1. 【イベント全文】「これでWBSに呼ばれる!」―注目ベンチャー3社が語るメディア露出と広報の鉄則

【イベント全文】「これでWBSに呼ばれる!」―注目ベンチャー3社が語るメディア露出と広報の鉄則


 スタートアップとして新しい道を切り開きたいのなら、多くの困難を乗り越えなければいけません。そんな困難を心配する生まれたての起業家、あるいはスタートアップにジョインしたいと考えている人たちに、先人が強力なアドバイスを贈ってくれました。それが、2014年9月に開催されたイベント「サーキュレーター・サミット2014」です。いま最もアツイ起業家が集結し、スタートアップの本音を赤裸々に語りました。

 今回のテーマは、スタートアップの広報について。イベントやメディアなど、ベンチャー企業にスポットライトが当たる機会が増えてきました。メディアに取り上げられる企業には、何か秘密があるのでしょうか? ベンチャー界隈でも話題性抜群の3社が、自身の経験をもとに語ります。

 また、ベンチャー企業においてそもそも「広報」とはどのような役割なのでしょうか?曖昧になりがちな広報という役職に意味を持たせるコツ、そして結果を出すやり方を紹介します。

前編

スピーカー

重松大輔 株式会社スペースマーケット 代表取締役 CEO
大賀康史 株式会社フライヤー 代表取締役 CEO Co-Fouder
辻庸介 株式会社マネーフォワード 代表取締役社長 CEO
保田隆明 資本政策専門家
片岡英彦 広報専門家

モデレーター

嶋根秀幸 MOVIDA JAPAN Inc.

見出し一覧

絵になる見せ方は?
メディア露出を計算する
「入りたい!」と思われる状況を作る
ベンチャーに欲しい3種類の広報
何のための「広報」?
広報はどうやってスケジュールを立てる?
一気に攻める?じわじわ攻める?
イベントは出まくるか全く出ないか

絵になる見せ方は?


(写真 マネーフォワードCEO 辻庸介)

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 では早速ですが、広報ですね。3社はそれぞれどういったビジョン、ミッションがあって広報体制を考えているのでしょうか。マネーフォワードさんは既に広報担当がいらっしゃって、ニュースリリースがすごい数ですね。

辻(マネーフォワード):
 数で勝負していますね(笑)

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 あとはWBS(ワールドビジネスサテライト)にも取り上げられていますね。ではマーケティングについてお話しをお願いします。WBSに関して、どういうふうなルートで出会って、どういうふうにうまく使ったかをお話し頂ければ。そこで何か失敗した部分があれば、そういったお話もお願いします。まず大賀さんから。

大賀(フライヤー):
 テレビって一発の威力がものすごいです。もともと私は根拠もなく、「一年以内に出たい」とずっと社内でも社外でも言いまくっていました。すると、社内も「出れるよね」みたいな雰囲気になって、周りの人もサポートしてくれるんです。我々はもともと、ビジネスパーソン向けのサービスを提供しているので、やっぱりWBSやガイアの夜明け、カンブリア宮殿などが一番近いと思っていて、まずはWBSと考えていました。

 テレビに取り上げられるには、まず強く願うというのが大前提としてあります。その上で、テレビに取材してもらうためには、絵にならないといけない。本の要約って絵になりにくいじゃないですか。そのタイミングで、丸善の丸の内本店さんと書店でのビジネス書を推薦するというキャンペーンをさせていただいて、これなら取り上げていただけるかもしれないと思って、テレビ東京のディレクターの方をご紹介いただきました。

 ITベンチャーにとってテレビ露出はものすごい大事件で、WBSに紹介されると必ずサーバーが落ちると言われている。俗に言うWBS砲というものです。うちはサーバーを一時的に拡充するなどの対処を急きょ進めて、何とか落ちずに持ちこたえました。

メディア露出を計算する

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 辻さんはどうでしょう?

