「プロダクトアウト」と「コンセプトアウト」の2つは混同されがちな概念ですが、持つ意味も果たす役割も全く異なります。2つの違いを正確に理解しないまま販売戦略に導入してしまうと、効果が期待できないどころか大きな損害を出す原因になってしまうでしょう。2つの違いを正しく認識して、最大限の効果を生むように活用することが重要です。今回は「プロダクトアウト」と「コンセプトアウト」の違いとその役割について解説します。
プロダクトアウトとコンセプトアウトの意味
マーケティング用語としての両者の基本的な概念を知ることが、両者の違いを認識するための重要な作業です。プロダクトアウトとは、販売戦略を提供者側の都合から導き出される戦略であり、顧客の声をもとに戦略を決定するマーケットインと対になる概念。提供者の都合で戦略が決まるため、市場の声に左右されない独自性を持った製品開発が可能になります。
一方でコンセプトアウトとは、製品そのものが持つコンセプトを発展させて製品開発を行う手法です。コンセプトアウトを導入した場合、企業は製品のすべてを管理する存在ではなくなり、外部の参加者や顧客との対話を通じて製品を開発し、販売することを目指します。
プロダクトアウトとコンセプトアウトの役割
プロダクトアウトは提供者側が主体となった販売戦略をとるため、顧客のニーズや要望左右されない自由な発想と技術に基づいた製品開発が実現します。そのため新しい技術やアイデアを生かした製品開発に向いており、新たな市場を切り開くイノベーションにつながる製品が生まれやすいのです。
コンセプトアウトの場合、重要になるのは製品の持つ性能や機能そのものではなく、製品が持つ意味や独自の価値が重要になります。顧客は製品を使用することで新しい体験を実現し、製品の性能を超えた価値を実感するのです。コンセプトアウトによって高い付加価値が実現すれば、独自の価値観を持ったブランドが成立するでしょう。
市場主体から商品主体へ
プロダクトアウトは提供者である企業が主体となって製品の販売戦略が決定されますが、その対象はあくまでも市場であり、市場に存在する顧客です。それに対し、プロダクトアウトは、コンセプト自体を提供するものであり、製品開発そのものがメディアとしての機能を有します。多数の参加者が実体験として製品に関わることで販売という概念そのものが失われ、従来の製品の市場に当たる概念の意味が薄れてしまうのです。
顧客は製品のコンセプトに共感し、体験を通じて購買行動を起こします。そこには従来の市場のような競争の概念はなく、製品との間で生じた信頼関係が重要な意味を持つようになるのです。
プロダクトアウトとコンセプトアウトの役割は、内的な技術か外的な付加価値かの違いという見方をすることも可能です。
どちらの戦略が優れているのかという比較は意味がありません。両者の持つ役割の違いは、目的の違いにも通じるものです。企業の目的や目指す方向によって最適な戦略は異なるため、どちらを選べば最善の結果が実現するのかはケースによって変わるでしょう。重要なのは両者の違いを正しく理解し、状況に応じて最適の戦略を選択することではないでしょうか。
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