1. 需要が伸びる領域に時間を費やせ――勝間和代と神田昌典が明かす「人生の選択肢を広げる一手」

需要が伸びる領域に時間を費やせ――勝間和代と神田昌典が明かす「人生の選択肢を広げる一手」


 2014年8月9日に開催された起業家スーパーカンファレンス(KSC)。今年も、著名な有名人がたくさんの学生に一生モノの地図を与えてくれた。

 数年後も予測できないほどに、凄まじいスピードで変化する現代社会。そんな中で将来の見通しを立てる方法はあるのだろうか? 勝間和代氏と神田昌典氏が、不透明な時代にとるべき選択を語った。

前編

スピーカー

経営コンサルタント 作家、リード・フォー・アクション発起人 神田昌典氏
経済評論家 中央大学ビジネススクール客員教授 勝間和代氏

見出し一覧

・選択肢を広げるという選択
・最低限の基盤を作ってから、逆張りをする
・人は知っているものの中からしかキャリアを選べない

選択肢を広げるという選択

司会者:自分のやりたいことをやりなさいと言われますが、昨今の大学生は、自分のやりたいことをなかなか見つけられないというのが正直な感想だと思います。どうすれば自分のやりたいことを見つけられるんだろうといった質問に対して、何かアドバイスはありますか?

神田:僕がやりたいことを見つけたのは、50歳になってからです。

勝間:今年ですか?

神田:そうですね。大学3年の時に、僕は外務省試験を受けました。なぜ受けたかと言うと、海外に行きたかったからです。海外には行きたかったけど、やりたいことがわからなかった。当時は何が人気職だったかというと、広告代理店、それから商社、銀行。どれも自分に合わない、やることが全くわからなかったんです。

 外務省に行くと、どうやら試験を受ければ2年間留学させてくれるらしいので外務省に入りました。なので、やりたいことは分かっていなかったんですね。ですから、みなさんが分からないのは当然のことだと思います。ただ、その時にみんながいいよって思っている会社には行かなかったんですね。

勝間:すごく大事です。私が子どもサッカーと呼んでいるやつです。

神田:何ですか、それは。

勝間:子どもサッカーの特徴は、全員で同じボールを追いかけることですよ。10人のフィールダーが全員ボールについていくから、いつまでたってもゲームにならないんですね。大人は、ちゃんと戦略を組んで、ポジションを組んで、フォーメーションを組むじゃないですか。だから、子どもサッカーをやるなというのはずっと言っています。

神田:なるほどね。ただ、そうやって考えると子どもサッカーをやるなと言っても、勝間さんも大学の時に公認会計士を取ったじゃないですか。それは自分自身の資格だけど、でもその後に就職されたところというのは、官公庁でしょ。そうすると、世間的に見ればやっぱり安定しているんですよ。

目標が定まらないのなら、いろんな目標を選べる権利を持っておく

勝間:それこそさっきの目標設定の話なんです。とりあえず5つぐらい手の届くものを書きだして、それで比較検討しました。会計士が一番リスクリターンがよかったので、これにしようって。

神田:そう考えると同じだね。僕も海外留学するんだったら、外務省試験はまだ楽かもしれないと思ったんですよね。税金を使って留学させていただきました。その後、たんまりと税金は戻させてもらいましたから、許してもらえるかと思うんですけど。

 たぶん、そういう発想だったのかもしれないですね。みんなが行くからではなくて、分からないからこそ勝間さんは公的な資格、僕の場合は海外ということでバランスをとっていった。

勝間:金融用語なので、学生のみなさんには馴染みがないかもしれないんですけど、オプションっていう言葉があるんですよ。オプションバリューって呼んでいるんですけども、目標が定まらないうちは、いろんな目標を選択できるだけの権利を持っておくという発想です。

 だから、有名大学がいいか悪いかは別ですけど、何でみんな有名大学に入るかというと、有名大学に入ることで将来の進路のオプションが広がるからなんです。入れる会社の数が増える、ネットワークが広がる。大企業も、そこに入ることによって将来のオプションが広がるのなら、それはそれでありだと思います。ちなみに、私は大学が慶應なんですよ。大学院は早稲田です。