辻(マネーフォワード):
 僕らのところは1回目は個人向けの家計資産管理のアプリ、2回目がクラウド会計と2回WBSに取り上げて頂いています。おっしゃるように、インターネットサービスを提供している会社は絵がないのがすごいテレビ局さんって困るんですよね。

 なので、1回目はユーザーの方に急遽「取材を受けていただける方いますか?」とメールをして、ご自宅にテレビ局の方がお邪魔させてもらったんです。そこでどういうふうに夫婦の家計管理を改善したか、ユーザー目線で話してもらいました。やっぱりその時はアクセスがガーッて一気に上がりましたね。思ったよりも伸びたので、「やばい、やばい」と焦った時期もありました。

 クラウド会計のときは、クラウドのオペレーションで税理士業界がどうなるかという切り口で取り上げていただきました。そのときもやっぱり税理士さんメインで、どんなウェブサービスがというよりは、それが世の中にどうインパクトを与えて、どういうふうに生活が変わっていくかがメインでしたね。2回目は残念ながらクラウド会計って法人向けなので、そこまでWBS砲は起こらなかったかな。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 WBSとつながった最初のきっかけは?

辻(マネーフォワード):
 仲のいい社長に担当の方を教えてもらって、連絡を取らせてもらいました。ただ、すぐに取り上げてもらえるわけではもちろんないので、定期的に情報を発信させてもらって。たまたまいいタイミングで取り上げていただきました。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ありがとうございます。ちなみに重松さんは何かありますかね?もうそろそろメディアとかに取り上げられるとか。

重松(スペースマーケット):
 もともと私は、サービス立ち上げの頃からどうやってバズるかをかなり設計していました。先ほどもお寺から野球場までみたいな話をしましたが、たまたまそこの球団で僕の知り合いが働いていまして、そこの写真をどうしても使いたかったというのが最初ですね。写真はきれいにして、ちょっと癖のある場所を決めて、サービスを設計してリリースをするのが良いですね。

 じつは私、リリース自体は1回しか打ってないんです。けれどそれをTechCrunchの岩本さんという有名な記者の方にちょっと話して、それをホリエモンさんが拾ってくれたんですね。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 それは仕込みじゃなくて?

重松(スペースマーケット):
 仕込みじゃなかったんですけど、それからバーッとバズったという感じですかね。そのあとは起業のタイミングで5月のIVSに出て、それなりの賞を獲ろうとしました。そのためには、1か月ぐらい前にリリースを打って、盛り上がっているという前提が必要でした。その設計から逆算して動きましたね。設計は非常に大事だと思っています。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 そもそも最初のサービスを作る部分からバズるための設計をしていた?

重松(スペースマーケット):
 そうですね。実は似ているサイトもたくさんあるんですけど、やっぱり最初の出だしのインパクトは非常に大事なので。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ありがとうございます。ここで片岡さんに伺いたいのですが、どうやると彼らと接点を持てるのでしょうか?

片岡(広報専門家):
 お三方のお話、非常に生々しいというかリアルな話でした。小さいながらもPR会社を経営しておりますが、いろんな経営者の方がやっぱりWBSには出たいとおっしゃいますね。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 あと、ガイアの夜明けとか、カンブリア宮殿とかね。

片岡(広報専門家):
 人によっては徹子の部屋に出てみたいとか、いろんなご要望があります。じつは、ポイントは3つあります。主にテレビに当てはまるんですが、1つ目は、テレビ、新聞、雑誌、ラジオなどのメディアは企業の宣伝はしたがらないということ。よく考えていただければわかると思うんですが、基本的には提灯記事みたいなことは書きたくない。それは広告でやってくれと思っています。とはいえ、面白い、社会性がある内容で視聴率が取れるならば喜んでやってくれます。

 なので、いかに社会的に意義があるのかを、宣伝くさくなく言わなければならない。「これ、うちの新製品です」って持って行くのではなく、「これはこう使うとこういうふうに生活が便利になるものです」というような目線を前提にすべきです。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 いわゆる課題解決型ですね。

