1. 【全文】「既存モデルにこだわるなら事業をやめろ」―ユニリーバCOOが語るビジネスに必要な4つのG

【全文】「既存モデルにこだわるなら事業をやめろ」―ユニリーバCOOが語るビジネスに必要な4つのG

 企業にとっての責任とは何でしょうか。利益をあげることもその一つです。しかし、それだけではなく社会にどう貢献するかということが重要ではないでしょうか。

 ユニリーバ社のグローバルCOOであるハリッシュ・マンワニ氏は、利益だけでなく「責任ある成長」として企業が社会貢献をする姿勢の重要性を説きます。

 その中で、ユニリーバ社はどのような取り組みをしているのでしょうか。ここでは、マンワニ氏が今後の社会に対して提言するTEDのスピーチを書き起こします。

スピーカー

ハリッシュ・マンワニ / ユニリーバ社 グローバルCOO(最高執行責任者)

動画

見出し一覧

・資本主義が現代に与えた影響
・「4Gモデル」の存在意義
・人々の生活を変えるために活動する
・持続可能な社会を実現するための努力

資本主義が現代に与えた影響

 資本主義という大きな経済モデルの中で、私たちは過去も現在もビジネスを行っています。フリードマンはこのモデルの根幹を、「企業の社会的責任は利益の最大化」であると述べています。近代経済学の父アダム・スミスは、何年も前に「見えざる手」という言葉を残しました。つまり「各個人が自己の利益を追求することこそ社会全体の利益となる」というのです。

 確かに、資本主義は多くの成果をもたらしてきました。資本主義が残した成果については私も話してきましたが、資本主義は成果と同じだけの課題を私たちの社会に残しています。少なくとも、私や実業界で働く多くの方が育てられたこの経済モデルが目指しているのは、私が「3つの成長(3Growth)」と呼ぶものです。

 まず1つ目が「安定した成長」。四半期ごとの着実な成長です。2つ目が「競争力のある成長」。他に抜きんでる成長です。そして3つ目が「利益を生む成長」。株主価値を持続的に向上させる成長です。

「4Gモデル」の存在意義

 しかしこの3つだけでは十分ではなく、3Gモデルに加えて4つ目のGが必要です。4つ目のGは「責任ある成長」を指します。この4つ目のGこそが価値を創造する上で最も重要になるものです。4G経済的モデルは、経済的価値を作るだけでなく社会的価値を生み出す成長です。成功している企業は、事実この4つ目のGを取り込んでいます。この4Gモデルはとてもシンプルです。企業はもはや、社会で起こっていることをただ傍観するだけではいられません。企業は地域社会における自らの役割を果たし、社会に貢献する必要があるのです。なぜなら、社会があるからこそ企業が成り立つからです。

 さらに「両立(and/and)モデル」に移行する必要があります。どうすれば、お金を稼ぐと同時に社会に役立てるか、どうすれば立派な事業をする過程で環境を素晴らしいものにできるか。両立モデルとはすなわち、事業で成功すると同時に社会に貢献することなのです。言うことは易しいが行うのは難しいものです。では、どうすればよいのでしょうか。

 私が信じているのは、両立モデルを成立させるための答えはリーダーシップにあるということです。つまり、企業は新しいビジネスモデルを再定義するということです。それができなければ、もはや事業をする資格がないことにします。そのためには、ビジネスは社会での役割を自ら定義する必要があります。それもより大きな観点から定義すべきであり、自らの商品やブランドという観点からではありません。企業が、真に重要な譲れない目標を持っていれば、情勢が良かろうが悪かろうが関係ないのです。自らが立脚する信念があるからです。価値や目的を定めることでそれらをソフト面での推進力として 明日の企業を創造していきます。

人々の生活を変えるために活動する

 これから話題を変えて、私の経験について少しお話ししましょう。私は1976年にユニリーバに入社しました。インドの管理職トレイニーとしてです。初出勤日に私が行くと、上司は「なぜ君がここにいるか分かるか?」と私に質問しました。それに対して私は「石けんをたくさん売るためです」と答えると、上司は「違う。人々の生活を変えるためだ」と言いました。人々の生活を変えるためだと聞いたとき、私は冗談ではないかと思いました。我々は石けんやスープを販売する企業であって、なぜ人々の生活を変えないといけないんでしょう。しかしそのとき、石けんを売るといった単純な行為であっても、製薬会社より多くの命を救えることもあるということを私は初めて理解しました。

 ご存知かわかりませんが、5百万もの子どもが5歳の誕生日を迎えられません。それは、石けんによる手洗いで予防可能なはずの単純な感染症が原因なのです。私たちは世界で最大規模の手洗い推進運動を展開しています。健康・衛生に関する活動も行っており5億人に働きかけています。石けんを売ること以上により大きな目的があるのです。そしてブランドこそ社会変革の第一線になりうるのです。というのは、20億の人がブランドを使うことでメッセージを広めることになるからです。小さな行為が大きな違いを生むのです。

持続可能な社会を実現するための努力

 別の例を見てみましょう。私はインドの村々を訪ね歩いていました。経験のある方はわかるでしょうが、散歩みたいにたやすくはありません。私たちの小さな販売業者の一つにとある女性がいて、美しくとても質素なご自宅なのですが、そこにいらした彼女は身なりも整っていました。旦那さんはその女性の後ろにいて、お義母さんとお義姉さんがその後に続いていました。つまり、社会的な地位が変わりつつあったのです。というのもこの女性はプロジェクト・シャクティに参加していて、プロジェクトでは女性に事業経営のトレーニングに加え、栄養・衛生に関する啓蒙活動のトレーニングも行っています。

 今インドでは石けんを売るためではなく、啓蒙を行う女性が6万人います。啓蒙活動をすることによって、確実に人々の生活を変えられるのです。小さな行動で大きく変えられるのです。当社の研究開発担当も、ただよく汚れが落ちる洗剤を作るだけではなく、使う水を極力抑える洗剤作りに取り組んでいます。最近販売した商品で言えばすすぎが1回ですむ「ワンリンス」で、洗濯をするたび節水ができます。もし全てのユーザがワンリンスを使えば5千億リットルもの水を節約できます。ちなみにそれは、1つの大陸で使われる1ヶ月分の水に相当するほどの量です。考えてみてください。ここに大きな違いを生む小さな活動があるのです。

 他にも例はあります。宣伝になってしまい恐縮ですが、食品事業の商品であるクノールやヘルマンはとても良い製品です。私たちがお約束するのは、原材料となる農産物すべてで100%持続可能な調達を実現することです。私たちが初めて、すべてのパーム油を持続可能な調達なものに切り替えることを宣言しました。パーム油を持続可能で調達のできるものにしなければ森林破壊を招き、その影響は世界の温暖化ガスの20%に相当するほどと言われます。私たちは初めて100%持続可能な原材料を使った商品を取り入れました。それもすべて、石けんやスープを販売しているからです。

 私が言いたいのは、皆さんや私たちのような企業は、社会的責任を取り込み、私たちが事業をする社会において、自らが役割を担うという理解を体現した目的を持つべきなのです。私たちが導入したビジネス戦略は「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」と言い、「持続可能な生活環境の普及を目的とし2020年までに10億人以上の生活を変えよう」としています。現在の課題は、今後取り組みをどう進めるのかということです。その答えはとても簡単です。私たちだけで世界を変えるのではありません。皆さんを含め、私たちの理念を理解して下さるたくさんの方々がいます。ですからパートナーシップや連携が必要ですし、さらにより重要なのはリーダーシップです。皆が期待するような変革へと導いてくれるリーダーシップです。

 ありがとうございました。(拍手)

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