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「会社は社会の公器である」―アトランティス・木村新司氏の「ビジネス選定における3つのアドバイス」

小出 悠人

2015/01/13(最終更新日:2015/01/13)


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by Robert Scoble
 起業家とそれを支援する人を結ぶコミュニティハブであるMOVIDA SCHOOL。今回のMOVIDA SCHOOLの講師は、株式会社アトランティス 取締役 木村 新司氏。

 「会社は社会の公器である」と語る木村氏の講演から、ビジネス選定における3つのアドバイスをまとめてみた。

SEOからアドネットワークへ、アトランティス設立時

 設立当初は、PCのSEOを個人的にやっていて、サイバーエージェントなどの代理店から受注をしていたアトランティス。その頃、利益は数百万出ていたそうだが、個人事業主レベルだったという。人を雇う収入は出来ていたというので、本格的な事業に乗り出す準備の期間だったのだろう。

 その後、最初に300万ほどの投資をして、サーバを買い込み、無料のアドサーバとして様々なサイトへ営業をしたそうだ(今ならクラウドがあるだろう)。アドサーバを無料で配るのに力を入れるのは半年ほどやめて、広告アドネットワークと有料サービスへと事業を展開し始めたアトランティス。ただ、無料だと大企業は使ってくれないため、値段を付ける必要があったという。

 そして1年ほどで月額売上で数千万を超えてきたアトランティスだが、爆発的には増えていかなかった。元々の競争相手も多く、クライアントが我々を選ぶ理由がなかったのだ。

 また、その頃にグルーポンが出てきたため、グルーポンレースに手を出したが、直ぐに閉じたという。それは、この競争下では、直に利益が出なくなると思ったからだそうだ。

 そして、2010年8月頃からスマートフォンのアドネットワークを開始した。アドネットワーク事業は、手応えが違った。早速、2011年11月頃、複数社から買収の話で声がかかったそうだ。そのなかで、GREEが一番伸びそうだったということで、GREEとやることにしたのだ。結果、今期も順調に伸びてきている。

売却後、GREEにて事業立ち上げを行った2年間

 GREEへ売却後は、アドネットワーク事業の拡大をアトランティスとして行った。そして、リワード事業の立ち上げを行い、共に大きな成長をした。その後は、海外マーケティングチームの立ち上げを行い、世界中であらゆるSAPやGREE本体が広告を打てるようにビジネスインフラと技術インフラを整えたという。

これまで経営について学んだこと

・20代からものすごい勢いでやってきたので、ある意味会社経営というものを無視して、腕力だけで進めてきたかもしれない。反省もしている。

・30代になって、経営というものに注力し始めた。その途端、会社が成長し始めた。

・それまでは、自分の力ばかり重視していた。強引だったと思う。

・やはり、経営はビジョンが合って、行動規範があって、目標設定があって、その運用と、評価と全部が連動していないとダメだなと思うようになった。実際、それで結果が出ている。いくら会社が小さくても整備する必要がある。

・色々なスタートアップとも会っているが、ビジョン、ミッション、行動規範がどこも揃ってない。社員が可哀想、きっと迷走が多いだろう。

ビジョン:その会社がなにかをすることで社会がどうなるか
ミッション:ビジョンを噛み砕いたもの。いくつか合わせるとビジョンになる。
行動規範:ミッションをさらに噛み砕いたもの。事業レベルでどうすると顧客はどうなるか。

これらの設定は、チームとして動くという目的を考えると社員みんなで作るべき。 このプロセスが重要。最後の一つにするのだけを社長がやる。

・メンバー全員が同じ方向を向いて、会社として正しい判断を繰り返していけるように、毎度毎度細かい指示を出さないでもミッションに準じて判断をするように、直ぐにでも作ったほうがいい。

・作る上でのポイントは、やはり、会社は社会の公器であることを忘れてはいけない。それを忘れると、社長、社員の個人の目的達成のためだけの会社になって、社会的に受け入れられない。