片岡(広報専門家):
 そうですね。次はすごくわかりやすいと思うんですが、例えばテレビなら夜11時台のWBSはビジネスマンが見ているけど、朝の9時台の情報番組は見られないですよね。BtoBの企業が売り込んでも、「これはこの番組のターゲットと違う」と言われちゃいます。つまり、タレントや著名人とのトークが売りの『徹子の部屋』にBtoB企業の社長が出るのは厳しいということ。誰が見ているのか、というメディアのターゲットに合わせることができるかです。

 もう1つはテクニックの話ですが、こういう事例があります。例えば、いまシリアは内戦問題が続いています。でもシリア料理が流行っているかと言うと、そんなことはない。シリア料理がどんなものかわからないですよね。そんなときにシリア料理をテレビ番組で取り上げてもらおうと思ったら、どうすればよいでしょうか?

 シリア料理のお店って、日本におそらく何軒もないと思います。でも、東京都内ならアフリカ料理の店は結構ありますよね。僕だったら、アフリカ料理のお店の知り合い5人ぐらいにお願いします。なるべくアフリカ料理屋が固まっているエリアのオーナー5人に「アフリカ料理やっているんだから、ちょっと2週間だけでもシリア料理のキャンペーンやってよ」と頼みます。そこで各店が2週間の間シリア料理をやってくれることになれば、そこにメディアが集まってくるんです。「今、渋谷でシリア料理屋が流行!」って。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ムーブメントが起こっているところをメディアはかぎつけてくる。そのファクトをどう作るか。

片岡(広報専門家):
 そうなんです。もちろん嘘じゃダメですよ。やらせになっちゃうから。どうやってファクトを作るか、一言でいえば可視化するということ。そこがポイントです。特にネット系企業やBtoB企業は自社のサービスを可視化するという最初のハードルが高いです。そこをどうするかが工夫のしどころであり、こちらからアドバイスをするポイントになっています。

「入りたい!」と思われる状況を作る 


嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ありがとうございます。テレビとかいろんなメディアに取り上げられると、多くの方の目にとまりますよね。採用面において、応募の数はどんな影響を受けたか、そしてそれがどんな結果になったかをお話し頂けますか?

大賀(フライヤー):
 メディアに出たタイミングでもっと採用広報をやっておけば、いい人を集められたかもしれないとは思っています。ただ、そのときは全くお金がなかったので、採用は出来なかったんです。ただ、テレビやピッチイベントの賞については、いまでも採用広報の中に載せています。いつにどういう賞を獲りましたとか、WBSでご紹介いただいていますというように。これはいまでも効いていると思っています。

辻(マネーフォワード):
 本当にベンチャーに来る人は限られています。普通の人って、あまり来ないじゃないですか。なので、そういう人にどういうふうに発信するかはすごく大事です。今は社員45人ぐらいですが、メディアに出れば採用はもちろん、資金調達もしやすくなるし。

 ただ僕も、IVSとかTechCrunchさんのスタートアップバトル、米国大使館の今年のベスト起業家、他にも電通国際さんの金融スタートアップの大賞をいただくなど、そうした露出を考えています。それらに出てメディアに取り上げていただくと、人がだんだん声をかけてくださるようになる。

 これはタイプによると思うんですけど、隠れてそーっとやるタイプと、どんどん行くタイプがいます。重松さんなんかはどんどん行くタイプで、初めからすごく目立っていますからね。僕もそっち派で、来たボールは全部打つというスタンスです。マネーフォワードを知らない人はたくさんいるので、1人でも多くの人に知っていただければいいかなと。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 イベントには積極的に出て賞を獲っていく。そのための準備はかなりやられていますか?