 「Qさま」というクイズ番組がありますよね。私、あれの慶應対早稲田の回に呼ばれるんですよ。私、早稲田に5年間、慶應に10年間いたので、どっちのチームでもいいんですよ。一応慶應にリスペクトして慶應側にいます。10人で1チームなんですが、答える順番はクイズの正答率順に並べるんですよ。正答率が上がっていくと、だんだんだんだん後ろに下がっていく。私は、慶應のチームではだいたい9番をやっているんですよ。

 まさか自分がクイズ番組の解答者になるなんて、思ったこともないんですけど。それでも、やっぱりそうなっちゃったからには、それを受け入れて、その中で出来ることを探すっていうのが、生きがいとか目標なのかなって思います。

神田:ちなみに、この会場で僕のことを知っている人ってどのぐらいいますか? 勝間さんのことを知っている人は? ほとんどですね。実は私たち、もう10年ぐらいのつきあいがあるんですね。

勝間:私がサラリーマンの頃に、ちょうど神田さんが何冊か本を出されていて、穴が開くほど全部読みまして。カセットテープから何から、全部買いました。それで、徹底的にパクる。私はこれをTTPと呼ばせていただいているんですけど、とにかく神田さんが言っていることをとにかく全部やってみたんです。

神田:皆さん、この2人はどういう関係なんだろうと思われるかもしれませんけど、実はそういうように、僕が本を出すことで出会うことができた本当に素晴らしい関係なんです。

勝間:なので、目標は暫定目標でいいから手に届くことをなるべくやる。ただし、その時に目標の範囲を広められるような手段を作っておくといいんじゃないですか、ということです。

神田:どこに行ったとしても、戦略自由度。自由度を広げることです。今の時代はどうなるか分からないんですけど10年前に比べると、技術的な進歩がすさまじい。携帯電話やスマートフォンの浸透率が100%という状況なら世の中が激変するのは、変わらない事実だと思います。

勝間:ちなみに、自分の仕事の勉強のために日経エンタメっていう雑誌をとっていまして。非女性認知度という、名前を聞いただけで顔と仕事が分かるかという数字、私は何%だと思います?

 私の「勝間和代」という名前を聞いただけで、顔と名前、「あ、この人だ」って頭にポッと浮かぶ人が日本人の何%かをサンプリングして。

神田:20%。

勝間:もうちょっと多いんですよ。ちょうど50%です。

神田:ちょうど50%。それってブランド認知度より高いじゃないですか。普通、ブランド認知度っていうと、もっともっと低い数字でしょ。

勝間:でも、ちょうど50%ってどんな人達かっていうと、例えば、道端三姉妹とか、ダレノガレ明美さんとか、あんな感じなんです。

神田:全然知らない。

勝間:でしょ。それが2人に1人の話なんです。でも別に、テレビを年中見てる人だと、それぐらいの頻度で分かるという感じですね。それがいいか悪いか知らないんですけど、とりあえずそれが一つの財産になるので。何かあればこの50%を思い出して、自分の戦略、目標を作っています。

「世代ごとの考え」という常識が通用しない世界


神田:キャリアで僕がすごく面白かったのは、勝間さんがテレビに出始めた後、週刊誌とかで叩かれたときがあったんですね。

勝間:麻雀に転向か、と書かれました。

神田:叩かれたときに勝間さんがなんて言ったかというと、「出る杭は叩かれるけど、行きつくところまで行きつけば叩かれない」と。その後、紅白の審査員とかセーラー服のクイズ番組とかやっていて。

 これからのキャリア設計ですごく大事なのは、これだけSNSとかが広がっていると、一緒に働こうというときに、あなたについて知ることができる情報源を教えてくださいと言われるでしょう。それでFacebookやTwitter、ブログを見させていただくっていうケースがすごく多くなりますね。

 そういう観点から、パーソナルブランディングは非常に大事だと思いますが、20代の人はパーソナルブランディングっていうのは、考えた方がいいんですか? それとも30代からでも遅くないですか?

勝間:いや、ただ単に積み重ねなので、自然に出来ることをやっておいた方がいいかなと思います。Facebookはちょっと外行きの自分なので、普段の雰囲気より30%増しているんですよ。なので、私がFacebookで人をチェックするときも、3割増しだということを理解して割り引きます。

 あと、私は人のFacebookを見るのが趣味なんです。面白いのが写真ですね。タグ付けされた写真ではなく、本人がアップした写真を見ると、その人の興味が全部わかるんです。「ああ、この人はこういうものに興味を持っていて、こういうことに興味がないんだな」と。自分のことが大好きな人ってどうなると思います? 

