1. WiL CEO 伊佐山元氏が語る、シリコンバレーに負けないベンチャーの作り方

WiL CEO 伊佐山元氏が語る、シリコンバレーに負けないベンチャーの作り方

 ベンチャーキャピタルの数が増えてくるなど、日本でも起業家を生み出す環境が整いつつあるが、スタートアップの整地・シリコンバレーと比べるてみると、どのような違いがあるのだろうか?

 先日、日本経済新聞社主催の日経電子版カンファレンス「起業で成長する日本」にて、アメリカ大手ベンチャーキャピタルのDCM本社パートナーとして10年間、シリコンバレーで働き続け、3000人以上の起業家と出会ってきた伊佐山元氏が米国と比べたVC業界について語ったので、その内容をまとめた。

数字で見る日本と米国の違い

●1,240億円 vs 2兆9,700億円

 この数字は、2011年度の日本のVCの投資額と米国VCの投資額。日本とアメリカを比べると、GDPは2.6倍の差だが、投資額は24倍という大きな差になっている。

●1,240億円 vs 5兆3,000億円

 先ほどの数字に、米国のエンジェルの投資額を含めると数字はこのように変わる。米国のエンジェル投資額は2兆円規模でリスクマネーの供給量は43倍になっている。

●0.2%→21%

 米国では、GDP0.2%以下の投資がGDPの21%の価値を生んでいる。民間の雇用数にすると約11%にも及ぶ。つまり、ベンチャー企業に投資を行うことで、雇用者は増えていき経済に良い影響を与えているのだ。

●650→340,000
 

  この数字は、米国最大の住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーンであるThe Home Depotが上場した時の従業員数と現在の従業員数の違いを表したものだ。TOYOTAの連結従業員数が30万人なので、それ以上の雇用を生み出している。

“138→31,500 イーベイ
2,521→160,000 スターバックス
1,153→97,000 マイクロソフト
3,021→53,861 Google”

 The Home Depot以外の企業の従業員数を見てみても急激に従業員数が増加していることが分かる。新しい企業が生まれ、そこに投資をし成長させていくことで、雇用数を増やしている。

ベンチャー業界のパラダイムシフト

 資金調達をする際、以前は国内からの調達しかなかった。しかし、今ではVCのグローバル化が進んでおり、海外のVCから資金調達する案件も増えてきている。また、オープンソースやクラウドなどの普及により、起業コストが劇的に低下している。2000年は5億円・2005年は5000万円・2009年は500万円・2011年は50万円になり、起業家の数も増えてきた。

 資金調達の方法も多様化していて、ベンチャーキャピタルから調達するだけでなく、エンジェル投資家やシードアクセラレーターから調達することもできる。また最近ではクラウドファンディングで資金を集めるという手法もできつつある。 

 モノとITの融合が進んだことで、インターネットサービスを提供するベンチャーだけでなく、3Dプリンタなどのモノづくりベンチャーも増えてきた。また、AppStoreやGooglePlayなどグローバルプラットフォームの登場で、自分が作ったアプリを消費者に簡単に届けられるようになった。

なぜベンチャーが大切なのか?

 アメリカでベンチャーが大切にされている理由は主に5つあると考えている。1つ目は、ベンチャーが米国経済の成長エンジンの役割の担っているからだ。2つ目は、先ほども述べたがGDP0.2%以下の投資がGDPの21%の価値を生み、雇用を創出している。

 3つ目はスタンフォードやハーバードなどの有名大学の卒業生の多くが、ベンチャーで活躍しているのでベンチャーの方が良いと考えられている。4つ目は、大企業が抱える「イノベーションのジレンマ」を解決出来るのは、ベンチャーだからだ。5つ目は、新しいベンチャーの到来は社会に活力を生むという考えがあり、米国ではGoogleやAppleが誕生したことで、GoogleやAppleのような企業を作りたいと考える若者が増え、社会に良い影響を与えている。

これまでの日本のイノベーションは大企業が牽引してきた

 日本で今まで起こってきたイノベーションは、大企業が年間数千億単位の研究開発費と優秀な人材の力で起こしてきた。ベンチャーは、まだ社会の少数派で、イノベーションの担い手になりきれていない。大半のベンチャーはリソース(ヒト・モノ・カネ)不足に悩んでいる。

 つまり、日本の抱える問題はこういうことになる。ほとんどの大企業が自前主義を掲げており、ベンチャーの力を借りようと思っておらず、大企業とベンチャーの間には大きな壁がある。それにより、日本でベンチャーを興す人材の不足、応援団の不足、海外のベンチャーへの知識不足という状況が起こってしまっている。

 大企業の現場では、 イノベーションのサイクルは短縮化の傾向になっており、既存の仕組みにとらわれないベンチャーのスピード感を求めはじめている。イノベーションのジレンマの問題も発生し、異業種との連携も必要になるなど、大企業だけの力では解決できない状況になってきている。日本の研究開発費上位10社の1%である約500億をベンチャー投資に回すだけで、変わってくる可能性がある。

これからの日本のイノベーションは大企業とベンチャーの連携にあり

 日本で、これからイノベーションを起こしていくために大企業は、ベンチャーを巧く活用し研究開発の効率化・スピード化を図ることが求められる。また、イントレプレナー(社内起業家)を育成する環境を作るなど、新しいテクノロジーへアクセスする機会を作ることが重要になる。

 一方で、ベンチャーは大企業のリソースを受けることで、優秀な人材の確保することができる。またグローバル規模のベンチャー構築することも容易になり、世界標準のスピードでの製品・サービス開発を行うことができるようになる。




 10年以上シリコンバレーで働き続けた伊佐山氏から見た、日本のVCの現状やベンチャー企業についての考えを聞くことができる貴重なイベントだったと思う。これからの日本のベンチャー業界の発展に期待していきたい。

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