辻(マネーフォワード):
 準備は実際のところできないんですよね。会場に着いたらなんかすごい面接だったとか、準備不足だったことが色々あります。きちんと準備した方がいいと思うんですけど。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ありがとうございます。次に重松さん。

重松(スペースマーケット):
 私は、ピッチイベントで名を上げたと思っています。IVSは準優勝、B Dash Campで優勝して、この前のRISING EXPOでも優勝したんですよね。それぐらい賞を獲ると、みんな勝手に「すごい」と思ってくれて、非常に営業もしやすいし、優秀な人たちが向こうから来てくれるんです。リクルートの「サンカク」というサービスでは、非常に優秀な方が手伝ってくれています。サンカクは絶対使った方がいいですよ。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 妥協しないのは素晴らしいですよね。最後の最後までやりきると、おのずと結果が見えるんですかね。

片岡(広報専門家):
 採用広報は人手不足もあって、今、注目されています。依頼も多いんですが、じつは非常に難しいんです。僕がいつも言うのが、「しなくていいならしないに越したことはない」ということ。広報にアウトバウンド型とインバウンド型の2種類があるとすると、どっちかというとインバウンド型の方がいいですね。こっちから積極的に情報を投げるより、自然に相手側から依頼が来る状況をいかに作るか。

 やっちゃいけないことははっきりしています。それはわざとらしい、嘘っぽい採用広報です。これはいまの若い方なら、嗅覚でわかるんです。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 受付前で社長とみんなが笑ってとかですか?

辻(マネーフォワード):
 うちは素敵な採用ページなのでぜひ見ていただきたいんですけど、本当にいい会社に見えるんですよ。それはダメってことですか?(笑)

片岡(広報専門家):
 それでインバウンドで来る方は大丈夫です。ただ、それを見て行こうかなと思っていた人が、嘘っぽいなと思ってしまう可能性もあります。

辻(マネーフォワード):
 嘘じゃなかったらいいんですか?

片岡(広報専門家):
 嘘じゃなければ。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 そもそも、嘘っぽさはどこから来るのでしょうか?

片岡(広報専門家):
 本当に絵作りが大事です。例えば、実際は滅多に社員のいるフロアには来ない社長が、新人社員と仲良くフロアで談笑している写真とか。いかにも決め撮りの記念写真みたいな感じです。

 一番いいのは、あくまでさりげなく。第三者による客観的な自社の評価が伝わることですね。この会社のこういうところが素晴らしいっていうのが、取引先や顧客の声として自然に伝わること。

ベンチャーに欲しい3種類の広報

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 マネーフォワードさんは広報担当の方がいらっしゃると思うんですが、どういった方を広報の担当として雇うべきなのでしょうか?すごい広報担当はどこにいらっしゃるんでしょうか?片岡さん。

片岡(広報専門家):
 広報担当の仕事とは何か考えると、大きく分けると3つしかありません。1つは戦略を考える人。プランニングです。これはなるべく経験とインサイトがある方がいい。

 そうじゃない場合は、作業をきっちりやってくれる方。これは社長がまだ広報戦略を自分で考えている段階で、作業は忙しくてもうできない場合。例えばプレスリリースを書いたり、メディアに持って行ったりという実務をしっかりとやってくれるきっちりした人ですね。

 もう1つはインナーコミュニケーションを良くしてくれるムードメイカー。女性に限らず男性でもいいのですが、場合によっては人事と広報を兼ねてもらうなど、この人がいるとなんとなく採用も広報も全体がうまくいく、メディアも喜んで集まってくるという人です。あまり難しいことは言わないけど、「この人がテレビ局行くと番組側から依頼が増えるな」という人が本当にいるんです。

 この3つのタイプの中から、まずはいまの企業のステージが、どのタイプの方を必要としているのかを見極めるのが大事だと思います。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 マネーフォワードの広報の方、めちゃめちゃ美人ですね。

辻(マネーフォワード):
 別に、美人だから広報とかじゃないんですけど。でも、記者さんも僕としゃべるより当社の広報としゃべるほうが楽しいかもしれませんね(笑)。

 僕は前職がマネックス証券だったのですが、マネックスは松本大社長が広報としてもすごくて発信がかなりストレートです。でも、やりたいこととかが記者さんの向こうにいる方々に向かって話しているように聞こえるんです。メッセージ性がすごく強い。

 それで、人に伝えるって生半可なことじゃないって思ったんですよね。広告ではないので、記者さんにとって本当に伝えたいと思う事じゃないと、価値がないと思われて書いてくださらないし。

何のための「広報」? 

