1. 【全文】「イノヴェイションは尽きることがない」ジェフ・ベゾスが語るインターネットのこれから

【全文】「イノヴェイションは尽きることがない」ジェフ・ベゾスが語るインターネットのこれから

 「IT革命」という言葉を覚えている方はいるでしょうか?2000年台初頭、日本でも多くのIT企業が生まれそして多くの企業が倒産しましたが、アメリカではより深刻なインターネット・バブルを2000年に経験しました。そして、2014年、FacebookやGoogleの決算が大幅に増収増益になり、インターネット・バブルが再来するのではないかという見方も広がっています。

 インターネット・バブルはゴールドラッシュではなく、家電の発明に似ているとAmazonの創業者であるジェフ・ベゾスは言います。ここでは、ジェフ・ベゾスがインターネット・バブル崩壊後に行ったTEDでの講演を書き起こします。

スピーカー

ジェフ・ベゾス/Amazon創業者

見出し一覧

・ゴールドラッシュとインターネット・バブルは似て非なるもの
・現在のインターネットに最も近いのは電機産業の黎明期だ
・これからのインターネットのイノヴェイションに期待

動画

ゴールドラッシュとインターネット・バブルは似て非なるもの

 実は、テクノロジーは想像するよりずっと簡単なことです。この6年間、(編集者註:1997年から2003年までを指す)インターネット業界では数々の驚くべきことが起こりました。決断の仕方や物事への反応の仕方、そして未来への展望の多くは私たちが物事を列挙して分類する方法により決まります。

 インターネットの栄枯盛衰の比較対象として、ゴールドラッシュ(1800年台中期に起きた金採掘ブーム)が挙げられます。インターネットのブームもゴールドラッシュも現実の出来事です。1849年におこったゴールドラッシュによって、約7億ドルもの価値がある金がカリフォルニアから採掘されました。インターネットも人々のコミュニュケーション手段として壮大なブームを巻き起こし、その後派手に崩壊しました。ゴールドラッシュ、そしてインターネットバブルでもたくさんの詐欺が起こりました。インターネットバブルではどんな詐欺があったか言わなくてもご存じですね?「Getrich.com」などです。

 ゴールドラッシュの時も新聞に「ゴールド・ゴールド・ゴールド」などと見出しが載り、「蒸気船ポートランドに68人の金持ちが積み重なった金塊を持って乗船した」「乗組員のほとんどが5千ドル相当以上の金を発掘し、10万ドル相当を持ち出した者も」といった記事を読んで人々は興奮したのです。「米国にも黄金の国エルドラド発見」「尽きることのない金鉱がカリフォルニアに」といった具合です。ゴールドラッシュとインターネットバブルの比較は鮮明です。たくさんの人々が仕事を放り出し、ゴールドラッシュは何年も続きました。

 1849年、初めて金採掘のニュースが東海岸に広まりましたが、誰も金採掘の話を信じませんでした。そして翌年の1850年には次々に金持ちが生まれる話が生まれましたが、まだ信じられませんでした。3年後の1852年には、自分がカリフォルニアに繰り出さなかった愚かさに気づき、東海岸の町ぐるみで10人かた20人ずつのチームを作って会社を設立し、アメリカ大陸を横断したのです。弁護士や銀行員を含めて、スキルを持つ持たないに関係なくほとんどの人が職を離れて金を掘り起こしに行ったのです。

 コールという名の医師もゴールドラッシュで職を離れた人の一人です。彼はフィラデルフィアからパナマ経由で地峡を超えて船に乗り北に向かったのです。一方その頃、トーランドという医師は幌馬車を使いました。ふたりとも名医であったにも関わらず、患者を残してカリフォルニアを目指したのです。同じようにネット・バブルではドクター・クープ(健康情報サイト)が出現しています(笑)

 ゴールドラッシュの噂を聞きつけた人々は船から飛び降りるように殺到しました。サンフランシスコ港では金を探しに行った乗務員が船を乗り捨てたのですが、ピーク時には600隻も港に溢れかえり、残された600人の船長は船をホテルにせざるを得なくなったそうです。サンフランシスコの砦には1300人の兵士がいたのですが、その半数が職務を放棄し金を探しに行ったのです。そしてミイラ取りがミイラになるのを恐れて連れ戻す命令はなかったそうです(笑)

 金採掘に向かった兵士は、家族に宛てた手紙に「金が掘り当てられるかどうかで月給6ドルと日給75ドルの差が出てしまう環境はとても厳しい」と書きました。ゴールドラッシュにより燃え尽きる人々の割合は非常に高かったのです。
 これはクロンダイク金鉱へ続くホワイト峠の道です。ロバや馬に重量オーバーになる程荷物を積んで、きちんとした計画もなく、どこまで行けばよいか当てもないまま人々は進んでいきました。荷物の積みすぎでほとんどの馬は目的地にたどり着く前に死んでしまったことから、「死に馬の道」と呼ばれるようになりました。

