1. Gunosyは新しい民衆主義を創るかもしれない:「メディア生態系」の未来を語る

Gunosyは新しい民衆主義を創るかもしれない:「メディア生態系」の未来を語る

by Kartik Malik
 毎日、自分に合った情報やネットで話題となったニュースや記事を集めてきてくれるキュレーションサービス。最近では、多種多様なキュレーションサービスがそれぞれ特徴を打ち出し、そのユーザー数やアクティブ率を争っています。今後のキュレーションサービスはどうなっていくのでしょうか?そして、キュレーションサービスはどのような役割を果たしていくのでしょうか?

 ここでは、ニュースキュレーションサービス「Gunosy」を開発・運用する株式会社Gunosyが行ったメディア向けイベント「コンテンツ×メディア×キュレーション」のパネルディスカッションをまとめていきたいと思います。

スピーカー

(パネラー)
佐々木俊尚氏 / ジャーナリスト・評論家
田中裕士氏 / 株式会社 文藝春秋 ウェブ事業部長
乗峯滋人氏 / 毎日新聞社 「毎日.jp」編集長
福島良典氏 / 株式会社Gunosy 代表取締役CEO

(モデレーター)
竹谷祐哉氏 / 株式会社Gunosy 取締役COO

Web業界に「10年に一度の大きな転換期」がやってきた

 「キュレーションメディアについてどのような意見を持っていますか?」という問いに対し、パネラーの佐々木氏、田中氏、乗峯氏の3人が答えました。

 まず、コンテンツホルダーでもある、田中氏と乗峯氏。

 毎日新聞社の乗峯氏は、 「新聞もある意味『キュレーションメディア』。毎日新聞ができない役割をキュレーションメディアがしていて正直悔しい。『やられた』というのが正直な感想」と述べ、文藝春秋の田中氏は、 「紙媒体から派生してWebを運営しており、移行に苦労することも少なくない。そのなかで、移行をスムーズに行う手助けをしてくれるキュレーションメディアの存在には助けてもらっている。コンテンツホルダーは各キュレーションメディアに合わせて記事の内容を調整している」と発言しました。

 コンテンツホルダーはキュレーションメディアに対して、あまり好意的ではないのかもしれないと思っていましたが、実はキュレーションメディアがコンテンツホルダーに対してPV数やソーシャルでの拡散面でメリットを多くもたらしているようです。これからはコンテンツホルダーとキュレーションメディアの両者が歩み寄る形で、共存を目指した動きが増えてくるのかもしれませんね。

 一方、「キュレーション」という言葉を一般的なものにした佐々木俊尚氏は、キュレーションメディアの置かれている現状について説明しました。

 「今のメディアとWebには2つの大きな潮流がある。1つ目がパソコンからスマートフォンへの移行。2つ目はYahoo!のようなポータルサイトからFacebookなどのソーシャルへの移行。まさに今は10年に一度の大きな転換期で、パソコン時代にポータルサイトとしてニュースのキュレーションを行ってきた「Yahoo!ニュース」と「Yahoo!トピックス」の立場を、今度はキュレーションメディアが担うだろう。ゼロベースから始まったキュレーションメディア業界の中で、ユーザーのプラットフォームとして機能が現れたとき、そのキュレーションメディアが『王者』になる。」

 近年、パソコンより、スマートフォンの利用時間が長くなったというニュースを目にすることが増えました。時代はパソコンからスマートフォンにシフトし、それと同時に、TwitterやFacebookからニュースやサイトにアクセスする時代になったというのが現状のようです。現在多種多様にあるキュレーションメディアも、今後はユーザーを多く獲得した1つのアプリに絞られていくのでしょうか。

メディアのPV数を稼げるのはやはり「ゴシップ」ネタ

 「自社媒体で最もウケたコンテンツは何ですか?」という問いに対しては、コンテンツホルダーの田中氏、乗峯氏が回答しました。

  「STAP細胞関連のニュースは話題になり、特に『STAP研究に協力、小保方さん大歓迎』という記事はFacebookのいいね!が5万以上も集まった」と乗峯氏。一方で「 山中教授の記事はSTAP細胞発見のニュースの直後に出たものだったが、疑惑が発覚した後に拡散されてしまった。ネットでは過去の発言もアーカイブ化してしまい、拡散されたものが事実と異なってくる場合もあるので、『火消し』が大変なことがある」とネットメディアならではであるコンテンツ管理の大変さも語りました。