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 続いて質問に入ります。どなたか気になることはございますか?

質問者A: 
 貴重なお話ありがとうございました。広報についてお聞きしたいのですが、我々の会社にも広報がいますが、営業戦略に寄与しているのか、採用に寄与しているのか、ちょっと評価しづらい部分が多いのですが、みなさんどういうふうにお考えでしょうか?どうやって広報担当の評価を決めていらっしゃるのかお聞きしたいです。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 辻さん、お願いします。

辻(マネーフォワード):
 広報の評価でありがちなのは、露出を広告換算して金額単位でこれぐらいみたいな。おそらくそれが一番メジャーで、PR会社さんとかもその形で出されていると思います。
 
 ただ、ベンチャーなので数字が云々というより、体感でユーザー数がガンと伸びたとか、何か反応があったとかを見ていますね。つい最近も、日経新聞にYahoo!様と提携した記事が出たんですけれども、あれもうちの広報担当が頑張ってくれました。ああいうのだと評価しやすい。それこそクラウドワークスさんのありがとうボタンみたいに。社内的に「あ、すごい」って盛り上がるのが、インパクトがあってわかりやすいと思います。でも、難しいですね。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 逆質問してよろしいですか?どういった状況の中で、この質問をされたのでしょうか?

質問者A:
 成果という部分が広報担当を立ててからまだ出ていなくて、社内でどんな仕事をしているのかが見えづらい。営業メンバーとか「あの人、何しているんだろう?」って言っていて。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ちなみに社員は何名ぐらいですか?

質問者A:
 50~60人ぐらい。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 広報は専任ですか?

質問者A:
 専任です。 

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 なるほど。では片岡さん、お願いします。

片岡(広報専門家):
 広報担当者が最も悩むところですね。自分の評価っていったい何だろう、ミッションは何だろうって。そういう「評価基準」をアドバイスして欲しいという依頼を受けることもあります。僕が必ず言うのが、まず広報といっても幅広いですよということ。ところが、多くのベンチャー企業や中小企業では、広報っていうとほとんどが「売り上げを上げるための広報」に限定してしまっているんです。

 社長さんや担当役員の方には「もうちょっと大きく考えましょう。頭を4つに分けてください」と言います。攻めの広報と守りの広報、それから社外に向けての広報と社内に向けての広報です。社外に向けての攻めの広報が、いわゆる売り上げを立てる広報。つまり、マーケティングPRなどです。それから社外に向けての守りの広報が、お詫び会見などの危機管理対応です。
 
 それから守りの社内向けは、コンプライアンスの徹底ですよ。社員やバイトが勝手にブログにいろいろ載せちゃった事件も、最終的には広報が受け持つべき事案です。何を出してよくて何を出しちゃいけないか、社員向けのソーシャルネットのルールを作ったりもします。法務部が入る場合もあります。広報の方が社員への関わり方は深いですね。

 もう1つが、投資家向け、従業員向けなどの「中の人」向けの攻めのインターナル広報。投資家向けの場合はIRと呼ばれます。広い意味での「中の人」や社員の士気を高めるための攻めの施策を行う広報です。

 悩んだら役員に、「社長のおっしゃる広報は、どの広報ですか?」と聞けばいい。広報担当者になったら、まずは、自分たちの広報は何をするための広報かを知りましょう。もちろん攻めで、外向けの、マーケティングPRだけという会社もいいかもしれません。社員が増えてきて、名前も覚えきれなくなったステージになると、むしろ「中の人」同士のコミュニケーションを活性化することが広報の重要な役目となることもあります。社報って古いですけど、そういう社内用ソーシャルネットを作りましょうみたいなことが優先すべき仕事なのか、その「広報」の定義をまずしてあげる。そこが第一段階です。