 カナダの内務大臣は、「荷馬が数千頭も死んで倒れている。崖の上から落ち、群れをなして荷鞍をつけたまま泥の中でお互いもつれ合っている。多くの荷馬はまだ死んでいないが、息も絶え絶えだ。カラスにえぐり取られてしまったため眼がない馬の死骸に無数のカラスが群がっている。ひどい状況であることはあまり知られていないが、この死に馬の道の残酷な光景は想像を絶するもので言葉にはできない」と書いたそうです。

 馬の死体の臭いはしませんが、インターネットも同様の事態が起こったのです。皆さんの記憶に新しいコマーシャルをお見せしましょう。これは2000年のスーパーボウルの間に放映されたコマーシャルです。


(以下、映像)
女A:「たくさんの招待状が選べると言ったじゃないの」
男A:「その通りですが…」
女B:「じゃあなぜこの人が私の招待状を持っているの?」
男A:「取るに足らない事と思われますが…」
女C:「あなたは私のものよ!」
ナレーション:「皆さんには重大事かも」
男B:「この人あなたの奥さん?」
男C:「15分後にはね…」
ナレーション:「一生に一度の一日なのです。OurBegining.com。イベントを世界に伝えよう」
(映像ここまで)

 このコマーシャルですが、意味不明で何のためのものかよくわかりません(笑) スーパーボウルの間に放映されるコマーシャルなので、この「OurBegining.com」という企業は350万ドルもこのCMにつぎ込んだのです。しかしこの年のOurBegining.comの収入は100万ドルしかありませんでした。

 ここでゴールドラッシュとネット・バブルの比較がかなり食い違ってきます。ゴールドラッシュの場合、金が底をつけばそれで終わりです。当時の新聞の記事を見てみましょう。「ドーソンには現在、ひどく失望した男がたくさんいる。自分の命や健康、そして財産も脅かす危ない旅を数千マイルもして、何ヶ月もの厳しく骨の折れる労働をした。そして、待望の最後のゴール地点で期待が頂点に上り詰めた時には実は何も残っていなかったことに気づかされたのだった。」これはよくある話です。ゴールドラッシュではアメリカの河川領域にある石がわずか2年間ですべて裏返され、その後優れた採鉱技術を持つ大企業が採掘を始めたのです。

現在のインターネットに最も近いのは電機産業の黎明期だ

 インターネットにとって、ゴールドラッシュよりはるかに楽観的な比較対象は電気産業です。インターネットと電気産業間には多くの共通点があります。電気産業は横のつながりで形成された色々な産業の層から形成されており、単体からなるものではありません。

 電気の種類は大変幅広いため、的を絞らなければいけません。電力を供給する素晴らしい手段でありながら、声を伝達できる電話のようなきめ細かい情報まで伝達できるのです。電気産業で起こった革命の中で、電化製品の黄金時代をもたらし、各国に電化製品の導入に乗り気にさせた製品は電球でした。電球が世界の電線を結んだのです。電線を引くとき、誰も電化製品のことは考えておらず、電力というよりは電球を普及させることがメインだったのです。

 電気のインフラ設備の整備には莫大な資産が投じられ、すべての道が掘り起こされました。後のGE(ゼネラル・エレクトリック)の基礎となった「エジソン電気照明」という企業が、莫大な費用がかかる道路の掘り起こし作業に経費を出しました。

 しかし、インターネットとの共通点は設備投資にはありません。ご存じのようにインターネットは長距離電話回線用のネットワークを基盤に構築されました。インターネットブームが起きた1994年、ネットは年間2300%の割合で急成長しました。ネットへの投資が盛んでなかったときにどうやって2300%もの割合で成長を遂げられたのでしょうか?それは広範囲にわたるインフラが既に構築されていたからです。

 実は電球がネットのインフラを構築させたのです。そして家電製品が普及し始め、社会に大きなセンセーションを巻き起こしたのです。最初のセンセーションは、1890年に世に出た扇風機です。電化製品の黄金時代は長期間にわたって続きました。およそ40年から60年間は続いたといえるでしょう。扇風機は大変な成功をおさめました。そしてアイロンも大ヒットしました。ちなみにこれが最初のアスベスト訴訟の始まりです(笑) 取っ手の内側にアスベストが使われていたのです。

 フーバーという家電メーカーから、1905年最初の掃除機「スキナー・バキューム」が発売されました。42kgもの重量があり、2人がかりで動かさねばならない代物で、自動車の1/4ほどの価格で売られていました。これは当然あまり売れませんでしたが、これぞ家電製品の元祖です(笑)スキナー・バキュームは1908年に軽量化され、18kgになったそうです。

