1. 【全文】格付けはあなたの生活を変えてしまう。経済の成功を左右する影響力を持つ3つの会社

【全文】格付けはあなたの生活を変えてしまう。経済の成功を左右する影響力を持つ3つの会社

 経済ニュースを見ていると、ときおり耳に入ってくる国債や保険などの格付けのニュースですが、実際にはどのような格付けが行われていて、自分にはどのような影響があるのかはわかりにくいですよね。実は、格付けは私たちの生活に大きく関わっていて、曖昧な基準で格付けは行われているとベルテルスマン財団で格付けを行う金融業界の改革を進めているアネット・ホイザーは語ります。

 ここでは、アネット・ホイザーが語る、格付けと私たちの生活との関わりあい、そして現在の格付けシステムの欠陥を改革する取り組みについてのプレゼンを書き起こします。

スピーカー

アネット・ホイザー/ベルテルスマン財団・事務局長

見出し一覧

・生活に影響を及ぼすかもしれない格付け、その悲惨な実態
・腐敗した格付けシステムに新たな風を巻き起こす「INCRA」

動画

生活に影響を及ぼすかもしれない格付け、その悲惨な実態

 2010年、ドイツで車を運転していたときのことでした。当時のヨーロッパはユーロ危機の真っただ中で、車内のラジオはアメリカの格付け会社に欧州の国々が格下げされていることを報じていました。「この格付け機関とは何なのか?」「なぜ評価が格下げになっていることに動揺しているのだろうか?」とラジオを聞いている時、私は考えました。

 もし、そのとき誰かが私の横にいて「あなたはこれから格付け会社の改革をすることになるだろう」と言ったら、私は「冗談でしょう?」と言ったでしょう。でも、本当におかしいのは格付け会社の運営の仕方なのです。これから説明するのは、格付け会社の運営方法を変えるべき時だという理由と運営方法の変え方です。

 まず、格付け会社の実情をお話させて下さい。新車を買う前に車の雑誌を読んだり、タブレットや携帯を購入するために製品レビューを読んだりするように、投資家は投資する商品を決める前に格付け評価を読んでいます。格付けには、最高の実績を示す「AAA」から投資にはかなり危険な「BBBマイナス」までランクが存在します。格付け会社は、格付けにより会社や銀行の評価を行い、不動産担保証券のような評判の悪い金融商品も評価します。国に対しても格付けを行い、これを「ソブリン格付け」と呼びます。ここでは「ソブリン格付け」に特に焦点を置いて話したいと思います。

 ここまで聞いて「それって私が心配すべきことなの?」と思った方も多いでしょう。実は、どの格付けも皆さんに影響を及ぼします。全ての人に影響します。格付け会社がある国を格付けしたなら、基本的に格付けの評価はその国の負債を査定し、返済能力と返済意欲を評価しているのです。格下げされた国は、国際市場で借金するために金銭をより支払わなくてはいけなくなり、税金を支払う国民にも影響してくるのです。なぜなら国の借金は、あなた方を含む国民が返済しなくてはならないからです。もし支払額が大きすぎて支払えなかったらどうなるでしょうか?支払いができない国の予算が削減されてしまいます。だから皆さんも関心を持つべきなのです。

 このように、誰もがソブリン格付けに影響を受けるのです。だからソブリン格付けは公共財として規定され、何も隠すことなく無料で入手可能であるべきです。しかし、現状は格付けの市場は「スタンダード&プア—ズ」と「ムーディ—ズ」と「フィッチ」という3つの企業に支配されています。現在、この3つの企業は競争相手が他にいないので、商品の価値を改良する必要がありません。しかし、格付け会社が世界経済危機の一端を担うのですから、運営の仕方を変える必要があるのです。

