ビジネスシーンで頻繫に用いられている「コンセプト」と「テーマ」。企画や新事業を計画する際に、使用した経験がある方も多いのではないでしょうか。
しかし、同じ意味のように思えるふたつの言葉ですが、実は意味や使い方が異なるので要注意でです。
今回は「コンセプト」と「テーマ」の違いについて、しっかり確認していきましょう。
- 辞書上とビジネスシーンでの「コンセプト」の使い分け
- 「テーマ」と「コンセプト」の違い
- コンセプトを設定する3つの方法
「コンセプト」の意味とは
ビジネス用語を正しく使っていくためには、言葉の持つ本来の意味を知っておく必要があります。
実は、「コンセプト」は辞書で紹介されている意味とビジネスシーンでの意味が大きく異なります。まずは、コンセプトの意味を詳しく確認していきましょう。
辞書での「コンセプト」意味
コンセプトは英語の「concept」をカタカナ読みした言葉です。岩波書店が発行している日本を代表する日本語国語辞典「広辞苑」によると、以下の意味を持ちます。
潜在する能力。可能性としての力。
出典:広辞苑
企画をする上での「コンセプト」の意味
ビジネスシーンで「コンセプト」を用いる際には、前述した辞書上の意味とは異なります。
ビジネスシーンで用いられるマーケティング用語では、コンセプトは「企画の枠組み、骨組み」を指します。どんな方向性で企画を進めていくのかを明確にするための、ひとつの指針になるものです。
コンセプトとテーマの違い
たびたび混同されているコンセプトとテーマですが、ビジネスシーンでは意味が異なります。間違った意味で認識してしまうと、誤った使い方をしてしまう可能性もあるので注意しましょう。
次は、企画をするうえでのコンセプトとテーマの違いを確認していきましょう。
「コンセプト」=「テーマ(目的)」+切り口
テーマは「映画や絵画など芸術作品の主題」という意味を持つ言葉で、テーマパークやテーマソングといった使い方もされています。「テーマ」と「コンセプト」とどちらも名詞であるため、文法的には同じ使い方が可能です。(例:本作品のテーマは〇〇/本作品のコンセプトは〇〇)
しかし、ビジネスシーンでは、テーマとコンセプトはまったく違う使い方をします。
ビジネスシーンでのコンセプトは、「テーマ+切り口」と認識されます。イメージしやすいように、具体例を挙げながら考えていきましょう。
【ビジネスシーンでのコンセプトとテーマの使い分け】
「オムライスの作り方」というテーマで動画や記事を作成する場合、以下のようにコンセプトはいくらでも考えることができます。
<コンセプト>
- 「動画で解説する、オムライスの作り方」
- 「有名洋食店のシェフに聞く、本格派オムライスの作り方」
- 「カリスマ家政婦が教える、簡単オムライスの作り方」
「オムライスの作り方」というテーマに動画・有名洋食店のシェフ・カリスマ家政婦などの切り口を加えることで、企画の方向性が明確になりますよね。
【コンセプトとテーマの誤った使い方】
☓:「ニューヨークがテーマのレストラン」
◎:「ニューヨークがコンセプトのレストラン」
上記のはどちらとも文法上では問題ありませんが、企画に対する枠組みや骨組みという観点からは不適切です。
外装・内装・フードメニュー・店員の服装に至るまで、ニューヨークに関連するレストランを作る場合には「コンセプト」を用いましょう。
「コンセプト」と「テーマ(目的)」の違いを例を交えて解説
前述したように、コンセプトはテーマに切り口のエッセンスを加えた言葉です。目的となるテーマがある前提で、コンセプトという言葉は用いられているのです。より分かりやすく理解するために、実例を挙げて考えていきましょう。
<テーマ>
男性向け化粧水
<コンセプト>
- 男性の肌トラブルに応じて、性質や成分の異なる化粧水
- 髭剃り後に潤いを与える専用化粧水
- 30~40代の男性にターゲットを絞った化粧水
上記のように、前提にテーマがあることでターゲットを絞ったり、使うシーンを変えたりするだけで「男性が使える化粧水」のコンセプト案が出せるのです。
企画を考えるときに、なぜコンセプトは重要なの?
