1. 退職届の書き方―「立つ鳥跡を濁さず」は退職する者としての作法

退職届の書き方―「立つ鳥跡を濁さず」は退職する者としての作法

 「立つ鳥跡を濁さず」。水鳥が水面から飛び立つとき、浸かっていた水を濁さず飛び立つ様子から、引き際は美しくあれという意味として使われるようになったこのことわざ。そんな様子は退職する者のあるべき姿勢と重なる。

 人生の中で退職届を提出する機会は多くない。そんな数少ない機会だからこそ、引き際は美しくありたい。円満に退職し、次のステージへ気持ちよく移ることができる退職届の書き方を紹介していく。

「退職届」と「退職願」似て非なる表現

 退職するにあたって、一番最初に確認すべきことは、会社に提出する届けが「退職届」と「退職願」どちらなのかということ。この2つの届けは、似て非なるもの。それぞれの趣旨を理解したうえで、使い分けてほしい。

退職願は撤回できて、退職届は撤回できない!

 退職届と退職願、その決定的な違いは、その届けを「撤回できるかどうか」ということだ。「退職願」は、会社側に承認されるまでは撤回ができる。一方「退職届」は、一度会社に提出すると撤回ができない。そのため、それぞれ使うシーンが異なるので注意が必要だ。

 例えば、退職を考えているけれど、雇用条件が改善されるのであれば続けてもいいと考えている人や、少しでも波風を立てたくないと考えている人は、退職願の提出が好ましい。

 一方、退職の意志が固かったり、すでに転職の話が進んでいる場合は、退職届を提出しよう。退職届は一度提出したら取りやめることができないため、提出は慎重に考える必要がある。

辞表との違い、あなたは説明できる?

 退職届と退職願の他にも、意外に混合しがちなのが「辞表」だ。辞表とは、経営者や役員など一定の役職を持っている人、または公務員が職を辞すときに提出する届け書だ。該当しないビジネスパーソンは、退職届または退職願を使おう。

「用紙、封筒、ペン」完璧な退職届を書くための道具たち

 退職届には決まった用紙や封筒が存在する訳ではない。しかし、一般的に望ましいとされる道具はあり、暗黙の了解として知られてる。そのため、ビジネス界の常識から外れた退職届を提出してしまうと、非常識な人との印象を与えて去ることに。美しく去るために知っておきたい退職届の基本をそれぞれ紹介していく。

用紙は簡素なものを

 退職届というと、白紙に書くというイメージが強い。確かに無地の白い紙に書くケースが多い。しかし白地であれば、罫線のある紙に書いても問題ない。縦書き用の罫線の入った便箋を使うことをおすすめする。なぜなら、無地の紙を選ぶとまっすぐに字を書けない可能性があり、読みやすい退職届にはなりにくい。

 「どうしても無地の紙で」と会社から指定されているのであれば、罫線が印刷された下敷き付の、無地の便箋を使うとよいだろう。

封筒は真っ白なものを

 退職届を1枚の紙のみで提出することは失礼とされている。無地で、新品の白い封筒に退出届をいれて提出することが常識だ。

 郵便番号の記入欄がないもの、且つ中身が透けない仕様になっている真っ白の封筒が退出届けを収めるに好ましい。退職届を封筒に入れたら、封はしなくてもよい。ただ、糊が封筒に初めからついている場合は、糊付けするべきだ。

 封筒のサイズは、退職届を三つ折りにしたとき、ちょうど余白なく納まるサイズがよい。例えば、A4サイズの用紙を使った退職届を三つ折りにしたとき、納める封筒のサイズは長形3号(120×235mm)がよい。B5サイズの紙を使った退職届では、封筒のサイズは長形4号(90×205mm)がよい。

筆ペンはNG! ボールペン、万年筆推奨

 退職届を書くインクは水性でも油性でもどちらでもよい。インクがかすれたり、にじんだりすることがないよう、しっかりインクが出るものを選ぼう。

 また筆ペンは字が太くなりやすい。太い字は力強い印象を、読み手に与えてしまうため退職届のような文書には適さないとされている。摩擦によってインクを消せるボールペンも不適切だ。文字が消えてしまうと退職日を会社側に操作されてしまう可能性もある。

 退職届を書いた日付と、退職日をはっきりと示すために、フォーマルな文書にはボールペンや万年筆を使おう。

【保存版】退職届の書き方

 退職届の書き方は意外と簡単。退職の理由は、詳しく書く必要はないからだ。「一身上の都合により来たる◇年◇月◇日を持ちまして退職致します」と記入するだけで十分だ。

 提出する日付・部署名・名前・印鑑・最後に会社名を省略せずに正しく書く。宛名は代表取締役と記入し、続けて代表取締役の名前・殿と書く。1ページにバランスよく書き込もう。退職届の書き方はこれだけだ。

退職届書き方の手順

  • タイトル(退職届)
  • 私事(退職届と書いた次の行の行末に、「私事」と書く)
  • 本文(退職の理由:このたび一身上の都合により、来る平成◇◇年◇月◇日をもって退職致します)
  • 退職する日付(西暦では無く、和暦で記載)
  • 自分の名前(所属している部署と自分の名前を書き、名前の最後に捺印)

綺麗な退職届のポイントはレイアウト!