 笑っちゃうくらい自撮りの写真ばっかりなんですよ。すると、この人はすごく自己顕示欲が強い人だと分かります。なので、私が人の適性を見るときはそこから考えると思います。

 他にも、40代くらいになってくると、人間関係地層型と勝手に呼んでいるものがあるんです。人間関係が誠実な人というのは、昔からの関係がずっと積み上がっていくんですよ。だからステージが変わっても、小学校、中学校、高校とどんどん友達が登場して、そこに社会人の友達が登場して。という感じでものすごい地層になっていくんですね。

 不誠実な人というのは、友達が焼き畑農業的にどんどん入れ替わっちゃうんですよ。最近の友達しかいないんです。だから人のFacebookを見たときに、この人の友達がどんな地層型になっているかを見ています。そういうことも就職試験の時にわかると面白いですよね。

神田:僕、思うんですけど、こういうセミナーに8歳でも来てしまうような子どもが今、大量に生まれてきているんです。ですから20歳、彼らにとってみれば20歳っていうのが、みなさんにとっての僕みたいなもので。でも、全く差がない。

 彼らがいったい何に興味があるかというと、ずばり、人間の可能性だと僕は思います。だから、彼にとってみると、「国境がなくなるんだよ」という話はリアルなんです。それが20年経つと、彼は「それって当たり前だよね。あの時に、あのおじさんとおばさんが言っていた」という大人になっていくんです。

 これからは面白いですよ。今までだったら、大学生はみんな同じ考え方で、50代になってもみんな同じ考え。そう言われていましたが、全くその常識が当てはまらないです。僕も当たり前のように、僕も10代の人と仕事をしなくてはいけないですし、それからやっぱり70代の人とも仕事をしなければならない。しかも、国をどこに行っても必ず同じ言語、同じビジョンに基づいて仕事をしなくてはいけません。

 その同じビジョンというのは何かというと、彼が大人になった時にどういう世の中を作りたいかです。これはものすごく大きいと思うんですね。残念ながら僕は50歳ですから、僕の年代ではなかなか次の時代には手が届きづらいと思う。これから本当に社会を作っていくのは、これから30、40代になっていく20代のみなさんなんですよね。最低限の基盤を作ってから、逆張りをする。

需要が伸びるところに時間をかける

勝間:私はもともとITが得意なので、おかげ様でこんなふうに楽をさせてもらっています。ただ、なんでITと英語が得意なだけで食べられたかというと、誰もITと英語が得意じゃなかったからなんですよ、20年前まで。

 英語が話せるというだけで特殊な人材だし、コンピュータが使える、プログラムができるというだけで食べられた時代だったんですね。今だったら笑っちゃいますよね。できない方が足を引っ張ることになっても、できることはなんのプラスにもならない。

 それと全く同じで、これから一番変化をして、しかも需要が増えて、そこに対して自分の時間を投資した場合に、一番リターンが多いところはなんだろうとを真剣に考えると、今は発展途上国あたりにキャリアがあるというのが見えてくると思います。

 もう1つは、少子高齢化への対策ですね。今、福祉とか医療とかって、どんどん増えてきていますけれども、もし国内に残るのであれば、これから増える需要とそれにかかわる産業に行くということがお薦めの1つになります。ゲームなんか典型的ですよね。

 私、通勤電車で人が何をやっているのか見るのが趣味なんですけれど、誰も本を読まない。私、本を書いているじゃないですか。でも、本当に今って紙の本は売れないですよね。悲しくなるぐらい。

 だって、通勤電車で紙の本なんて読まないですもん。10年、20年前は、みんな紙の本や新聞を読んでいたんですよ。今、全員スマホいじっていますよね。だから、スマホを生かせるような仕事に就いたのが5年前だったんです。

 これだけ普及しちゃうと、今の正解はどうかわかりません。けれども、いずれにせよ時代の変化で、需要が勝手に伸びていくところに自分の時間を費やすというのが一番簡単なキャリアの選び方だし、目標の設定の仕方だなと思います。

司会者:ありがとうございます。先ほど、お二人の共通点として、やりたいことが見つからない人に対してみんなと違ったことをするというアドバイスがあったと思います。

 人とは逆のことをするというようにとらえたのですが、それってすごく不安なことじゃないかなと思っていまして。特に自分が小学生のときとか、やっぱりみんな同じがいいみたいな、出る杭は出る杭というか。少し違ったことをやると阻害されてしまうような環境だったと思うんですけれども、そんな中で、人とは逆に行くことに対して、当時は不安ではなかったのでしょうか?

