1. 【全文】「塔を建て、チームを作る」:簡単なグループワークが示すチームワークと成果の関係

【全文】「塔を建て、チームを作る」:簡単なグループワークが示すチームワークと成果の関係

 ビジネスをしていく中で、「周りと協調することが大切だ」という話を聞いたり、リーダーシップやチームワークについて学んでいる方も多いことでしょう。しかし、チームワークと成功の関係について、私たちはしっかりと考えたことがないのかもしれません。

 ここでは、チームワークと成果の関係性について、「マシュマロ・チャレンジ」という簡単なグループワークを用いて検証した内容と考察を、クリエイティブディレクターであるトム・ウージェックが語った内容を書き起こします。

スピーカー

トム・ウージェック/クリエイティブディレクター

見出し一覧

・チームワークの本質を示す共同作業「マシュマロ・チャレンジ」
・「マシュマロ・チャレンジ」の達人は建築家と…幼稚園児!?
・あなたの仕事の中にも「マシュマロ・チャレンジ」はある

動画

チームワークの本質を示す共同作業「マシュマロ・チャレンジ」

 数年前のTEDで、ピーター・スキルマンというデザイナーの方が「マシュマロ・チャレンジ」というデザインの課題を紹介してくれました。ルールはとても単純です。4人のチームが20本のスパゲッティと90センチずつのテープとヒモ、そしてマシュマロを使ってできるだけ高い自立式の建造物を作るのです。その建造物の一番上にはマシュマロを乗せなければなりません。聞いていると簡単そうですが、チームのメンバーとの素早い協力が要るので、実はかなり難しいのです。「これは面白い」と思って、私はデザインの講習に組み込んでみました。結果は大成功でした。それ以来世界中で70回ぐらい「マシュマロ・チャレンジ」を行っています。学生やデザイナーや建築家、そしてフォーチュン誌が発表する「世界で最も賞賛される企業 ベスト50」に選ばれる企業のCTOまでが参加しています。マシュマロ・チャレンジには、共同作業の本質に関わる深い教訓が含まれています。その一部をご紹介しましょう。

 通常、多くの人々は課題の確認から取りかかります。課題について話し、どんな形にすべきか検討し、主導権争いをします。それからしばらくは計画と準備に時間を割きます。スケッチを描き、スパゲティの配置を決めます。持ち時間の大半はスパゲッティを組み立てて建造物を高くすることに費やされ、終了時間の間際になってようやくマシュマロを取り出して慎重にそれを一番上に置き、後ろに下がって自分たちの作品を褒め称えます。しかし、多くの場合はマシュマロの重みで建造物全体がひしゃげて潰れてしまい、最終的な結果は残りません。

「マシュマロ・チャレンジ」の達人は建築家と…幼稚園児!?

 ある種の人々は、他の人と比べてみても失敗をしやすい傾向にあります。特にひどいのはビジネススクールの新卒者です(笑) 嘘をつき、ズルをし、気を散らせて本当にひどい建造物を作ります。その反面、成功する機会が多いグループもあります。上手なのは幼稚園の年少の児童たちです(笑) 本当に驚くべきことです。幼稚園児たちは高いだけでなく、一番面白い建造物を作ります。

 誰もが、「なぜ幼稚園児は成功しやすくて、ビジネススクールの新卒者は失敗するのか」と疑問に思うでしょう。ピーターは「子どもたちは誰も『スパゲッティ株式会社』の社長になろうなんてしていないのです」と言います。幼稚園児たちは、権力争いで時間を無駄にはしません。別の理由もあります。ビジネススクールの学生たちは、適切なプランを1つ見出すように教育されています。そして、プランの通りに実施します。彼らがマシュマロを一番上に乗せる頃には時間がなくなっています。そして危機が起きるのです。誰もが聞いたことがあるような状況ではないでしょうか?幼稚園児たちがビジネススクールの学生と違っているのは、マシュマロから始めるところです。園児はいつもマシュマロを一番上に置いて次々と試作品を作ります。そのため、出来の悪い試作品を何度も修正できるのです。デザイナーの方なら、試作品を作り続ける作業こそ、反復型プロセスの本質だと気付かれるでしょう。作るたびにフィードバックが得られ、上手く行く点、もしくはうまく行かない点がすぐにわかります。

