1. 【全文】Facebook COO・サンドバーグが語る、「LEAN IN」出版後に起こった変化

【全文】Facebook COO・サンドバーグが語る、「LEAN IN」出版後に起こった変化

FacebookのCOOである、シェリル・サンドバーグ。キャリアウーマンとしてのイメージが強いサンドバーグですが、女性の社会進出について伝説的なスピーチをTEDで行い、女性の社会進出についてまとめた本「LEAN IN」はベストセラーになりました。しかし、女性の社会進出はまだ達成できていないとサンドバーグは語ります。ここでは、サンドバーグが感じたプレゼンや出版後の変化を語ったTEDでの対談を書き起こしていきます。

スピーカー

シェリル・サンドバーグ氏/Facebook・COO
パット・ミッチェル氏/The Paley Center for Media(テレビとラジオの博物館)・CEO兼社長

見出し一覧

・女性についてのプレゼンをするとき、周りの反対意見は無視した
・行動して意見を表明しなければ全ての問題は解決できない
・女性が「威張っている」という偏見をどんどん無くしていきたい
・「LEAN IN」が産んだ新たな繋がり
・「フェミニスト」は復活させなければいけない言葉

動画

女性についてのプレゼンをするとき、周りの反対意見は無視した

パット・ミッチェル氏(以下、ミッチェル):TEDでの講演をお受けいただいたとき、ソーシャル・メディアについてお話されるものだと思っていましたが、意外にもあなたの心にあったのは技術やソーシャル・メディア分野で特に欠けている、女性がリーダーになることについてでした。あなたの中で女性がリーダーになることについて、どのようにして昇華され、あのTEDのトーク( 「なぜ女性のリーダーは少ないのか」)に結び付いたのでしょうか?

シェリル・サンドバーグ氏(以下、サンドバーグ):当時、TEDで女性について話すのは勇気がいることでした。私はずっとビジネスの世界で生きてきたこともあり、女性についての話は決して言わないようにしているんです。自分が女性だと相手に気付かれると困るんです。「女性」について言及したときは特別な待遇を求めているとか、不満を言っていると思われかねません。さらにはセクハラで訴えようとしているのではないかと思われることもあります(笑) ですから、私はそれまでビジネスでは一度も女性であることに触れたり、公の場で話したりしたことはなかったんです。同時に、女性であることについて触れるのは良くないことであるということにも気が付いていました。

私が大学を卒業したとき、同期に女性社員はいたものの上司は全員男性でした。でも男性ばかりだという状況もいつか変わるはずだと思っていました。私達よりも上の世代が道を切り開いてくれたおかげで、私たちは平等を手に入れたのですから。でも状況は一向に変わらなかったんです。時間が経つにつれ女性の仕事仲間は減っていき、今では会議室で女性は私一人だと気付くことがあります。様々な人に「TEDWomenで女性について話すべきか?」と意見を聞きました。ほとんどの人の答えは「話すべきではない」で、「キャリアが台無しになる」「企業の幹部がすることじゃない」「まともに取り合ってもらえなくなる」と言われました。幸いなことに、誇るべき支持者も少数いました。ですから、自分に質問したのです。私の上司であるマーク・ザッカーバーグ(Facebook設立者)が私たちに投げかけるように、「怖がらなければ、何ができる?」と。私の答えはTEDのステージに立ち、女性やリーダーシップについて話すことでした。そしてうまく切り抜けました。(拍手)

行動して意見を表明しなければ全ての問題は解決できない

ミッチェル:切り抜けただけではないでしょう?あのプレゼンのときのことですが、二人で舞台裏にいたとき、あなたは私にある話をしてくれました。本番直前、私はその話をステージ上でもするように言いました。そのときの話をもう一度してくれませんか?

サンドバーグ:私にとって、そのエピソードは非常に重要でした。当初、TEDWomenはワシントンD.C.で開催されていて前日に飛行機で移動したのですが、3歳の娘が私の足にしがみついて「行かないで」と言うんです。実は、TEDで予定していた講演は事実や数字のことばかりで、個人的な話は一切しないつもりでした。私はミッチェルに「今日はすごく辛いわ。昨日、娘が足にしがみついて『行かないで』って泣くのよ」と告げました。するとミッチェルは「その話をTEDでもしなさい」と言いましたが、私は「TEDのステージで自分の話をするなんて冗談でしょう?」と思いましたが、あなたは話すべきだと言ったんです。女性のリーダーを増やしたいなら、リーダーでいることがどれだけ大変なことかを正直に話すべきだと言っていましたね。それで、私は娘の話をして、そのことが重要な転換点になりました。

