1. 東南アジア支援政策を巡る日中の攻防戦。中国の新戦略AIIB構想とその思惑とは?

東南アジア支援政策を巡る日中の攻防戦。中国の新戦略AIIB構想とその思惑とは?

by theglobalpanorama

 東南アジアへの支援を巡る情勢

 現在、成長著しい東南アジア地域を巡り、ASEAN諸国を自らの側へ引き寄せようと日中が必死になって競い合っています。そんな中、ミャンマーの首都ネピドーで、日本、中国、ASEAN諸国による会議が開かれました。

ネピドーで9日、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国などの関連外相会議が開かれ、日中両国が、経済的な支援や経済連携を巡り、つばぜり合いを繰り広げた。

出典: 読売プレミアム
 会議から以下のことが分かりました。中国は道路などの社会資本(インフラ)整備に融資を行う「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」構想による東南アジア支援を考えており、現在タイやカンボジアからの支持を得ています。一方で、日本は以前から「アジア開発銀行(ADB)」による支援を行ってきましたが、ADBの融資は環境への影響や資金調達の際の透明性確保などの細かい条件があるため、中国に対して劣勢を強いられることとなります。

 東南アジア諸国は今まさに発展が著しい地域であり、日本にとって経済面や安全保障の面でのパートナーとして欠かせない存在です。そして、経済的な支援や経済連携は、発展が著しい東南アジアの国々との仲を深めるチャンスでもあります。
 
 そこで今回は、東南アジアを巡る日中の攻防を理解するために、「アジア開発銀行(ADB)」と「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」とは何なのか、そしてその背後にある中国の思惑について考えていきたいと思います。

ADBとAIIBってなに?

ADB(Asian Development Bank, アジア開発銀行)

 ADBとはアジアにおける銀行のことです。世界銀行(IBRD)のアジア版とも言えます。本部はマニラにあり、1966年に業務を開始しました。目的は、アジア諸国に対する開発資金の融資と技術援助にあります。その使命は、開発途上加盟国の貧困を削減し、生活の条件と質を改善できるよう支援することです。(1)経済成長の促進を大きく掲げており、その他に(2)貧困緩和、(3)女性の地位向上、(4)人的資源の開発(教育・保健衛生など)、(5)環境保護を掲げています。

 意外と知られていませんが、日本は設立当初から最大の出資国で、歴代の総裁もすべて日本人という特徴もあります。

AIIB(Asian Infrastructure Investment Bank、アジアインフラ投資銀行)

 AIIBもADBと同様、アジアにおける銀行のことです。日本が最大の出資国であるADBや米国が最大出資国である世界銀行(IBRD)に対抗する中国主導の国際金融機関として、中国が今年度秋の設立を目指しています。先進国主導のADBやIBRDと異なり、途上国(中国)主導で支援をするという点が特徴として挙げられます。

日本は不利?中国の狙いとは

 中国によるAIIBの設立の背景には、以下のような理由が考えられます。

社会資本建設への資金需要が旺盛な東南アジアへの融資を通じ、「チャイナ・ルール」(中国秩序)の枠組みをつくるのが中国の狙いだ。

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 現在中国は南シナ海を巡って、フィリピンやベトナムと激しい対立を繰り返しています。そこで中国には「ASEANの国々を懐柔し、南シナ海問題を巡って中国と対立するフィリピンやベトナムの中国批判の声が広がらないように分断する狙いがある」とみることが出来ます。また中国は独自のルールに基づく経済レジームを形成することで、アジアにおける米国や日本の影響力の低下と自国の求心力の向上を狙っていると考えられます。

 一方で日本は、AIIBの設立に反対しています。日本主導のADBの融資は、環境への影響を考慮していることなど長期的な視野に基づいた現実的な計画性を持った国にしか援助しないといった明確な規定があります。この理由として、将来的にはADBからの融資を受けずに被援助国を自立させるという目的があるからです。しかし、計画の透明性確保などの細かい条件があるため、手続きに時間がかかり支援に速効性がないという弱点もあります。
 
 この点を突いてきたのがAIIBです。AIIBはADBよりも圧倒的に融資の条件が緩いとみられ、すぐにでも資金が欲しい国々にとっては魅力的に映ります。以上のような理由から、AIIBが設立されれば「ADB離れ」が起きかねず、日本の東南アジア諸国に対する影響力低下は必至です。

 日本は、雇用の増加や貧困削減で多くの人が恩恵を受けられるような「人間中心の投資」という考え方を打ち出し、貧困削減へと貢献できるとアピールています。ただ中国との経済関係を考慮すれば、AIIBへの誘いを断れるASEANの国はないみられ、日本が後手に回ったとの見方が優勢的です。

 今後、日本はASEAN諸国を味方につけることができるのか。まだまだ気が抜けない状態が続きそうです。

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