 試作品を作る能力は本当に重要なのです。チームのタイプごとの成績を見てみましょう。全体の平均は50センチくらいです。しかし、ビジネススクールの学生はその半分ぐらいの成績で、弁護士はそれよりはましですが平均以下です。幼稚園児はほとんどの大人たちよりも優れています。それでは一番良くできたのは誰でしょう?建築家とエンジニアです。この結果には少しほっとしますね(笑) 今まで見た中では99センチが最高記録です。なぜ建築家とエンジニアは高い建造物が出来るのでしょうか?建築家とエンジニアは、安定した建造物を作るには三角形をつくること、そして自己強化する幾何学構造がキーポイントになることを知っているからです。CEOたちは平均よりも少し良い結果を出しています。面白いことに、チームに管理責任者を置くとCEOの成績は著しく上がります(笑)

 私は、全体を見回したときに「あそこが勝つな」と終わる前からわかるようになりました。どうしてでしょう?管理役の人々は「ファシリテーション」という特殊技能を持っているからです。管理役の人はプロセスを理解し、管理します。どのチームであれ、作業を注意深く観察し、管理すればパフォーマンスを大幅に向上させることができます。特殊技能とファシリテーションの技能、そしてその組み合わせが大きな成功へと導くのです。ごく普通の10チームがあったとすると、およそ6チームは自立することができる建造物を作るでしょう。

 あるとき、私は面白いことを試してみることにしました。優勝チームへの賞金を上げようと思ったのです。優勝チームには1万ドル分のソフトウェアを贈ることにしました。すると、デザインを学ぶ学生たちに何が起きたと思いますか?なんと、少しでも高さのある建造物を作れば優勝できたのにも関わらず、1チームとして立っている構造体ができなかったのです。高額賞品の存在が悪い影響を生むというのは面白いですね。4ヶ月後、同じ学生たちにもう一度演習をさせました。今回はどうなったと思いますか?彼らは試作品を作ることの重要性を理解し、最低の結果を残す集団から、歴代でもトップクラスの成績を残す集団に変わったのです。最小限の時間で最も高い建造物を作りました。ここに動機づけと成功の性質についての重要な教訓があります。

あなたの仕事の中にも「マシュマロ・チャレンジ」はある

 ここまで聞いた人は、「どうしてマシュマロ・チャレンジをやるのか?」と疑問に思われるかもしれません。私がマシュマロ・チャレンジを続ける理由は、私の仕事がデジタルツールやプロセスを作り、車やゲームや視覚効果の制作者たちを手助けすることだからです。そして、マシュマロ・チャレンジは彼らが隠れた仮定を見出すのに役立つのです。なぜならば、実のところどんなプロジェクトにも固有の「マシュマロ」があるからです。この課題を通し、適切な試作をするための共通の体験、共通の言葉共通の態度が築かれるのです。それが、この実に単純なマシュマロ・チャレンジの価値なのです。

 興味を持った方は marshmallowchallenge.comをご覧ください。マシュマロの建造物の建て方を見ることができます。そして、マシュマロ・チャレンジを行うための手順が書かれています。世界中の人が創意工夫した例を見ることができます。なんと、世界記録もあります。

 根本的な教訓として、デザインは人と人との触れ合いであることがわかるでしょう。作業に全ての感覚を投入することを要求され、自分の最高の思考と感性、そして行動を適用し手にした難問に向かう必要があります。ちょっとした試作を行うだけで、失敗を成功に変えられることもあります。そして、失敗が成功に変わることは大きな変化を起こし得るのです。

 どうもありがとうございました。

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