「LEAN IN」を執筆していたときも似たようなことがありました。第1章ができあがり、出来ばえに満足していたときのことです。出来上がったものはデータと数字が大量に含まれていたもので、3ページもデータに費やしていました。夫はそれを読んで「もうお腹いっぱいだよ」と言ったんです(笑) 誰もデータが大量に入っている本なんか読みませんよね。それで、もっとオープンに私自身の話をしなければいけないと気付きました。ここぞという場面で自信が持てないことや、離婚したことや職場で大泣きしたこと、今でも疎外感や後ろめたさを覚えることも書いていきました。私の取り組みはTEDに始まり、「LEAN IN」の出版や女性支援の団体の設立につながりましたが、重要なことは課題に対してよりオープンであることです。自ら行動を示すことで、他の女性にもアクションを起こしてもらい、真の男女平等に向けて皆で一緒に歩んでいけるようにするのです。

ミッチェル:あなたの本が人々の心を打ち、世界中で反響を読んだ理由の1つは、他の女性が知っておくべきとても重要なことを理解し、多くの女性に共通する課題を自ら経験したことをさらけ出しながら書いているからではないでしょうか?様々な壁や考え方に違いがある人とも向き合う中での経験です。

あなたは、プライベートな部分もさらけだすと決め、今や女性の社会進出についての問題を解決するいわば専門家のような立場になりましたが、その立場のことについて伺えますか?

サンドバーグ:TEDでプレゼンをした後、まさか本を書くとは思ってもいませんでした。私は作家でも文筆家でもないですから。TEDのプレゼンは何度もインターネットで再生され、人々の人生に影響を与え始めました。ある日、私はとある女性の方から素晴らしい手紙を受け取りました。その手紙によると、彼女は職場での大きな昇進の機会を断り、昇進を断ったことを親友にしたところ、私のプレゼンの動画を強く勧められて実際に見たそうです。そして翌日、彼女は1度は辞退した昇進を受け、帰宅後は夫に買い物リストを渡したそうです(笑) 彼女は「私にもプレゼンと同じことができるんだ」と思ったのではないでしょうか。

私にとって重要だったのは、影響を与えたのがキャリアウーマンだけではなかったことです。ビジネスの世界からも色々な声を頂戴し、多くの方に影響も与えましたが、それとは違う環境にいる人々にも影響を与えていたのです。ある医師とお会いしたときのことです。ジョンズ・ホプキンス病院で指導医をしている彼は、私のTEDトークを見て初めて気付いたそうです。彼が指導する医学生の半分は女性だというのに、回診のとき女性は男性より発言をしていなかったのです。彼が注意して見ていると、質問をしても手を挙げるのは男性だけでした。そこで、彼は女性にもっと手を挙げるように言いました。しかし、効果はありませんでした。そこで挙手方式はやめて、回答者を指名していくと宣言しました。これなら男性も女性も平等に回答の権利を得ることが出来ます。すると、女性は男性と同じかそれ以上の出来でした。平等に機会を与えることで、きちんとした評価を女性にも伝えられるようになったそうです。

また、とある専業主婦の女性は近所に良い学校がないことを悩んでいました。会社勤めの経験はないものの、彼女は私のプレゼンに刺激を受けて学校に行き、子供のために良い先生を雇うよう交渉を始めたのです。

あのとき、私はきちんと意見を表明しようとしていたのだと思います。女性も男性もプレゼンを通じて、明確に意見を表明することができるようになりました。明確な意見を表明できるようになったので、私はTEDの後、執筆に取りかかったのです。

女性が「威張っている」という偏見をどんどん無くしていきたい

ミッチェル:本にも明確に強く表れている通り、あなたは明確に意見を表明しました。でも、本ではあなたが学んだことだけでなく、他の人の経験も共有してくれましたね。皆の意見を共有してくれることこそ私が考えていたことで、あなたが「LEAN IN」(一歩踏み出すこと)の専門家になったという意味があると思います。単に本がベストセラーになり、TEDの人気プレゼンを世に出しただけでなく、新たなムーブメントも起こしました。職場での行動を文字通り「LEAN IN」と言うようになったんです。「LEAN IN」が新しいムーブメントになったことに関して、あなたはどのように感じましたか?そして、あなたの人生にはどのような意味をもたらしましたか?