 こういった家電製品はヒット商品ではありませんでした(笑)皆ネクタイにシワがよらないように気をつけたせいか、ネクタイのプレス機は一度もヒットしませんでした。靴のドライヤー兼ウォーマーに関しては、カラーリングが6色から選べるにも関わらず、売れませんでした(笑)

 どうして家電製品はヒットしなかったのでしょうか?発明にも流行る時期があります。今がその時かも知れません。ヒットしなかった家電製品でも、スーパーボウルのコマーシャルを適切なパートナーと作ったら今度はヒットするかもしれません(笑)トースターも大きな話題を呼びました。直火でパンを焼いたからです。もちろん時間も労力もずいぶんかかりました。
 ここでひとつ質問です。皆さんこれ(編集者註:上記赤丸部分)が何かご存じでしょうか?当時、電球が挿入されるソケットはまだ発明されていませんでした。当時、電気の回路は家庭に普及していなかったのです。そのため、どの家庭にもあった、天井の電球用のソケットに家電を接続したのです。家庭で家電製品を使うときは、電球を外して家電を接続したのです。

 次に大きな注目を集めたのは洗濯機でした。洗濯機は羨望の的でした。多くの人は洗濯機が欲しくてたまらなかったのです。左側のドラムにせっけん水を入れます。左のドラムには回転するモーターがあり、洗濯ができました。洗濯が終わったら、洗濯物を取り出して右側にあるすすぎ用のきれいな水の入ったドラムへ入れて脱水します。この家電製品は大きな話題を呼んだのですが、玄関先に置いた場合、景観を損ねるだけでなく、長いコードを家の中まで引いて来なければならなかったので大変でした(笑)

 このプレゼンの重要な論点の一つは「停止」ボタンがまだ発明されていなかったことです。家電の「停止」ボタンはずいぶん後になって世に出たのです。ソケットには普段、電球が接続されていたので、洗濯機を使い終わるとプラグから外します。そのため、「停止」ボタンは必要なかったのです。しかし、コンセントもまだ発明されておらず、洗濯機は危険を伴う製品の一つでした。髪の毛や衣服が挟まっても機械を停止することがコードを抜かない限りできないからです。今でもぞっとするような話が調べてみるとたくさん出てきます(笑)

 「停止」ボタンを付けず、電球のソケットにコードを接続していたとはなんて昔の人は愚かだったんだろうとお思いでしょう。しかし、非難することはできません。私の会議室をお見せしましょう。
 これはひどい状態です。コンセントが逆さまに設置されており、コードがすぐ落ちるのでテープで止めました(笑) これは最悪の光景ではなく、私の机の下のいつもの様子です。2日前に撮った写真です。一見まぬけな家電製品があった1908年より大して進歩していないのです。
 ひどい散らかりようですがこれでも進歩しているのです。無線LANを自分で設置しようとしたことはありますか?やってみて下さい。難しいですよ。

 それではモデムを家に設置するときはどうでしょうか?実は日々モデムを家庭に設置する技術者でさえ、うまくモデムを設置ことはできないのです。通常3回も技術者が訪問しなければ設置することができません。友人から聞いた話ですが、技術者が3回も出直した挙句、客の家で1時間も待機をしなければならないこともあるようです。昔の人はずいぶんとアナログでしたが、私達もアナログな生活から進歩できていないようです。

これからのインターネットのイノヴェイションに期待

 まだこの時代になっても多くのことが本当に原始的だということが私の主張したいポイントです。ゴールドラッシュは最後の金塊がなくなれば終わりですが、イノヴェイションは尽きることはありません。新しいものをつくる度に改善点に気づき、それがまた新しいチャンスになるのです。

 私たちがインターネット業界で立っている地点はまだ原始的だと言えるでしょう。ネットのUIはまだまだゴチャゴチャしたシステムだらけです。私達はインターネットでハーレーの洗濯機と同じ地点に立っているのです。髪の毛が挟まる危険はありませんが、1908年と同じような原始的な地点に私達はいるのです。今立っている地点が原始的だと言えると信じることができれば、「トラブルが続出するネットに接続する価値なし」、「Amazon.toast(Amazonはもうおしまいだ)」「Amazon.bomb」というようなマスコミの見出しや批判も気にならないでしょう。

 私は1908年のハーレー洗濯機と現在のインターネットは同じ地点にいると思います。今まで起こったイノヴェイションよりも今後のイノヴェイションの方が多いと信じています。最後に1917年のシアーズ(アメリカの百貨店)の広告を見てみましょう。「電気を照明以外にも活用しよう」。これが私たちの今の地点なのです。まったく初期段階に私たちはいるのです。

 ありがとうございました。

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