 雑誌メディアの立場から、 「文藝春秋では、実は『ウケ』を重視していない」と語る田中氏。

「『週刊文春』の芸能ネタは確かに拡散しやすいが、実はソーシャルからのコンテンツへの流入はそれほど多くないのが現状。雑誌サイトはPVやソーシャルでの拡散よりも、タイアップ広告の展開がメインであり、PVやソーシャルよりも自社メディアのイメージや記事の質を重視している。」

 より多くのPVやソーシャルからの流入を考えたとき、やはりメディアの根幹となってくるのは、どうやら大衆ウケが良い芸能やスキャンダルなどの「ゴシップ」ネタの記事のようです。

ネタだけではなくユーザーが記事を読むシチュエーションを考慮

 「デジタル時代ならではの記事を読んでもらうための工夫はありますか?」という問いには、まず佐々木氏がこれからのメディア運用に関して、気をつけたい点を2つ述べました。

  「1つ目に気をつけたいのは、スマートフォンのユーザーは表示が最適化していないサイトはそもそも読まない。パソコン用のサイトを表示しているようではダメ。

 もう1つ留意すべきこととしては、これから意識すべきなのは、『運営形態がソーシャルなのか?それともネイティブアプリなのか?』ということ。キュレーションメディアはネイティブアプリでDL数を競っているが、バイラルメディアはFacebookやTwitterの拡散を狙っており、自分のプラットフォームを作るのかそれとも他のプラットフォーム上で戦うのかがこれからのメディアでは重要なポイントになる。」

 佐々木氏の「ソーシャルなのか?ネイティブアプリなのか?」という発言に付け加える形でGunosy 福島氏が発言しました。

  「Gunosyのメインユーザーはソーシャルを利用しない層。Gunosyは記事を個人向けにピンポイントに届けるため、バイラルメディアとは異なってくる。ソーシャルで拡散することに向いていない記事もGunosyではユーザーに届けられるのが強みになるだろう。

 バイラルメディア・キュレーションメディアが読まれているのは、通勤など、今までメディアに触れていない時間。そのような『スキマ時間』で、どのようなコンテンツを読むのかを考えることが重要になる。たとえば、バイラルメディアは動画を静止画で紹介して解説を加える、TVのバラエティ番組のようなコンテンツを用意し、ユーザーの時間の使い方に合わせている。」

 通勤時間にキュレーションサービスやバイラルメディアを使うことが多いという実感がある私としては、確かにユーザーがどのようなシチュエーションで、どのようなことを考えながらメディアを読むのかを考えながら、記事を作ることは非常に重要になると感じました。

これからのキュレーションサービスはどうなるのか?

 パネルディスカッションの最後は、「これからのGunosyに期待することは何か?」という質問で締めくくられました。

 乗峯氏と田中氏はそれぞれコンテンツホルダーとしての期待を示しました。

  「キュレーションメディア業界では1つの企業しか勝てない。Gunosyにもトップを目指して欲しい。」(乗峯氏)

 「ネットのコンテンツは同じものばかりで、『釣りタイトル』の記事を読んでガッカリしてしまうなど、ユーザーはメディアの記事にイライラし始めている。ユーザーと記事のマッチングを可能にするGunosyがユーザーがイライラしてしまう問題を解決してくれれば。」(田中氏)

 佐々木氏は、キュレーションサービスが世界を変える大きな構想を語りました。

  「Yahoo!ニュースはユーザーが知りたい情報だけでなく、伝えなければならない情報も伝えるようにしなければならなかった。それは多くの人にインフラとしてのメディアの役割を果たさなければならない『公共圏』をYahoo!ニュースが持っていたから。

 キュレーションメディアの公共圏を握るのはおそらく一社。Gunosyはその1つの候補として期待したい。『どうやって公共圏を社会に利用するのか』をしっかりと考えぬくことができれば、新しい民主主義の可能性も開けてくる。」

 ユーザーが何気なく利用しているキュレーションサービスの裏では、社会を変えるかもしれないという自負を持って記事の作成や、ピックアップが行われているようです。これからのメディアの新しい形として、そして、社会を変える媒体としてキュレーションサービスの今後にも期待していきたいところです。

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