企画を考えるためには、事前にコンセプトを設定する必要があります。コンセプトを細かく設定せずに走り始めてしまった場合には、企画の目的や目標とするゴールが次第にぼやけてしまうこともしばしば……。結果的に想定していた枠組みを大きく外れてしまうことも多いのです。
企画を考えるときには、適切な順序を守りながら企画を進行していくことが重要です。まずはお題となる「テーマ」を設定して、コンセプトを決めるために必要な切り口の加え方を熟考していきましょう。
テーマとコンセプトを明確に決めて企画を進めることで、実行力や企画のクオリティが格段によくなるはずですよ。
コンセプトの作り方は?知っておきたい3つの方法
企画のゴールを明確にして、クオリティを高めるためにも必要となる「コンセプト」。
企画に携わる方は、コンセプトの作り方をしっかり知っておかなければなりません。
次は、コンセプトを作るときに知っておきたい3つのポイントを解説します。
コンセプト設計の6つのポイント
コンセプトを設計するためには、6つのポイントがあります。相手の記憶に残る企画を設計するためにも、スタンフォード大学のチップ・ハース教授とダン・ハースらがまとめた共通点を確認していきましょう。
<コンセプト設計に必要な6つのポイント>
- 単純明快であること
- 意外性があること
- 具体的であること
- 信頼性があること
- 感情に訴えること
- 物語性があること
上記の6つの原則が揃っている企画は、相手の記憶に焼き付く印象的な内容に成長できるとされています。
多角的な視点から検討する
コンセプト設計前から視点を狭めてしまうのはNG。テーマやコンセプト設計前には多角的な視点を重視しましょう。多角的な視点を徐々にブラッシュアップしながら、具体的なコンセプトを細やかに設定しくことがおすすめです。
また、コンセプトを設定したあとは方向性を狭めていきます。むだな情報やアイデアを減らしていき、相手に伝わりやすい1本の道筋を作り出しましょう。
コンセプトシートを活用する
コンセプトをより詳しく、細やかに設定するためには「コンセプトシート」を利用しましょう。頭の中を整理しながら考えを可視化できるので、チームメンバーやクライアントとの齟齬(そご)を防げます。
- 企画意図
なぜ本企画を始めるに至ったのか、理由を明確化。企画意図に納得性や統一性を持たせるためにも、データや実例を用いて具体的に記載しましょう。 - ターゲット
どの顧客に向けた企画であるのか、ターゲットやペルソナを明確にしましょう。 - 訴求内容・手法
設定したターゲットに向けて、どのようなアプローチを用いるのか決めましょう。 - 予算イメージ
クライアントや社内での予算イメージがある場合には、細かく記載しましょう。 - スケジュール
企画本着手からリリースまでのスケジュールを定めましょう。
コンセプトの成功事例
最後に、実際に企業が行ったコンセプト設計までの流れをご紹介します。書き方や考え方を参考に、企画のコンセプトを明確に定めていきましょう。
コンセプト設計時は「実体」と「概念」を設定したうえで、抽象化や切り口化を図ります。加えて、誰にでも伝わりやすく簡潔化して「名詞+形容詞(句)」のかたちでシンプルに表現しましょう。
【ヘルシオのコンセプト設計の流れ】
概念(形容詞句):作りたてのおいしさ
概念(形容詞句):余分な油を落とす
概念(形容詞):ヘルシーな
実体(名詞):ウォーターオーブン
コンセプト→作りたてのおいしさ&余分な油を落としてヘルシーに焼けるウォーターオーブン
【モーニングショットのコンセプト設計の流れ】
概念(形容詞句):朝専用の
実体(名詞):缶コーヒー
コンセプト→朝専用缶コーヒー
【スターバックスのコンセプト設計の流れ】
概念(形容詞句):家庭でもなく
概念(形容詞句):職場でもない
実体(名詞):第3の空間
コンセプト→家庭でもなく職場でもない第3の空間
コンセプトを明確にして企画の実行力を上げよう
- 「コンセプト」=「テーマ(目的)」+切り口で設計される
- コンセプトシートの活用と多角的な視点で、コンセプトを明確化しよう
- コンセプトとテーマ設定で企画の実行力が向上する
本記事でご紹介したように、「コンセプト」とは定めたテーマに切り口を加えた言葉です。
企画をブラッシュアップするためにコンセプトを明確化するのは、非常に重要です。コンセプトシートの活用や多角的な視点を意識的に持つことで、企画のクオリティを高めていきましょう。
【関連記事】
「御中」の使い方とは?様・行・係・各位との違いや、消し方・書き換え方法を解説
ビジネスシーンで郵便物やメールを出すとき、宛名に用いる「御中」や「様」。敬称の正しい使い分けがわからず、困っている人もいるのではないでしょうか。 本記事では、郵便物の宛名マナーとして知って...
【敬語の意味・違い】承知しました/了解しました/かしこまりました/了承しました
「わかりました」の意味合いで使う「了解しました・承知しました・了承しました・かしこまりました」。 実は、相手によって使い分けをする必要があることを知っていますか?例えば、「了解しました」「了...
「お疲れ様です」を目上の人に使うのはNG?「ご苦労様です」との意味の違いを紹介
相手へのねぎらいを伝えるために用いられる「お疲れ様です」というフレーズ。フランクな表現にも思えてしまうため「目上の方に使うと失礼になるのかな?」と、使い方を迷っている方も多いのではないでしょうか...
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう