ビジネスシーンでは頻繁に「取り急ぎ」という言葉が使われます。「急いで」という意味であることは誰でも分かると思いますが、正確に把握していない人も少なくないようです。特にビジネスレターでは「取り急ぎ」を多用するため、間違った理解をしていると、マナー違反になりかねません。ここでは、「取り急ぎ」の意味と正しい使い方を説明します。
「取り急ぎ」の使い方
たとえば電話でも「取り急ぎ、お伝えいたしました」という使い方をすることもありますが、頻度はそれほど多くないはずです。それよりも、手紙やメールなどのビジネス文書で使われるケースが多いでしょう。
文書で使う場合は、「取り急ぎご報告まで」「取り急ぎお詫びまで」「取り急ぎ御礼まで」というように、文末に付け加える形で使われます。これはあくまで文章にした場合の用法ですから、電話など口頭で使う場合は「まで」はつけません。「取り急ぎ~致します(致しました)」という使い方になります。
「取り急ぎ~まで」の意味
先に「まで」について説明しておきましょう。この末尾の「まで」は、「だけ」「ばかり」の意味。つまり「この文書は上記の報告だけを伝えるものですよ」という意味をあらわしています。報告以外の目的は含んでいないということ。ですから時には「取り急ぎお詫び並びにご報告まで」という使い方もします。その場合は「お詫びと報告だけがこの文書の目的です」と告げていることになります。
さて、「取り急ぎ」の意味ですが、「とりあえず急いで」と理解して間違いありません。含意は次のとおり。「本来であれば直接お会いして報告(お詫び、御礼など)をすべきところではありますが、少しも早くお伝えいたしたく、このように文書・メールで連絡差し上げることに致しました。そのため詳細の説明を省略し、要点のみをお伝えいたしました。後日、お会いしたときに、さらにくわしくお話しさせていただきたいと存じます」となります。
「取り急ぎ~まで」の短文にはこれだけ含意があるのです。その含意を正しく理解していれば、誤まった使い方をすることはないでしょう。
相手に「取り急ぎ」を求めるのは誤用であり、非常識
「取り急ぎ」はあくまでも、自分の報告やお詫びに用いる言葉です。しかし、中には「取り急ぎ、ご回答いただけますか」とか「取り急ぎ御検討ください」という使い方をしてしまう例が、少なくありません。
「取り急ぎ」の「取り」は「急ぎ」を強調する接頭語。ですから、相手に「とにかく急いで回答してください」「一刻も早く検討して、結論を出してください」と、強要する表現になってしまうのです。これがいかにビジネスマナーに反した表現か、考えるまでもないでしょう。
「取り急ぎ」はいかにも日本語らしい、多くの意味が含まれている便利な言葉です。その便利さゆえに、安易に使ってしまいがち。その意味を正しく理解し、失礼な使い方をしないことが必要になってきます。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう