1. スティーブ・ジョブズも苦心した伝説のスピーチ -明確なメッセージが聴衆に感動を与えた

スティーブ・ジョブズも苦心した伝説のスピーチ -明確なメッセージが聴衆に感動を与えた

 Apple創業者のSteve Jobs氏と言えば、あまりに有名すぎて紹介するのもはばかられる。彼はこの世界に大きな革命を起こした。だからこそ、彼が話すことにはどれも重みがある。彼のスピーチの中でも有名なのがスタンフォード大学で行ったものだ。

 伝説のスピーチと呼ばれるこのスピーチだが、プレゼンの達人であるジョブズ氏も原稿作成にかなり苦心したという。当初、様々な映画の脚本を書いていたアーロン・ソーキンに原稿を書くように要請していたようだが、原稿がなかなか届かず彼はパニックに陥った。結果、ジョブズ氏は自らペンをとり原稿を書くことを決意したのである。

 以下に挙げるのは、彼が実際に行ったスピーチ原稿の要約である。あなたはこの文章を読んで心に響くところがあるだろうか。

1. 「点を繋げる」という話

 ジョブズ氏は大学に入ったものの半年で中退している。彼は大学での授業に意味を見いだせなかったのだ。当時彼には目標がなかったが、だからといって大学がどこかに導いてくれるとは考えなかった。これが最良の選択だったと彼は言っている。

 必修授業に出る必要がなくなったジョブズ氏は、自分の興味のある授業に潜り込むようになる。このように中退してから興味を持つようになったものが彼の原点となった。

 その一つにカリグラフィーの授業があった。ジョブズ氏はカリグラフィーの美しさに惹かれ、その授業を受けるようになる。その当時、彼はそれがその後役に立つとは思っていなかった、しかし、これがマッキントッシュを作る時に蘇ったのだ。

 そこで学んだことを活かし、マッキントッシュで美しい活字を再現することにつながったのである。大学でカリグラフィーに出会ったからこそ、Macにはたくさんのフォントがが存在し、字間調整のが搭載されているのだ。

 そもそも大学を中退してなければカリグラフィーの授業に出会うこともなかったし、美しい活字を搭載したMacが登場することもなかっただろう。

 ジョブズ氏はそれを予想して行動してきたわけではない。しかし彼はその後振り返ってみてその点の繋がりに気づいたのだ。

 今やっていることがどこかに繋がると信じてください。何かを信じてください。あなたの根性、運命、業、何でも構いません。その点がどこかに繋がると信じていれば、他の人と違う道を歩いてても自信を持って歩き通せるからです。それが人生に違いをもたらします。

2. 「愛と喪失」の話

 ジョブズ氏は20歳で友人とApple社を創業した。しかしそこで彼は自分の創業した会社をクビになってしまう。ジョブズ氏はAppleの成長につれて、会社に必要だと思った有能な人物を重役として迎え入れたのだが、彼らは意見が対立して分裂、取締役会は相手に味方してしまったのだ。

 彼は途方に暮れた。当時ジョブズ氏の失業は有名だったため、シリコンバレーから逃げようと考えたこともあるという。しかし、彼にはまだ残っているものがあった。彼は自分の仕事が好きで、その思いが消えることはなかったのだ。

 そこで彼は再出発を決めた。このAppleからの追放は、結局彼にとって最良のことだったという。成功者という重圧から解き放たれ、初心者としての心を取り戻すことができたのだ。そしてその後5年間でNeXT社とPixar社を立ち上げ、後に妻となる素晴らしい女性に出会うのである。

 Pixarは世界初のCGアニメである「Toy Story」で大成功をおさめ、世界最高のアニメスタジオとなった。そして、なんとAppleがNeXTを買収することとなり、ジョブズ氏は再びAppleに戻ることになるのだ。

 Appleにいなかった時に培ったスキルはその後Appleに戻ってからも活かされた。また、素晴らしい家庭を持つこともできたのだ。

 これらは一度Appleを追放されたからこそ得ることのできたものだ。彼は自分の行っていることを愛していたからこそ止まらずに続けることができたのだ。

 あなたも愛せるものを見つけましょう。仕事にも恋愛にも言えることです。仕事は人生の重要な位置を占めます。それに満足したければ、自分の仕事が最高だと思うことです。そして最高の仕事をするには、その仕事を愛しましょう。まだ見つかっていないのなら、探し続けましょう。安易に落ち着かないでください。その時はピンと来るものです。あなたのハートは分かっています。そして良き人間関係のように、長く付き合うほど心地良くなります。ですから探し続けましょう!落ち着くことなく。

3. 「死」についての話

 彼は17歳の時にこのような言葉に出会った。
 「毎日を人生最後の日だと思って生きよう。いつか本当にそうなる日が来る」

 その言葉と出会ってから彼は朝起きると鏡の中の自分に向かってこのように問いかけるようになったという。
 「今日で死ぬとしたら、今日やろうとしていることは本当にすべきことか?」
 
その答えに「No」が返ってくる場合は 何かを変えなければと思うのだ。

 「死」を覚悟することは、人生で大きな決断をする時に大きな自信になるという。なぜなら自分の周囲にある期待や恥、プライドというものは、死を前にしては消滅するからだ。「死」を覚悟して行きていくと「何かを失う」ということを恐れないでいられる。素直に自分の心に従うことが大事だとジョブズ氏は言った。

 彼はこのスピーチの1年前に癌の手術を受けている。そのとき医師に余命数ヶ月だということを告げられたという。彼はこの手術を受けたおかげでその後元気を取り戻したが、今までで一番死に近付いたこの経験で彼が思ったことは「誰も死にたくない」ということだった。

 しかし、死は誰にでも訪れる終着点だ。誰も逃れられたものはいないし、今後もそうであるべきだ。その理由をジョブズ氏は、「死が生命の最大の発明だから」と結論づけている。死によって古き者は消え去り、新しき者への道を作る、と。

 自分の時間は無限ではない。無駄に他人の人生を生きないこと。そして一番大事なことは自分の直感に従う勇気を持つことだとジョブズ氏は言った。

 彼が若い頃読んだ雑誌の裏に、ある言葉が書かれていたという。

「Stay hungry, stay foolish」(貪欲であれ、バカであれ)

 彼はこうありたいと思ったし、私たちにもこうあってほしいと願った。

ジョブズ氏の伝えたかった強いメッセージがスピーチを伝説にした

 彼の伝説のスピーチは、Apple社での新製品発表の時のような派手さはまったくなかった。おおげさな身振り手振りも、うまくまとめられたパワーポイントもなかった。しかし、彼のスピーチは人々の心を揺さぶった。その要因は彼の原稿にあったのである。

 自ら苦心して作り上げたスピーチ原稿。そこにはジョブズ氏自身の人生が綴られていた。しかもあれだけの成功を収めていたにもかかわらず、自慢話はその中には含まれていなかった。彼が学生に伝えたかったメッセージは明確だった。「Stay hungry, stay foolish」という言葉は学生に向けてふさわしいメッセージだったのだ。

 プレゼンで大切なのは、結局はテクニックでも口のうまさでもなく、自分が伝えたいメッセージをいかに明確に伝えるかということだ。ジョブズ氏のスタンフォード大学でのスピーチでは彼が伝えたいメッセージがダイレクトに聴衆に伝わった。だからこそ、彼のこのスピーチが伝説だと呼ばれるのだ。

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