1. 【コラム】 代ゼミが大リストラ!少子化時代のサバイバル

【コラム】 代ゼミが大リストラ!少子化時代のサバイバル

すごい講師がいた予備校だったが・・・

 フリーランスの私は食べていくために日々是決戦です。受験生が真夏の猛勉強で追い込みに入った8月下旬、代々木ゼミナールが校舎や人員の大リストラを発表して受験生ならずとも世間を驚かし、NHKのニュースウオッチ9でもトップニュースに取り上げるなどメディアでも大きく報じられましたね。駿台、河合塾と並ぶ「三大予備校」の一角であり、会計人の皆さんも大学受験の際、代ゼミに通われた方も多いと思いますので衝撃を受けられたことでしょう。

 かく言う私は三大予備校には通っていなかったのですが、一度だけどうしても苦手科目を補強するために、浪人生だった1994年の冬期講習で現代文の名物講師、酒井敏行先生の早稲田大学現代文対策講座を単発で受講したことがありました。ちなみに代々木からの衛星中継による授業を津田沼校で受けたのですが、今回のリストラで閉校リストに入ってしまったようで、千葉県の総武線沿線界隈で浪人生活を送った社会人の郷愁をまた誘いそうです。

 それで、早大の現代文は私立の受験でもっとも難解だったとはいえ、いま文章で飯を食っている人間として恥ずかしながら当時の私は現代文を苦手にしておりました。その頃の早稲田の現代文といえば、政治学者の大家、丸山眞男氏らの骨太な文章を問題に使っていて、進学校の同世代に比べ読書量の少ない私などは問題文を読むだけでヘロヘロのありさまでした。

 それまで2年ほど苦闘していたのが、あら不思議。たった5日間ほどの講座で、見違えるように解けるようになりました。実は難解というのは誤解だったのです。丁寧にロジックを追って言い換え表現を探すなどのコツを身に付ければ合格点が取れるようになりました。今日の私があるのも、まさに酒井先生のおかげです。当時はこうした凄腕の人気講師がたくさんいる時代でした。私と同じような体験を持つ代ゼミ卒業生の会計人も多いでしょう。

明暗を分けた代ゼミと東進

 しかし少子化の波には、どこの予備校もあらがえません。顧客のパイが少なくなって、海外展開も難しいビジネス形態なので何がしかの工夫がなければ今回のような事態になるのは自明の理でした。子どもの数は減っても進学率の上昇などで下支えされてはきましたが、ほかにも少子化に直面している予備校が多い中で、なぜ代ゼミがこのタイミングで突然のリストラを決断したのか。

 思い出して見れば分かりますが、元々は浪人生をメイン顧客にしていたビジネスモデルなので、かつての受験戦争時代は「無双」でしたが、現在は名門大学への高望みにこだわらなければ誰でもそれなりのところへ進学できる「大学全入」の時代です。そうなると、マスプロ形式で大量の浪人生を主体にしたビジネスモデルでは、立ち行かなくなるわけです。

 そういえば同じ予備校でも、去年は流行語大賞を取ったライバルがいましたね。そうです。「今でしょ!」の林修先生を擁する東進ハイスクールです。私と同じアラフォー世代より上の受験生にとって東進といえば、金ピカに着飾った変な英語の先生とか、マークシートの選択肢をクジのように解かせる胡散臭い現代文の先生とかまさに名物講師の宝庫というだけで、政界でいえば共産党、野球界でいえばヤクルトのような独自路線まっしぐらの時代だったのですが、いまは実力派の講師を他予備校から引き抜いて指導のクオリティーを上げ、さらには現役生重視にシフトしたビジネスをして存在感を高めています。

 つまり「予備校=浪人生」という時代はすでに終わっていたのです。さらに東進は現役生対応でビデオ・オン・デマンド(VOD)でも受講できるなどデジタル面でも拡充しておりましたから、スマホネイティブで、部活動に忙しい高校生には喜ばれるわけです。

追い込まれて奮起する代ゼミらしさ!?

 代ゼミももっと早く少子化対応を見据えていれば今回のような突然の大リストラに踏み切らなくても良かった可能性があります。しかし、モノは考えようかもしれません。もともと私が受験生の時代から、少子化は予測されていましたが、代ゼミ生の間では当時から「少子化で傾いたら各教室を結婚式場に改装できるようにしている」とささやかれていました。

 実際、経営者がそのような趣旨の発言をしていたとネット上にも情報があるわけですが、真偽はともかく、実はここまでの対応が遅れた分を一気に取り返すような大胆なリストラ策としてみることもできます。なんでも業界では「2018年問題」というのがあるそうで、その年を境に18歳人口が急速に落ち込んでいくそうです。東京オリンピックのある2020年くらいまでは景気がそれなりに持続するでしょうから、代ゼミの経営者は、6年早く手を打ったという見方もできます(非上場で財務諸表をみられないので、もしかしたら土俵際だったのかもしれませんが)。

 今回、都心部に拠点を集約したことで、経営の効率化がアップするのは間違いありません。VODで個別に勉強しやすい環境づくりといった、これまでの代ゼミのビジネスモデルを覆すような新たな展開もやりやすくなるでしょう。コツコツと新たな布石を打つ東進が、現役の優等生らしさを象徴するのであれば、追い込まれて突然奮起するあたり、代ゼミの浪人生予備校としての面目躍如ともいえるかもしれません。


(文/新田哲史=ブロガー・ソーシャルアナリスト)


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