 次は簡単ですが、何か施策をする前に、現状をまずリサーチする。多くのお金をかける必要は必ずしもありません。何かキャンペーンを実施する前は露出件数や、終わった後の露出件数。これは知名度とかでもいいですし、目的に合わせたもので。社員のモチベーションアップが広報の役目だったら、社員のモチベーションがどれだけやる前とやった後で変わったかを調べましょう。事前の評価をリサーチすることで、初めて事後の結果が分かるんです。

辻(マネーフォワード):
 追加すると、たぶんベンチャーって攻めの広報は多いと思うんですけれども、我々も広報と兼務で2人いますが、広報の経験がない2人なんですよね。なので、実際どうやればいいかわからないので、外部から経験豊富な方にサポートしていただいています。週一回、今週何をするかを細かくやってくださる素晴らしい方です。そういう方がいると結果が出ると思っています。

広報はどうやってスケジュールを立てる? 


嶋根(MOVIDA JAPAN):
 他に質問がある方は?

質問者B:
 2か月前に立ち上がったばかりのスタートアップのベンチャーからの質問ですが、攻めの広報をやる場合のスケジュールの引き方について教えていただきたいと思います。先ほどのWBSなどのスポットのやり方はわかったんですけど、いつ、どのぐらいのペースで、次に何をやるかをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

重松(スペースマーケット):
 どういう商材かにもよると思うんですけれども、サービスのリリースのタイミングと、そういうピッチ系のイベントのおかげで結構メディアに出るんですよ。ああいうピッチ系のイベントに出ると、まずウェブのメディアで入って、ウェブのメディアで取り上げられるようになると、紙のメディアに行くんですよ。新聞とか。新聞で取り上げられると雑誌に移って、雑誌で取り上げられるとテレビに波及するんですね。テレビは1つ出ると複数に出ますよね。

 なので、イベントを軸に考えてもいいですし、どれだけウェブの媒体に取り上げられるかで考えてもいいですね。そこをきちっとやると、テレビの話とかも来るようになります。イベントに来ると記者と直接会えるので、そこはガンガン営業してください。リリースあったらお渡ししますとか。

質問者B:
 ありがとうございます。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 すみません、初期の頃は具体的にどんなアプローチをしましたか?

重松(スペースマーケット):
 そうですね。前職でPRをちょっとやっておりまして、もともとの人脈があったこともあるんですけれども、トーマツベンチャーサポートの斎藤さんがやっているようなイベントで、記者を集めてイベントをやりました。

 そこでリリースピッチがあって、結構いろんな記者さんと会えました。そこでTV関係の人ともつながってリリースを送ったら、「明日、お寺でパーティしてる会社はないですか?」って聞かれて、「ないです」って答えて。それを4回ぐらい繰り返しました。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 「明日どうですか?」って聞かれるんですか?

重松(スペースマーケット):
 そうなんですよね。そこが難しいところなんです。そうやって顔を売っていく感じですかね。PRの目線って経験のない方だと本当に分からないので、専門家に聞くとか、そういう本をいっぱい読むというのが大事だと思います。

一気に攻める?じわじわ攻める? 

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 専門家の片岡さん、お願いします。特に起業して間もない頃にやるべきことはあるのでしょうか?

片岡(広報専門家):
 会社には成長戦略があります。2年後までにどういうふうになるのか、あるいは半年後に何を始めなければならないのか。大企業で例えれば、日本コカ・コーラという会社がありますが、コカ・コーラ社の商品には、コーヒーから爽健美茶からスプライトからファンタから色んなドリンクがそろっていて、常に市場で販売されていますので、常にその広報をやらないといけません。同時に、コカ・コーラという企業ブランド自体の広報もやらないといけません。

 その対極とも言えるのがレッドブルです。7,8年くらい前に日本に入って来ました。世界的には非常に大きな会社なので宣伝費や広報予算はあったのに、日本市場でいきなりマス広告はやらなかった。なぜかと言うと、いきなりやってブームになったら、それ以上は盛り上がらないからです。販路が拡大する前にブームになると、それで終わっちゃう。

