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どうして失敗事例が多発してしまうのか?企業がナレッジマネジメントを導入して失敗する理由

Shingo Hirono

2014/05/29(最終更新日:2014/05/29)


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by JustAnotherGuyInCardiff
 現場の社員が持つ暗黙知を形式知として活用することで、業務効率の改善を目指すナレッジマネジメントは、企業の人的資本を最大限に有効活用するマネジメントスタイルとして大きな注目を集めています。

 しかし、現実的には様々な理由でナレッジマネジメントが失敗してしまっているのが現状です。なぜナレッジマネジメントを導入した企業の多くが失敗してしまうのでしょうか。今回は、ナレッジマネジメントでおこる失敗事例を紹介します。

人事評価の影響

 ナレッジマネジメントで重要なのは、現場の人間の持つ暗黙知です。現場の人間が持つ暗黙知は業務を、最も知る人間が持つ効率化のノウハウに他なりません。それを形式知に変換し、共有することで全体の業務効率を改善しようというのがナレッジマネジメントの目指すあり方です。

 ある企業では、ナレッジマネジメントを導入するために現場の暗黙知を形式知にしようと挑戦しましたが、現場社員の抵抗にあい、ナレッジマネジメントを成功させることができませんでした。導入手法そのものには問題が無かったのですが、なぜ失敗事例となってしまったのでしょうか。

 答えは、この企業の人事評価制度にあります。この企業では、人事評価の基準として成果報酬制度を導入していました。成果報酬制度を導入している職場において、社員が第一に考えるのは自分の成績です。成績が報酬に直結するのですから、職場の同僚は仲間というよりもライバルとして認識されていたのです。

 このような人事評価制度を採用している職場において、自分の暗黙知を企業に提供する行為は、社員にとって不利益につながる行動でしかありません。自分が独自に積み上げた知識やノウハウは報酬を得るための貴重な知識であり、暗黙知を企業に提出したとしても社員本人には全くメリットがないのです。

 この状況では、社員がとる最も合理的な行動は企業の指示に従うことではなく「暗黙知を誰にも漏らさずに自分の仕事に活用する」ことになるでしょう。

 暗黙知を企業に提出すること自体にインセンティブが無い場合、自分の経験や知識を差し出す行為は、社員にとっての利益を減少させる行為でしかありません。このような職場でナレッジマネジメントを成功させるためには、暗黙知の提出を評価対象にする必要があるでしょう。

管理職の無理解

 ある企業でナレッジマネジメントを導入しようとしたところ、社員は協力的な姿勢を見せて積極的に暗黙知を提出してくれたのですが、管理職に暗黙知を活用するだけの能力が無かったため、貴重な暗黙知を形式知に変換することができませんでした。

 暗黙知を集めて形式知に変換するためには、特殊なスキルが求められます。どの暗黙知に価値があり、どのような形で形式知に変換するのかを決められるスキルを管理職が持たない場合、現場からあげられた暗黙知が管理職レベルで停滞してしまうかもしれません。

 企業がナレッジマネジメントの導入したとしても、そもそも管理職がナレッジマネジメントに無理解な場合は、全く機能しないという危険性もあるのです。多くのナレッジマネジメントの失敗事例は、現場の意識と管理職の意識のレベル差が原因でナレッジマネジメントが失敗しています。


 暗黙知を出せと言ったとしても、社員がすぐに暗黙知を提出できるわけではありません。社員自身も暗黙知に無自覚なこともありますし、暗黙知を出すメリットが無ければ積極的になるはずがないでしょう。

 ナレッジマネジメントの失敗事例を参考にして、正しいナレッジマネジメントを実現してください。

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