2020年開催の東京オリンピックの公式エンブレムを制作した佐野研二郎氏が、自身の手がけた東京オリンピックのエンブレム含む、今までの制作物が盗作なのではないかと世間で問題になっている。しかし、デザインの世界において、優れたデザインからインスピレーションをもらうことは多く、またシンプルなデザインにおいては、まったくのオリジナルなデザインを作ることは非常に難しいのも事実だ。
(佐野研二郎氏が手がけた、2020年・東京オリンピック公式エンブレム)
「世の中に新しいものを創りだす」というと、いちから自分の力でやらなければいけないと思いがちだ。しかし、世の中に変革を起こした偉人たちも、最初は先人から多くのものを盗んできたのだ。デザインにかぎらず、「盗む」ということがどういったことか、今一度考えたい。
スティーブ・ジョブズは盗作の天才だった
by James Mitchell 言わずと知れたAppleの創業者であるスティーブ・ジョブズ。彼の名前を聞くと、「素晴らしい偉業を成し遂げた人物だ」と感じる人が多いだろうが、彼は天才的な発明家だったわけではない。
“ジョブズは発明ではなく盗作の天才だった”
スティーブ・ジョブズは発明家として素晴らしい才能を発揮したのではなく、むしろ人のものを上手に盗むことにおいて長けていた。
ジョブズは何もないまっさらな状態からAppleを作ったのではなく、既存のものを組み合わせることで新しい価値を創造することに成功したのだ。例えば、当時は革新的だったMacintoshのマウスでクリックするモデルも、Appleではなくゼロックス社が開発したものだった。ゼロックス社が「使えないからいらない」としたこのモデルを、ジョブズがタダ同然で貰い受け、それを自分の開発していたものに組み入れたのだ。
この「盗む」という行為に関して、ジョブズは確固たる考えを持っていた。
動画の中でジョブズはこう話している。
“ピカソは「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗む」と言った。だから僕たちは、偉大なアイデアを盗むことに関して、恥じることはなかった。”
「盗む」ということは、むしろスティーブ・ジョブズとっては大切な考え方だった。偉人の素晴らしい部分を「盗む」ことを恥じずに実行してきたからこそ、ジョブズは様々なアイデアを組み合わせ、彼自身も素晴らしいものを世の中に送り出すことができたのだ。
実は「盗む」ことに関しては肯定的な偉人が多い
スティーブ・ジョブズに限らず、後世に残ることを成し遂げた偉人の中には「盗む」ことをポジティブに捉えている人は多い。
トーマス・エジソン
“商工業の世界では誰もが盗む。わたしもずいぶん盗んだものだ。 肝心なのは、いかに盗むかである。”
発明家として有名なエジソンは、自身も多くの「盗み」を働いてきた、と話している。既存のものをいかに活かすか、どう組み合わせるのか。そこに彼らが偉人たる所以なのだ。
発明家として有名なエジソンは、自身も多くの「盗み」を働いてきた、と話している。既存のものをいかに活かすか、どう組み合わせるのか。そこに彼らが偉人たる所以なのだ。
サルバドール・ダリ
“「何もまねしたくないなんて言っている人間は、何も作れない」”
サルバドール・ダリはスペインの有名な画家である。画家のようなクリエイティブなことを生業にしている人でも、盗むことの大切さを説いている。そもそも、人間は真似をすることで成長してきたのだ。人から何かを学び、それを自分に活かすことは決して恥ずかしいことではない。
サルバドール・ダリはスペインの有名な画家である。画家のようなクリエイティブなことを生業にしている人でも、盗むことの大切さを説いている。そもそも、人間は真似をすることで成長してきたのだ。人から何かを学び、それを自分に活かすことは決して恥ずかしいことではない。
フランシス・フォード・コッポラ
by C2 Montréal “私たちから取ってほしい。まずは盗んでみてほしいんだ。なぜなら、結局は盗みきれないからだ。盗めるのは、私たちが与えたものだけだ。君はそれを自分のスタイルに取り入れ、自分のスタイルを見つけていく。誰だって最初はそうだ。そしていつか、誰かが君から盗む日が来る”
アメリカの映画監督であるフランシス・フォード・コッポラ。彼も「盗む」ことを推奨し、自分もいつか盗まれる側に立つ日が来ると言っている。
「真似」で終えるのではなく「盗む」
by ahisgett “凡人は模倣し天才は盗む”(パブロ・ピカソ)
上記の言葉はピカソの言葉だが、先人のことを参考にするときに「真似」なのか「盗み」なのかが、凡人と天才を分けるとある。
「真似」というのはいわゆるその人のコピーで、そこにはオリジナルは存在しない。天才はこの真似るという段階で終わらすことはない。真似したものを組み合わせることで新たな価値観を生み出しているのだ。そしてそれが「盗む」ということなのである。
人のいいところはたくさん真似してみるべきなのだ。そしてその真似したものを自分なりに組み合わせることが、新しいものの創造につながる。決して、類似箇所があるだけで「盗作、盗作」と騒ぎ立てることだけが正義ではない。実際、東京オリンピックの公式エンブレムがオリジナルなものなのかはわからない。しかし、どんな偉大なクリエイターも、なにかから影響を受け、その掛け合わせで「オリジナル」が生まれているのだ。常に優れたものを盗み、新たなものを作り、それでモノを言える人になりたいものだ。
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