1. 「一人もクビにしない!」- 出光興産 創業者・出光佐三が掲げた驚きの企業理念とは?

「一人もクビにしない!」- 出光興産 創業者・出光佐三が掲げた驚きの企業理念とは?



 第10回本屋大賞に百田直樹著『海賊と呼ばれた男』。熱い人間ドラマが描かれたこの本は、ある人物の生涯がモデルになっています。それが出光興産の創業者、出光佐三です。今回は彼が持っていた企業理念を見ていきます。

「一人もクビにしない!」


 時流を読み、多くの人の信頼を得た佐三は1940年に、従業員を1000人を抱える出光興産株式会社を設立します。朝鮮や台湾、さらには中国にまで活動を伸ばしていた出光興産ですが、当時は第二次世界大戦の真っただ中。1945年には日本は敗戦し、国内は焼け野原になってしまいます。海外を拠点に活動していた出光興産も社の資産をほとんど失いました。しかし、佐三は敗戦から1か月後に驚くべき宣言をします。


海外から引き揚げてくる社員は一人もクビにしない!

出典: コバチャンのブログ - Ameba


 出光興産の社員約1000人のうち海外に出ていたのは約800人。当時は海外に行ったきり戻ってこれない人、帰ってきても情勢の変化によって職を見つけることができない人がたくさんいました。そんな中佐三は、大損をしても、社員を見捨てることは一切しないと宣言したのです。


 そして佐三はその言葉を実行しました。売れるものは何でも売り、借金を重ねてまで彼は社員に給料を払い続けました。誰一人としてクビにせずに、再びチャンスがくるまでじっと耐え忍んだのです。果たして、再起の機会は訪れます。「旧海軍のタンクのに残った油を活用しろ」というGHQの支持を率先して引き受けた出光興産は、それを機に少しずつ石油の仕事に返り咲いていったのです。

人間尊重、家族主義


 なぜ佐三は苦境に立たされながらも社員を切るという選択をしなかったのでしょうか。それは、佐三が自分の会社を絶対に譲らなかったからです。その会社理念が世にいう、「人間尊重、家族主義」です。佐三は、会社の第一の資産は社員そのものだとしました。日本に資本主義の思想が入ってきたころ、カネこそが第一という企業が多い中で、佐三は「会社とは家族だ」と信じぬきました。だからこそ、経営が苦しくなっても社員を見捨てなかったのです。また、家族である社員の一人ひとりをよく見て、立派な人材に育てようとしました。それぞれの長所と短所を理解し、それを尊重して初めて組織が成り立つのです。佐三の有名な言葉に、次のようなものがあります。

社員は家族だ。

家計が苦しいからと家族を追い出すようなことができるか。

会社を支えるのは人だ。

これが唯一の資本であり今後の事業を作る。

人を大切にせずして何をしようというのか。

出典: ねずさんの ひとりごと 社員は家族だ・・・出光佐三


最後に


 現在の日本はどうでしょうか。会社が社員を育てるという習慣は廃れています。会社は使いたいときに使いたい人数だけを派遣社員として雇い、新卒には即戦力になる人材を求めています。佐三が理念にしていた会社像とは正反対の社会になってきているといえるでしょう。


 そんな時代だからこそ、『海賊と呼ばれた男』は多くの人に愛されたのではないでしょうか。数多くの偉業を残した出光佐三。彼の思いを見つめなおすことは、今後の日本を考えるうえでも役に立つのではないでしょうか。



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