕の考えでは、半分OKで半分NG。やみくもに宣伝やマーケティングを行ってはいけないと思います。ドラマでも選ぶんですよ。品格のあるドラマ、例えば『LEADERS』や『ルーズヴェルト・ゲーム』の情報をあまりにも拡散し過ぎると、引いちゃいませんか?

 だって、ポルシェがドン・キホーテで売られていたら、仮にどんなに安くても、何かしっくりきませんよね。だから、それぞれ番組のテイストを上手くマッチングさせるようなプロモーション展開、広告展開を行う必要があります。それぞれに合った最適な施策があると思うんです。  

 それはバラエティ番組でも同じで、例えば『ナイナイのお見合い大作戦!』はネット層に違和感なくマッチングする。ただ、媒体は選びます。『ナイナイのお見合い大作戦!』が経済紙に合うかといったら、そうでもないわけです。

 あと、「どや! どや!」って、あまりにも情報を出しすぎても引いちゃいません? 「またか」って。

  このように需要と供給のバランスが大切で、がめつきすぎても少なすぎてもよくない。そして、番組のテイストと媒体と施策、この3つををマッチングさせて番組の情報を適量で投げかける。ここをとても意識しています。

 また、すでに何度も放送されていてブランドを築いている番組、例えば『SASUKE』『キングオブコント』『オールスーター感謝祭』は、皆番組のイメージを知っているじゃないですか。そういう場合は、見逃しをなくすことを第一優先とする

 なぜなら、そういった番組に関するツイートは「今日、感謝祭やってたの?」「SASUKEやってるじゃん!」という見逃しに関するものばかりだから。そこで事前に「○日の○時から放送しますよ」と確実に伝える。

  ただ、ドラマではそのノウハウが当てはまらないと思っています。なぜかというと、これからやるドラマは、どんな内容で展開するのか、視聴者に事前情報がないから。というか、それこそネタバレですよね。でも、見ていただけるように施策を行う必要があります。それでも施策が効かない場合もある。事前に情報を全部出せないから。

 そこで、PDCA(Plan、Do、Check、Action)のC(=Check。行ったことの検証)が必要で、初回OA前までに打った施策の効果が浸透しているのかを個々に確認するようにしています。そして次のP、つまり施策にに繋げていきます。この作業を繰り返しOA前まで温めていく。

 だから、新番組や単発の特番のPRは難しいんですよ。これからどのようにブランドが構築されるかも分からない。また、「それはこういうものですよ」という制作者の思いもあるし。僕はそれを壊さないようにしたいんです。

 そういった意味でも、宣伝のテイストは制作者の考えと同義でなければならないと思います。番組のPRマーケティング担当は、制作者の意向を確認し、そして制作者が届けたいメッセージとズレないように、報じる媒体や文言を選ぶ必要があると思っています。何でも報じればいいってもんじゃないこれはものすごく大切にしているところですね。 

後半はこちら



山本大平(やまもと・だいへい)氏 プロフィール

2004年、京都大学大学院を修了後、トヨタ自動車に入社。新規開発の技術者として、品質改善業務に従事。特にデータマイニングをコアスキルとし、お客さま目線を追求した品質改善を手がける。新車開発業務に従事したのち、マーケティングに携わる。
また、トヨタの多変量解析のプレゼン大会では、最高の栄誉である副社長表彰を受賞するなどの経歴を持つ。

2012年、TBSテレビに入社。編成局マーケティング部に配属。社内ベンチャー事業「Histrend」を立ち上げると同時に、ドラマ制作部で『LEADERS』のアシスタントプロデューサー(AP)を兼務。『ルーズヴェルト・ゲーム』『SASUKE』『ナイナイのお見合い大作戦!』など番組でお客さまの目線にこだわったPR戦略を立案するなど、マーケティングディレクターとして活躍している。

U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう
この記事を報告する