・ビジョン、ミッションなどを定め、と同時に日々KPIを定めて、運用していく必要がある。KPIだけの会社も見てきたが、短期的には伸びるが長期的には必ず失敗する。(GREEと光通信は、朝晩両方でキチンと追っている)

・社会の中の存在であることを忘れずに、経営を通して人としての高みを目指す必要があると思う。

ビジネス選定における3つのアドバイス

1.マーケットに、誰よりも早く参入する。

・モバイルSEOも、スマートフォンのアドネットワークの時も誰よりも一番早くマーケットに入った。

・よくスタートアップには、ありがちなのだけども、そもそもマーケットが小さい、もしくは今はお金が動いていない市場に展開しようとしている所も多い。市場規模が小さく、クライアントに予算がないので、それを引っ張り出すことに苦労する。お金をもらうことを想定するなら、何費として、いくらぐらい貰う必要があるのか、それが現実的か考える必要がある。若くてわからないなら、ヒアリングしてみる。

2.大きな流れを意識しよう

・インターネットの大きな流れに身を任せる必要はあると思う。古いものを壊して「より良くする」のがやはり大きな流れの中で雪崩のように起こる。

・最近では、決裁プラットフォームの大きな変革、スマートフォンとソーシャルメディア、ストレージ環境の変化、それに付随してECも大きく変わっていっている。大きな流れと逆行しているとどうしても拡大するのに苦労する。

・勝ち馬にのるなど潮流にのるのは重要。(Facebookマーケティングツールなど:クロコス)

3.パーソナライズ化しよう

・世界中に使ってもらうためには、パーソナライズ化するしかない。一人ひとりのためにコンピュータに働かせるというのが一番大きなオフラインへの競争力だと思う。

・Facebook/Twitter/LINEもタイムラインは、パーソナライズ化されている。

・自分たちのサービスがそのユーザーに対して、一人ひとりのために動いているかよく考えるべき。

日々の運用における3つのアドバイス

1.朝必ず会社に来よう。

・IT企業で、ゆるふわで、いつでもOKみたいな雰囲気の会社で成功したところはいくつかあるが、ほとんどないと思う。あったとしても、変化できずに淘汰されていく。

・社長は誰よりも早く会社に来て、その日の全員のタスクを把握して、整理するぐらいやろう。

・具体的には全員分エクセルで管理して、誰がどの程度進捗しているのか頭に入れる。

2.KPIを設定しよう。朝会をやろう。

・毎日KPIは測定して朝会で共有するようにする。

・月初に必ず目標(+20%くらいの数字)、予算(絶対に外さない数字)の設定をして、必ず必達する意識をつけるべき。

・朝会で、その日にやることを個別に共有してもらおう。

・KPIは壁に貼ったりで見える化をしよう。

3.目標設定は達成できるレベルで設定しよう

・努力をする上で目標設定の仕方が一番重要。

・目標管理は、継続するためのものであって目標を達成するためのものでもないと思う。

・小さな努力を日々積み重ねていって、大きな成果を作りましょう。

・大きな目標は大事だが、それはあくまでも長期的目標とした方がいい。

・短期的目標は日々必ず達成できるレベルに落として、行動数値の目標まで落とそう。行動数値とKPIが結びついていないと、ただ頑張れよ!と言ってるにすぎない。

・短期的目標の積み上げを行なって、3ヶ月後〜半年の中長期的目標を達成していくと楽しくなってくるし、継続した実感が湧いてくる。そういう実感を継続していったチームが強いチームになっていく。ほとんどの戦略ばかりに頭を使っているけど、メンバーが努力できる基盤を作るほうが大事。

経歴

木村 新司氏
ドリームインキュベーターにて戦略コンサルティング、及びベンチャー投資、育成を行う シリウステクノロジーズ取締役として、AdLocalの発案、サービス化、モバイルSEO事業の立ち上げと技術開発を行う。その後、リサイクルワン社長室長、オークファン顧問を兼任しながら、2007年3月に株式会社アトランティスを平行して立ち上げ、2011年にGREEに買収されGREEの広告事業の国内海外の事業を統括。

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