 しかも、社名と商品名が一緒だから、1回テレビで取り上げられて瞬間的にどんなに売れてもそこで終わっちゃったら終わりなんですね。短期的に売れすぎると日本進出失敗になる。それでやったのは、車に看板をつけて都内を回るなどのクチコミ戦略、あとはチャネルの強化。スポーツジムなどで試飲できるようにした。そのうち特定のチャネル、セブンイレブンなどの良いところだけに露出して、ロゴを見てもらう広報を3年ぐらいやった。その後になって、大がかりなイベントなどのマスの施策をやったんです。

 要するに、会社名を育てるのと同じように製品もちょっとずつ、すでにあった栄養ドリンク市場の中に切り込んでいったんです。資本力にはもちろん違いがあると思いますし、ビジネスモデルもちがうでしょう。一気にどーんと行く先行投資型なのか、あるいはじわりじわりとニッチからマスに向かって徐々に攻めていくビジネスモデルなのか。

 それによってスケジュールの引き方がかなり変わります。どちらも両極端で、明日テレビで全国に向けてどーんとマス広告を行うこともできれば、明日ブログだけを始めるというやり方もあります。

イベントは出まくるか全く出ないか 

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ありがとうございました。他にございますか?

質問者C:
 よろしくお願いします。私もアラフォーの経営者で5億ぐらい調達して、IT企業を経営しています。そうすると、金持ちになりたいのかなと疑う世間の目があって、あんまり登壇したくないんです。最近の起業家って、バンバン登壇されているじゃないですか。クラウドワークスとかグノシーとか。

 私はあんまり出なかった方ですけれども、みなさんどういうふうにご判断されているのかなと。私が出るときは、5億円調達したよって話すと妬まれるから出るなって投資家から言われていました。だから人前に出ないようにしたんですよ。仕事が忙しかったんですけれども、最近の起業家はかなり外に出ているので、何が変わったのか教えていただきたいです。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ちなみにいつ創業されたんですか?

質問者C: 
 創業が2005年です。三木谷さんとかに憧れて起業したんですね。いきなり5億投資して、ずっと仕事一筋で9年目です。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 まず重松さん、お願いします。

重松(スペースマーケット):
 本当に時代が変わりましたよね。僕も前職はフォトクリエイトに2006年にジョインしましたが、本当にここ3、4年ぐらいからですよね。ベンチャーも2世代目になったというか、登壇できるイベントがとにかく増えました。海外のイベントも増えましたし、そういったプレゼンできる場が広がったというのが大きい。

質問者C:
 金の話ができるようになったのも最近ですよね。昔は5億円増資したことも絶対言うなと言われました。いまはみんな開示していてすごいと思います。

辻(マネーフォワード):
 起業家何名かで上場された社長と話す機会があったんですが、その際にその社長さんはうまく行ったら必ず叩かれるとおっしゃっていました。それで、「叩かれないようにうまくやるにはどうしたらいいですか」と聞いたら、「そんなうまい方法はない」と宣言されていました。「日本社会なら絶対どこかで叩かれる。でも、やましいことしているわけじゃないし、世の中を良くしたいと思っていることをちゃんと伝えるんだ」とその方はおっしゃっていました。

大賀(フライヤー):
 ひとついいですか。たぶん、我々はどっちかというと「出る」と決めた人たちなんだと思います。中途半端はないとよく言われます。私がいろんな方にお伺いするのは、イベントに出ると決めたら出まくる。中途半端に出てもしょうがないということです。出るとなったら似たようなところにどんどん発信していくか、全くのサブマリンで行くかのどっちかなんだと思います。

 いまは比較的露出するためのプラットホームが整ってきたので、その割合が少しずつ増えているのかもしれないですが、全く出ない人の話も聞いていますし、それは経営者なり事業なりの特性によって違う気がします。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 ネット系の事業が比較的「出る」側寄りなんですかね。どうですか?今後、登壇しまくりますか?

質問者C:
 出ない方向で行きます。

嶋根(MOVIDA JAPAN):
 分かりました。ありがとうございました。(終了)

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