1. 【あなたは知ってた?】自炊代行は著作権法違反に!

【あなたは知ってた?】自炊代行は著作権法違反に!

 平成25年9月30日に東京地裁で、いわゆる自炊代行が著作権法違反にあたるとする初めての判断が下されました。(判決全文はこちら)これまで自炊代行に対し著作者の団体などが著作権法違反を主張していましたが、自炊代行を明確に著作権法違反であると判断した判例はなく、「グレー」な領域でした。自炊代行の問題には「複製の主体は誰か?」という問題が含まれていますが、この問題は自炊代行に限らず、アウトソーシングサービス全般に影響を与えうるものですので、起業家の皆さんに知っておいていただきたい範囲で、概要を解説していきます。

今回のポイント

 まず本判決のポイントです。最初は何を言っているのかよくわからないかもしれませんが、これから詳しく解説していくので、とりあえず読んでみてください。

<事案の概要>

 いわゆる自炊代行業者2社に対し、有名小説家・漫画家ら7名が、権利者の許諾なくスキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成する行為が、著作権侵害(複製権侵害)にあたるとして、①自炊代行行為の差止及び②不法行為に基づく損害賠償請求を行った。

<結論>

 原告の主張が大筋で認められ、①自炊代行行為の差止及び②損害賠償が認められた。

<争点>

(1)複製の主体は誰か?
(2)自炊後に書籍を廃棄すれば「複製」とならないか?

 ※本判決には、①差止請求の成否に関する争点、②損害賠償請求の成否に関する争点、③損害額に関する争点の3つがありますが、今回はこのうち①に含まれる上記(1)(2)の争点を細かくみていきます。

<争点(1)複製の主体は誰か?>

・原告・被告の主張
 そもそも、なぜこの点が争点になっているのでしょうか?前提として、本をスキャナーで電子ファイル化する行為は、通常、著作権法で著作者にしか認められていない「複製」にあたり、これを行うと著作権法違反となります。

 但し、著作権法第30条第1項には、「私的使用のための複製」という条文があり、個人的に又は家庭内などの限られた範囲で使用することを目的とする場合には、複製をしても著作権侵害とならないとされています。

 そのため自炊業者は、本の所有者が複製の主体であり、自分たちはあくまで所有者の手足となって適法な私的複製を補助しているだけなので、著作権侵害はないと主張していました。これに対して原告(著作権者側)は、本を裁断してスキャンし、OCR処理を行うという複製の一連の作業を行っているのは自炊業者なのだから、自炊業者が複製の主体であると主張していました。主張の概要をまとめると以下のようになります。
・裁判所の判断
 上記のような主張に対し、裁判所は、「複製の主体は誰か?」を判断するにあたっては、「複製の実現における枢要な行為をした者は誰か」を検討すべきだと判示しました。そのうえで、この判断にあたっては、個々の事案において「複製の対象、方法、複製物への関与の内容、程度等の諸要素を考慮して判断するのが相当である」としました。
 続けて裁判所は、上記基準をもとに本件複製過程を、

1. 利用者(本の所有者)が自炊代行業者に書籍の電子ファイル化を申し込む
2. 利用者が自炊代行業者に書籍を送付する
3. 自炊代行業者は,書籍をスキャンしやすいように裁断する
4. 自炊代行業者は,裁断した書籍を自身が管理するスキャナーで読み込み電子ファイル化する
5. 完成した電子ファイルを利用者がインターネットにより電子ファイルのままダウンロードするか又はDVD等の媒体に記録されたものとして受領する

 の5つとしたうえで、複製の対象となる書籍を送付するのは本の所有者であるが、その後の書籍の電子ファイル化という作業に関与しているのは専ら自炊代行業者であると認定し、本件複製で枢要な行為をしているのは自炊代行業者であって本の所有者ではないと判示しました。

 また、「抽象的には利用者(本の所有者)が因果の流れを支配しているようにみえるとしても、有形的再製(複製)の中核をなす電子ファイル化の作業は被告法人ら(自炊代行業者)の管理下にあるとみられるのであって、複製における枢要な行為を法人被告らが行っているとみるのが相当であ」り、自炊代行業者が「補助者」といえるためには、本の所有者が、複製の枢要な行為をしている者を、自己の管理下に置いていることが必要であるとも判示しています。

 以上のような検討により、裁判所は、本件で「複製」を行っているのは自炊代行業者であり、「本の所有者が複製を行っているのを補助しているだけ」という自炊代行業者の主張は認められないと判断しました。

<(2)自炊後に書籍を廃棄すれば「複製」とならないか?>

 さらに自炊代行業者は、「複製」といえるためには、「有形的に再製することに加え、当該再製行為により複製物の数を増加させることが必要」であると主張しました。つまり、再製行為がなされたとしても、結果として数が増えないのであれば、市場に流通する複製物の数が変わらないから著作者の経済的価値を害することはなく、自分たちは複製後に書籍を廃棄しているから「複製」にあたらない、という主張です。

 これに対して裁判所は、「『複製』は、有形的再製それ自体をいうのであり、有形的再製後の著作物及び複製物の個数によって複製の有無が左右されるものではない」として、上記主張をしりぞけています。

<若干のコメント>

 争点(1)の判断枠組みは、これまでの最高裁判決の考え方を踏襲するものですので、それ自体が目新しいというわけではありません。また、争点(2)も、著作権法の複製の定義規定(同法第2条1項15号)の解釈として妥当な判断であると考えます。

 しかし、本件で、本を所有していても複製自体を自己の管理下で行わなければ私的複製にはならないと判断したことで、アウトソース系のサービスの場合に私的複製が認められるか否かは、これまで以上に慎重に検討する必要があると感じています。

 一般的な感覚だと、自分で自炊をするのはOKなのに、業者に頼むと著作権侵害、というのは微妙な感じがするかもしれませんが、「所有者がOKしているだけではダメ」だということを頭の片隅においていただければと思います。

 もっとも、一部報道によれば、被告となった自炊代行業者のうち1社は控訴を検討しているとのことですから、今後この判断が覆される可能性は残っていますので、続報がでましたらまたご紹介したいと思います。

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