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【メリットばかりではない】「プロダクトアウト」の考えが抱える2つの危険性

Shingo Hirono

2014/04/12(最終更新日:2014/04/12)


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by Svadilfari
 プロダクトアウトはマーケティングの一手法ですが、成功すれば大きな利益につながります。しかし、プロダクトアウトの考えを導入して活動する場合、大きな危険と隣り合わせであることを忘れてはいけません。プロダクトアウトは本質的な危険性をはらんだ考え方です。上手に活用すれば恐れることはありませんが、活用に失敗すると大きなデメリットが発生してしまうのです。今回は、プロダクトアウトがもつ危険性について解説します。

1. 望まれない商品の提供

 プロダクトアウトとは、活動のポジショニングを提供者側において進める方法です。一般的なマーケティングでの考え方は、顧客の持つ潜在的な欲求やニーズを顧客調査やリサーチで探り出し、その願望を充足させるような商品を提供することで提供側の利益を最大化する、というもの。この考え方をマーケットインといい、顧客本位で活動方針を定める考え方です。

 それに対しプロダクトアウトでは、顧客の欲求ではなく提供者側の都合で活動方針が決まります。新技術が開発できたから、販売網が確立できたから、生産力があるから等、提供者側の都合や状態によって活動の方向が決まるため、顧客の声が提供者に届かないという事態に陥ってしまう可能性があるのです。

 プロダクトアウトで提供される商品が顧客の想像もつかないような画期的なものであれば、顧客の声が届かなくても問題はないのですが、プロダクトアウトが理想的な形で実現されていない場合は、提供者も顧客の声に耳を傾けなくてはいけません。

 しかし、スタートが提供者側の都合から始まっている場合、提供者は自分たちの気持ちや都合にばかりこだわって顧客の声を無視してしまいがち。提供者本位と顧客軽視を勘違いししてしまうと、誰も望んでいない商品をせっせと提供する、という最悪の事態に陥ってしまいます。

2. 判断の遅れ

 プロダクトアウトで決められる活動方針は、提供者自身が自信を持って定めるものです。その方針が正しい物であれば良いのですが、活動を続けていく中で方針がずれてしまったり、時代にそぐわないものになってしまったりした場合、なるべく早く方針を修正しなければなりません。

 しかし、プロダクトアウトで定められた方針を変更しようとする場合、内部から反対の声が上がる可能性があります。プロダクトアウトで提供される商品は、提供者が自信をもって開発した商品です。そのことにこだわるあまり活動の見直しに異論を唱えるものが組織内部から出てしまうと、経営判断を遅らせることになってしまいます。

 商品の開発者は、優れた商品を開発すれば必ず顧客に受け入れられるはずだ、という考えを持っているもの。プロダクトアウトはその考えのもとに実行されるのですが、顧客の反応が提供者の望んだものであるとは限りません。時には優れた性能を持った製品が拒否されてしまうこともあり、その場合は速やかに活動方針を変更するという判断を下さなければ、損害はどんどん大きくなってしまいます。

 プロダクトアウトでは、開発した製品の出来のよさにこだわるあまり、判断のタイミングが遅れてしまうことがあります。判断の遅れは経営に致命的なダメージを与える危険性をはらんでいるのです。危険を回避するためには、こだわりやプライドを捨てて最善の判断に速やかに従う必要があるでしょう。


 プロダクトアウトは提供者本位という概念であり、顧客の意向にあまり影響を受けません。プロダクトアウトの持つ危険性のほとんどは提供者側の持つ問題です。正しく運用すれば、プロダクトアウトはとても有効な考え方ですので、常に危険性を意識し、最適な運用を心がけてください。

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