神田:やっぱり、不安じゃないですよね。人とは違った道に行くとなれば、やっぱりリスクと、それから安定性の両方をとっているんですよ。投資でもそうじゃないですか。リスクに貼りながら、実を言うと安定の株も持っているっていうのが、実は一番リターンがいいということなので。僕の場合は公認会計士っていう守れる資格があります。

勝間:公認会計士を持っていれば、一生何らかの形で仕事があるんですよ。そこで最低限のリスクヘッジをしたうえで、でかいのを取りにいくんです。そこはだから、二段重ねになっているんですよね。

人は知っているものの中からしかキャリアを選べない


司会者:急遽なんですけれども、もしこの会場に集まっている学生の方で、神田様や勝間様にご質問したいという方は、ぜひ手を挙げて質問をしてみてください。

勝間:ついでにもう1つ。会場のキャパ、さっきは1500人って言ったじゃないですか。でも、パッと見た瞬間、明らかに1500人入らないんですよ。それで私、数えて調べました。この会場のキャパは何人でしょう?

 そういうことに疑問を持つ習慣を持ってほしいんです。全て聞いたときにうのみにしないことを。パッと見たときと会場を見たとき、違和感があったんですね。ちなみに、この会場は500人から1000人だそうです。続きをどうぞ。

質問者:勝間さんにとって神田さんはメンターとのことですが、自分は今メンターを探している過程で、この人だっていう人を見つけたい。

 でも、それがまだ見つからないんです。どうして勝間さんは神田さんについていこうと思われたのでしょうか。そのきっかけや神田さんに感じたこと、そして、どうやって出会ったのか。この3つを教えていただきたいと思います。お願いします。

勝間:見つけるのは非常に簡単です。当時、私は赤坂の会社に勤めていて、赤坂の駅前にちょっと大きな書店があったんですね。私は、会社の行き帰りにそこに寄るのが趣味だったんですよ。行く度にだいたい、新刊で平積みになっている本を立ち読みするんです。

 そのとき、ちょうど面白いと思ったのが『非常識な成功法則』という本です。「この著書面白い」と思って、その前に出した本も全部買い求めてそれも見ていく。

 私は、メンターは1人じゃなくてもいいと思っています。だから、大前研一さんの本もほとんど全部読みました。頭の中に何人かメンターがいて、そのメンターの中から自分で吸収したいことを吸収していくというイメージです。なので、ある意味、出会うのは簡単だと思います。本屋に行けば誰かいますから。その中で一番気に入った人からとにかく吸収すればいいかなと思います。

 そうして、メンターだった方と今こうやって友人付き合いをさせていただくという、非常に光栄なことになっています。そのような形で自然に近づいていくんだと思います。そのメンターの人たちとも。なので、リスクを恐れずにどんどん自分でメンターに直接近づいてみる。「この人、メンターもどきだった」って思ったら静かに離れるとか、そういう方法もありますので、いろいろ試してみればいいと思います。

司会者:では最後に、お二人から参加者の皆様にメッセージをお願いしたいと思います。

神田:僕は多分、世の中が大きく変わっているというのは、今までみなさんが「この会社に勤めよう」とか、「この人、メンターになりうるんじゃないかな」と思う相手が年上の人から変わったことだと思うんです。これからの時代の中心は、おそらくみなさんです。みなさんだけじゃなくて、おそらくみなさんが10年20年経った時に、本当に新しい時代を切り開くのは、さらにその下の世代です。

 どうしてかというと、人間が進化しているからです。分かりやすく言ってしまうと、我々の世代では、テキスト処理能力が非常に優れていた人が、知性がするどいと言われていました。ゲーム脳は駄目だと言われていましたね。