 退職届の文面はシンプルだが、文字のレイアウトは注意しなければいけない。注意点を以下にまとめた。上の書き方例を参照して確認してみてほしい。

【縦書き退職届】レイアウトのポイント

  • 「退職届」は上から5文字分あけて書く
  • 「私事」は「退職届」から改行し一番下に書く
  • 本文は頭揃いで書く。文頭を一文字あけてはいけない
  • 提出年月日は上から10文字ほどあけて書く
  • 自分の所属部署名と名前は、前行の年月日よりさらに2~3文字文下げて書く
  • 氏名は捺印分分をあけて、なるべく下に書く
  • 本文と同じ高さから会社名を書く
  • 会社名から改行し、1文字分下げて「代表取締役」と書く
  • 代表取締役の氏名は、肩書の下に1文字あけて書く
縦書きのレイアウトを押さえて作成した退職届

【横書き退職届】レイアウトのポイント

  • 「退職届」と行の中央に書く
  • 提出する日付は右揃えで書く
  • 宛名は左揃えで書く
  • 所属部署と氏名は、宛名の1行下に右揃えで書く
  • 「私事」は右揃えで書く
  • 「本文」を中央揃いで書く
  • 本文を1行改行し、右揃えで「以上」と書く
横書きのレイアウトを押さえて作成した退職届

【退職届、退職願】違いに気をつけて書きたい締めの言葉の書き方

 退職届は、基本的に会社側は拒否することができない。退職願は会社に退職を願い出るものに対して、退職届は「会社を辞める」という最終的な意思表示であるからだ。そのため、書き方も若干異なる。退職届の締めの言葉の書き方は、「退職させて頂きたいと思っています」ではなく「退職致します」と言い切るようにしよう

 もしも会社側が退職届の日付を超えても退職届を受理しない場合は、退職日以降に出勤する必要はない。ここで出勤を続けると、無給で働くことを認めていることになるため、注意をしよう。

会社によってはパソコンでもいいところも

 退職届の書き方は手書きが主流だ。しかし最近では、パソコンで作成した退職届も受けつけている会社も増えている。パソコンで作成した退職届に対応している会社でも、最後の署名は必ず手書きで書く必要がある点だけは、留意してほしい。

 また会社指定の退職届のフォーマットやテンプレートがあるならその書き方に従って提出すればいい。

退職届を郵送する場合のマナー

 円満な退職を目指すのであれば、退職届は基本的に上司に直接渡すことが基本。しかし、体調不良により出社できなかったり、会社側が退職届の郵送を求めてきたりするケースもある。そんな場合に備えて、退職届を郵送する際のマナーを紹介していく。

添え状は凝ったものでなくて大丈夫! 

 退職届を郵送する場合に必須になるのが、添え状。A4またはB5サイズの用紙に簡単な挨拶を一筆書いて提出する。退職届の添え書きの書き方は縦書き、横書きどちらでもよい。定型文などは特に決まっていない。書き方は以下のテンプレートを参考にしてほしい。

退職届の添え状の書き方

  • 平成◇年◇月◇日(右揃いで書く)

    株式会社U-NOTE
    ○○部○○課
    ○○様

    ○○部○○課(右揃いで書く)
    山田太郎

    拝啓
    貴社ますますご清栄のことと存じ、お慶び申し上げます。
    このたび一身上の都合により退職させて頂くこととなりました。
    同封の通り、退職届を提出させて頂きますのでご査収のほどよろしくお願い申し上げます。
    短い間ではございましたが、大変お世話になりました。
    末筆ながら 貴社のご健勝をお祈り申し上げます。

    敬具
 退職届の添え書きが書けたら、封に入った「退職届」と、宛先の書いた封筒を用意しよう。まずは添え書きを「退職届」の上に重ねる。封筒の表から見て、添え書きが前面にくるように封筒に入れよう。

宛名本人以外は開けないで! 「親展」は封筒の左下に忘れずに!

 郵送する退職届の宛先は直属の上司、または人事担当者にしよう。郵送する際に気をつけておきたいポイントは「親展」という言葉を忘れずに書くということ。封筒の宛名が書いてある面の左下に、大きめに赤い文字で「親展」と書こう。

 「親展」とは、宛名に書かれた本人以外は、開封してはいけない書類が封入されていることを示す語。退職届のような、中身を悟られたくないような書類を郵送する際は忘れずに書き入れなければいけない。

【豆知識】退職届の提出が必要な状況と不要な状況

 退職届は、労働者が退職の意思を表示するときの提出書類。場合によっては退職届の提出が不要なこともある。

 退職届の提出が求められるシチュエーションは、労働者の都合によって退職の意思を会社に表明するときである。転職や結婚、病気や怪我などが理由の自己都合退職をするときには退職届が必要だ。一方、会社の人員削減や倒産などの会社都合による退職では、退職届を提出する必要はない。 

 会社都合による退職は、自己都合による退職より転職が有利だといわれている。また失業保険などの手当も手厚い。会社都合退職であるのに退職届を提出してしまうと、悪質な会社であれば、会社に自己都合退職として処理されてしまうおそれがある。同じ退職でも、自己都合退職と、会社都合退職では退職後の生活が大きく異なるため、退職届の提出には気をつけなければいけない。


 以上、退職届の書き方、提出の仕方を紹介してきた。退職届を書く際は、色々な気持ちを思いながら記入すると思う。書類内容自体はまったく難しいものではないが、退職届はその職場で最後に提出する書類であるため完璧に仕上げたい。「あの人は最後までしっかりとした人だった」といった好印象で仕事を終えよう。退職届の書き方とポイントを押さえて、正式な退職届けを作成してほしい。

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