 あなたは、車の販売会社のアドバイスだけを信用して車を買いますか?もちろん他の人のアドバイスも聞きたいですよね。しかし、格付け会社では毎日同じようなことが実際に起きているのです。格付け会社の会社の顧客である国や会社は、自分たちの評価に対して代金を支払っており、これが利益の衝突を起こしているのです。

腐敗した格付けシステムに新たな風を巻き起こす「INCRA」

 そして、3社の格付け会社は実際の格付け方法を私たちに知らせていません。今のご時世、お菓子を売るのにも成分表示を表記する義務があるというのにです。経済の肝心な要素である格付けですが、私たちにはどんな要因が含まれているのかわかりません。私たちは格付け会社に彼らの仕事を秘密にさせてしまっているのです。間違いなく現状を打開する必要があります。格付け会社のシステムは徹底的に点検することが必要です。大胆に行動し、システムを向上させるべき時は今だと思います。これが私たちベルテルスマン財団が時間と努力を惜しまずに格付けに代わるものを考えている理由です。

 私たちは最初の試みとして、非営利でソブリン・リスク(国に対する信用のリスク)の格付けをする機関を設立しました。その機関は略称で「INCRA」と呼ばれています。INCRAは、今の格付けシステムの中に非営利団体を加えることで変化をもたらし、寄付金で永続できるような非営利の仕組みに基づきます。INCRAは寄付金に基づく収入で運営されているので、格付けの評価を公表出来るのです。

 しかし、これだけでは十分ではありません。INCRAは非常に明確な統治の構造を有しており、利益の相反を避けるとともに社会の多様なステークホルダーを受け入れます。INCRAは欧州や米国を格付けするだけの機関ではなく、国際的なものとなり、新興経済国の平等な関心と意見の表現の場となります。

 INCRAが他の格付け会社と異なっている点は、ソブリン・リスク評価が幅広い指標に基づいて行われているということです。ソブリン格付けを行うとき、基本的に注目するのはその国の経済の評価指標です。国の経済的な基盤を動かしているのは誰でしょうか?その1つが政府です。つまり、私たちが知るべきことはその国の統治され方や運営のされ方です。

 国の統治と運営を見るために「先見指標」と呼ばれるものを開発しました。先見指標を使うことで、国の社会経済の発展がよく分かります。政府が再生可能エネルギ—や教育への投資に積極的かどうか、経済危機を乗り越えられるか、そして約束した改革を実行出来るかを知ることは大切だということは理解できると思います。例えば、INCRAが南アフリカを評価するのであれば、注意して見る点は若者の国内失業状況で、現在世界最高となっている失業率です。実に35才未満の人口の70%以上に仕事がないのです。当然これは経済に大きく影響しており、将来はもっと大きく影響していくでしょう。3つの格付け会社は自分たちも先見指標を考慮に入れていると言うでしょう。しかし、彼らの考慮の仕方ははっきりと分かりません。

 また、もう1つ格付け会社とINCRAが異なる点がありますが、それはINCRAは格付け評価を公開するだけでなく、格付けの方法や指針となる要因も公開している点です。今の格付けのシステムとは違い、INCRAは何も秘密にしません。一言で言うと、INCRAは現在の格付けのシステムに代わり新しいシステムを提供することになり、格付け業界の競争や透明さを推進して質を向上させます。

 ソブリン格付けは非常に複雑な金融業界のたった一部のように見えるかもしれませんが、とても大事であり改善すべき重要な点でと言えるでしょう。ソブリン格付けは、私たち皆に影響するので公共財と見なされ定められるべきです。これが、INCRAで共にミッションを果たすための仲間を集められないかと試みている理由です。INCRAを築き上げることは、私たち皆の利益に繋がると信じています。現在、INCRAをもっと誰でも参加出来る金融制度の礎にする、またとないチャンスが来ていると感じます。なぜなら、あまりにも長い間。金融界で重要とされている企業は野放しにされていたからです。今こそ、金融界に新しい風を吹かせるときが来ているのです。

 ありがとうございました。

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