サンドバーグ:とても嬉しく光栄に思います。新しいムーブメントが起きたときは、まさにスタート地点で、まだ自分が「LEAN IN」の専門家か、そもそも専門家がいるのかはわかりませんが徹底したリサーチを行いました。あらゆる研究に目を通し、資料もじっくり読みました。資料が示している教訓はとても明白なものでした。世界中で女性をリーダーから遠ざけているのは、ステレオタイプだということが理解出来ました。

衝撃的なことに「LEAN IN」はグローバルで通用する話です。世界各地で「LEAN IN」について話をしました。当然各国で文化は違います。国内でさえ文化が異なりますし、国が異なれば文化は当然違います。でもジェンダーについて言えば同じです。世界中のどんな文化においても男性は強く、積極的で発言力があるものだとされていて、女性は求められたときだけ話し、他人を助けるものだとされます。そして、世界中で女性は「威張っている」ようだと言われます。どの言語でも女性には「威張っている」という表現がありますが、「威張っている」という言葉は男性には使いません。仮に男性がリードしていても否定的な表現はありません。当然のことだと見なされているからです。でも女性がリードしているならそれは「威張っている」と言われます。会場の男性を男性代表だとしましょう。職場で積極的過ぎると言われたことのある方はいますか?この質問をするといつも手を上げる人は少ないんです(笑) 5%ぐらいの人が手を上げるでしょう。それでは、女性の方で職場で積極的過ぎると言われた方はいますか?(笑) 世界中どの国で聞いても多くの女性が手を上げました。データに裏付けされているのです。果たして女性は男性よりも積極的なのでしょうか?もちろん違います。単に色眼鏡で人を見ているだけです。仕事で成果を出し、リーダーシップを発揮する姿は、それが男性であれば「リーダー」に見られますが、女性なら「威張っている」と見なされるのです。幸いなことに偏見を持っていることを認めることで、私たちは変わることができます。

「LEAN IN」の取り組みを通じて最高に幸せと感じたひと時は、「LEAN IN」の出版後、シスコシステムズのCEOであるジョン・チェンバースとステージに立ったときです。「LEAN IN」を読んでくれた彼は、共に登壇し、女性もいる経営陣の前で「私たちは偏見がないと思っていました。でも『LEAN IN』を読んで気が付きました。女性の管理職は積極的過ぎると私達の会社は偏見を持っていました。この場でお詫び致します。同じことはもう繰り返さないと約束します。」と謝罪したのです。

ミッチェル:その発言は、知人全員にシェアしたいぐらい素晴らしい物ですね。(拍手)

サンドバーグ:ジョンの発言は、会社のためを思ってのことです。偏見を認めるからこそ、人や会社は変わることができるのです。ですから、誰かが女性を「威張ってる」と言っていたら、その人のところに行き、満面の笑みで「その子は威張ってないですよ。経営者並みのリーダーシップがあるだけです。」と言ってあげましょう(笑) 

「LEAN IN」が産んだ新たな繋がり

ミッチェル:あなたが「LEAN IN」を書いた理由は、人々の対話を促すためでした。つまり、問題を明らかにして事実に向き合おうということです。これだけ社会進出の門戸が開かれ、たくさんの機会がある時代に、女性はまだリーダーから遠い場所にいるという事実があります。「LEAN IN」が出版されてから数ヶ月が経ちました。「LEAN IN」では女性がリーダーから遠い場所にいるという現状に焦点を当て、残っている課題を自分の問題として捉え、自らを見つめ直すべきだと提言しました。「LEAN IN」を出版した後、対話や問題に向き合う姿勢の変化は見られたでしょうか?

サンドバーグ:確実に人々の対話は増えていて素晴らしいことです。でも皆にとって、本当に大事なのは「行動」です。どこに行っても多くの男性CEOの方々に「君のお蔭でお金がかかるよ。多くの女性が男性と同じ給料を要求するからね。」と言われます。私は「少しも悪いことだとは思わないですけどね。」と言い返しています(笑) 女性は男性と同じ給料で当然です。行く先々で女性から「昇給を求めようと思う」と聞きます。また一方で「夫婦関係が良くなっている」「家事をもっと助けてもらって、仕事でも昇進を求めていこうと考えている」と聞きます。重要なのは自らを信じることです。小さなことでもいいんです。ある州知事には、女性の多くが文字通り部屋の隅に座っていることに気付かなかったと言われました。今では、女性スタッフ全員をテーブルに着かせるように決めたとその州知事は言っています。