 ところが、ハーバード大学の教育学部の結果では、ゲーム世代以降の人たちは、映像処理能力が半端なく高いということが分かっているんです。ということは、別途の知性が生まれてきている。そういう時代なんですね。
 
 そういった時代の中で、新しい技術というのが出来ている。そこでは地図にない道を進むわけなので、皆さんがそういったヒーローになって、自分自身が決意して進む。そういう人が報われるような時代に入っているのではないかなと思いました。ありがとうございました。

最大の財産は、失敗すること

司会者:それでは勝間さん、お願いいたします。

勝間:ぜひ、特に20代の皆さんにはいろんな人の話を聞いて、多様な人達に会ってほしい。私は、「エンジン01文化戦略会議」という文化人団体の幹事を務めているんですけども、そこには、堀江貴文さんなどの著名人も含めた200人ぐらいが参加しています、年に数回、地方で講演会をしたり、中高生のキャリア講座をやったりしているんですね。

 それはなぜかというと、どうしても私達は、知っているものの中からしかキャリアを選ばないからなんですよ。これは上質世界というんですけれども。ですので、なるべくいろんな人に会ったり、いろんなことを見たり聞いたりして、知っているものの範囲を広げて自分の想像力を高める。その中で自分の選択をすれば、いろんなことが起きるかな。だから、私は本を読むのも、インターネットを検索するのも、すごくいいことだと思っているんです。

 あと最近、私はいわゆるお金を稼ぐ仕事って3割ぐらいしかしないんですよ。残り7割ぐらいは、いろんな大学の先生に話を聞いたり、麻雀やゴルフをしたりしているんですけれども、その中で最近、人工知能についてすごく興味を持っていて、いろいろと話を聞いているんですね。
 
 人工知能って何のためにあるかというと、人間の知能を考えるためにあるんです。人間の知能を考えれば考えるほど、どうやったらそれを人工的に模せるかっていうことを行ったり来たりする。そこでいろんな面白いことを聞きまして、例えば、人工知能ってコップと箸たての区別がなかなかつけにくいんです。どちらも明らかに画像処理とかさせると、円筒状の枠じゃないですか。

 でも、私達は一瞬でコップと箸たての違いが分かるんですよ。なぜだと思います?不思議に思ったことないですか?何で私達はこれをコップだと思って、こっちを箸たてだと思うんでしょう。それは実際に、私達がコップと箸たてを使っているからです。どういう光沢の具合であるとか、どういう重さや形状であれば、この円筒状のものはコップだけど、この円筒状は箸たてだというのを全部経験で知っているからなんですよ。

 ですので、学習というのは言葉や映像もありますけど、すべて五感で経験のデータベースを蓄積していってそこからしかアクセスできないんですね。

 しかも、もう1つ面白いのは、人間はコンピュータみたいに頭の中でシナプスがつながっているんですが、シナプスというのはイオンで出来ているんです。陰イオンと陽イオンがつながるのは時間がかかるんですよ。自己組織化と呼ぶんですけど、コンピュータと人間の最大の違いは、人間は自分でプログラムを作れることなんです。

 ただ、そのプログラムはずっと動作するのに、間違えたり遅かったりするんですけれど。それでも、コンピュータには絶対できないことができる。この先どんなにコンピュータが発達しても、私は人間の方が優位だと思っています。

 例えば将棋って、コンピュータがほとんど羽生さんに追いついているんですね。チェスは5年ぐらい前にもう追いついています。でも、どんなに羽生さんに追いついたとしても、将棋のルールにほんのちょっとでも変化を加えると、羽生さんの方が絶対に強いんです。

 歩はこういうふうに動くようにしましょうとか、歩の枚数を1枚減らしましょうみたいなことをやった瞬間に、はるかに羽生さんの方が強くなってしまうんです。結局ですね、人間が最大に持っている能力は柔軟性ですから、自分の能力を信じて、変な枠とか全部取っ払っちゃう。親とかの言うことは全然気にせず、勝手に自分の好きなことを考えてやってみる。みなさん20代じゃないですか。

 これからの最大の財産は、失敗することです。死ぬほど失敗してください。失敗を重ねたうえで、その上でだんだん皆さんの脳イオンのロジックは賢くなっていきますから、それを待っていただけたらと思います。

 今日は楽しい時間をどうもありがとうございました。

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