本の出版に合わせて立ち上げた団体の「LEAN IN」は、女性や男性の小さなサークル作りを手助けしています。人数は何名でもいいのですが、皆で1ヶ月に1回会うのです。500のサークルができ、総勢5000名いる団体になれば最高だと思っていました。実際は、世界50ヶ国で1万2000以上のサークルができています。私は、毎月欠かさずに会合を重ねる、あるグループに会いに行きました。そのグループは30歳前後の女性の集まりで、北京初の「LEAN IN」サークルでした。グループの内、何人かはとても貧しい田舎の出身です。彼女たちは、まだ結婚していないため世間では「残り物」と言われています。月に1度の集まりを重ねることで、彼女たちは「自分探し」をしています。キャリアプランや、どんなパートナーがほしいかなどの計画について話し合っています。グループのメンバーは順番に自己紹介を始めました。私は「シェリル・サンドバーグです。これが私の夢でした。」と言って泣き始めてしまいました。私は涙もろいんです。世界の中心から遠く離れた、田舎の村で育った女性は、これまで結婚したくもない相手と結婚するように言い聞かされてきました。でも、今は月に1度仲間に会い、世間が押しつけるものを拒んで自分なりの人生を探すことができています。これこそ私たちが望むべき変化です。

ミッチェル:「LEAN IN」のメッセージが世界共通であることに驚かされたことはありますか?「LEAN IN」が世に出たとき、多くの方が「これは若い女性が人生を歩む上で大切な教科書になる」と考えたと思うんです。若い女性こそ、問題に向き合って来たる困難を予想して認識し、包み隠すことなく話し合わないといけません。「LEAN IN」は、まさに問題と向き合い困難を解決するために話し合う女性や、キャリアウーマンのための本です。今や「LEAN IN」は田舎や開発途上国でも読まれています。本を出版したことで何か驚いたことはありますか?きっと新しい発見があったでしょう。

サンドバーグ:「LEAN IN」では自信と平等について書いていますが、やはり世界中の女性はもっと自信を持つ必要があるのです。世間は、私たち女性は男性と違うと言います。世界中どこでも、男性は仕事と家庭を両立できるのに、女性はどちらかだけしかできないと言われてしまいます。どうやって仕事と家庭を両立させているかなんて男性は聞かれないでしょう(笑) ここで再び会場の男性陣に質問です。どうやって仕事と家庭を両立させているか聞かれた人はいらっしゃいますか?(笑) それでは女性の皆さん、どう両立させているか聞かれた方はいらっしゃいますか?(多くの人が手を上げる)男性は仕事と家庭の両立ができて当然なんです。仕事をしながら子供も持つことができます。でも女性は両立できないとされます。おかしなことです。アメリカを含め、世界中の大多数の女性はフルタイムで働き、さらに子供もいるんですから。仕事と家庭を両立できないことの重大さを、皆さんは本当に理解していないのです。

マイアミで元セックスワーカーのための集まりができました。彼女たちには「LEAN IN」を活用して、未来のある人生に戻れるように支援をしています。彼女たちを売春あっせん業者から助けるのです。テキサスの「Dress for Success」という団体では、「LEAN IN」の書籍を使って、高卒女性の就労支援をしています。遙か彼方のエチオピアにも「LEAN IN」のサークルがあります。こうした平等のメッセージはどれほど「女性だから無理」と言われているか、そしてどれだけ「リーダーや発言権は男性のものだ」とされているかを明らかにし、私たち全員に影響を与えるもので、とても普遍的なことだと思います。TEDWomenもそうですが、メッセージを発することで多くの女性が大きな声で主張しようになり、より平等が実現する社会にしたいという目標に向けて私たちを結集させてくれます。

「フェミニスト」は復活させなければいけない言葉

ミッチェル:またTEDWomenの講演に招かれたとしたら、経験や取り組みから何を得て、女性 そして男性について何を学んだと話しますか?

サンドバーグ:今はより強く言えるようになったと思いますが、現状に甘んじてはいけないことです。現状では女性をリーダーにするという目標はまだ不十分で、変化の速さも十分ではありません。プレゼンや「LEAN IN」の出版後、米国の国勢調査の新しい統計が出ました。結果はどうだったと思われますか?米国における男女の賃金格差は少しも変わっていません。男性が1ドル収入を得るのに対し。女性は23セントもの収入格差があり、もし黒人女性なら36セント、ラテンアメリカ系女性なら46セントも収入格差があります。最後に格差が縮まったのはいつのことでしょう?それは2002年のことです。それ以来ずっと停滞しているんです。私たちは格差が無くならない現状を直視していないと思います。格差には様々な理由があるでしょう。ジェンダーについては話しにくいことですし、本当は受け入れるべきなのに「フェミニスト」という言葉も敬遠しがちです。ここは強調したいと思いますが「威張っている」という言葉をなくして、「フェミニスト」という言葉を復活させるべきです。「フェミニスト」は必要なんですから。(拍手)

ミッチェル:私たちは皆、もっと踏み出さないといけませんね。もっと前へ踏み出しましょう。シェリルさん、先陣を切って一歩を踏み出してくれてありがとうございました。(拍手)

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